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社会性と経済性を両立させる世界の企業が、熱視線を送っているムーブメントと認証制度がある。「B Corporation(B Corp)」と「B Corp認証」だ。
2024年3月には、日本国内の公式窓口となる組織が新体制で発足。日本語での問い合わせ窓口が設置、日本語でのドキュメントも整備されるなど、これまで認証取得の壁の一つだった言語の問題が緩和され、国内でも盛り上がりを見せそうだ。
これまでにも商品や企業の取り組み自体を評価するサステナビリティ関連の認証制度はあったが、B Corpはただの認証制度ではなく、「経済システムを変えるムーブメント」だという。
B CorpとB Corp認証とは?
「B Corporation(B Corp)」とは、ビジネスを通じて社会を変えるムーブメント。2006年にアメリカでスタートし、非営利ネットワークの「B Lab」が主導している。
B Corpの「B」には、「Benefit for All」の意味が込められている。経済性と社会性を両立する企業を客観的に評価する国際認証制度「B Corp認証」を中心に、「包括的で、公平で、リジェネラティブな経済の実現」を目指している。
「B Corp認証」は、企業がガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、顧客などの包括的な領域において、高い社会的・環境的パフォーマンスを出しているか、透明性を担保し、説明責任を果たしているかなど厳しい基準をクリアした企業が取得できる。
パタゴニアやダノン、オールバーズなどのグローバル企業から中小企業、スタートアップまで、現在(2024年3月時点)、世界95カ国以上で8000社以上がB Corp認証を取得している。
B Corpは誰がどうやって始めた?
アメリカ・ペンシルベニア州の若者2人が始めたバスケットシューズの会社「AND1」での出来事が、B Corpの始まりだ。
バスケットシューズ界ではナイキに次ぐ人気ブランドにまで成長した同社。社員への福利厚生を充実させ、海外の工場で働く労働者に公正な賃金を支払い、技能アップの機会を提供し、売り上げの一部は地元の若者に寄付するなど、社会的な取り組みも積極的に行っていたという。
しかし、経営上の理由で会社を手放すプロセスの中で、働く人のために行ってきたことのほとんどが廃止になった。創業者の2人は、「どうすれば経営者や所有者が変わっても創業当時のDNAを残せるか」と悩んだ。
そのなかで、新しい会社を起こして成功しても、一生のうちに作れる会社の数には限りがあること、今世界が抱えている議題を解決するには不十分なことに気づいたという。
さらに、企業は株主の利益だけを求めていていいのか?という「ESG」のムーブメントの流れも追い風となった。従業員、社会、世界の未来にとっていい企業であると認証する制度を作ることで、「より多くの理想の企業を生み出すことができる」と考えられて作られたのがB Corpだ。
他の認証制度との違いや取得のメリットは?
国際認証制度には、消費者向けに商品ごとの評価や、投資家向けに企業内の取り組みを対象に評価するものもあるが、B Corp認証は、「企業全体」を評価するのが特徴だ。消費者にとっても投資家にとっても価値がある認証制度だという。
B Labグローバルで現在暫定共同主任役員を務めるサラ・シュワイマーさんは、「認証企業はそれ以外の企業よりも財務的に優れており、従業員のエンゲージメントや定着率などにおいても良い結果が出ている」と説明した。
また、B Corp認証を取得するまでのプロセスで企業の変革を促したり、B Corp認証企業とのコミュニティが活発なのも特徴だ。
シュワイマーさんは新型コロナ禍でも、成長が維持されている企業が多かったと説明。その要因について「B Corp認証企業同士がコミュニティを形成し、認証企業の製品を購入するなどでお互いに支え合うなど、困難な状況に立ち向かうレジリエンスを得たことではないか」と説明した。
他にも、▽第三者機関に認められることで産官学連携がしやすくなる▽世界基準を満たしたことが証明されるため、海外展開にもプラスになる▽就職先として選ばれやすくなる━などがメリットとして挙げられる。
日本のB Corpの状況は?
日本では2024年3月時点で、40社超がB Corp認証を取得。中学生、高校生向け IT・プログラミング教育サービスを提供する「ライフイズテック」や、日本やアジアでリユース事業を展開する「エコリング」、プラントベースの完全栄養食のプロテイン「KOREDAKE」を販売する「メップル」など、多種多様な規模や業種の企業が取得している。
2024年3月からは、B Labグローバルの公式パートナーとして、一般社団法人B Market Builder Japan(BMBJ)が新体制で発足した。国内組織ができたことで、B Corp認証の取得に向けた審査プロセスのサポートを得られやすくなることや、国内のB Corpコミュニティの活性化が期待されている。
BMBJ共同代表で、B Corp認証を取得したヴィーガンクッキーを販売するovgoの創業者でもある溝渕由樹さんは、「グローバルのB Labネットワークと連携しながら、インクルーシブで公平かつリジェネラティブなエコシステムを日本らしい形で国内のB Corpコミュニティと共につくっていきたい」と意気込みを語った。
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