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差別発言を繰り返す相手に「警察官が個人情報を同意なく提供」と訴え。南アジア出身の女性と子の聴取訴訟が結審

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本人尋問後、メディアの取材に応じる原告女性=2023年12月本人尋問後、メディアの取材に応じる原告女性=2023年12月

警視庁の警察官に、同意していないのに氏名や住所といった個人情報をトラブルの相手に提供されるなど違法な対応を受けたとして、南アジア出身の40代女性が東京都に損害賠償を求めた訴訟は1月26日、東京地裁(片野正樹裁判長)で結審した。5月21日に判決が言い渡される予定。

原告の女性はこの日の最終意見陳述で、提訴の目的が「人権の保護」だと述べた上で、「私たちのことを人間として扱ってほしい」「私と子どもは公正を待ち望んでいます」と裁判官に訴えた。

何が争われているのか?

訴状などによると、東京都内の公園で2021年6月、南アジア出身の女性と当時3歳の長女が、見知らぬ男性から「(長女に)子どもが蹴られた」などと抗議を受けトラブルになった。原告の女性側は、娘と男性の子どもに身体的な接触はなかったと述べている。

原告側は、男性から「外人」「在留カード出せ」などと詰め寄られたと主張し、警察官たちが男性の差別発言を制止しなかったと訴えている。

原告女性と娘は警察官から公園で聞き取りを受けた後、警察署への同行を求められ、署で再び聴取された。公園と警察署内での事情聴取は計約4時間半に及んだ。原告側はこの間、帰宅の要望を聞き入れられなかった上、トイレの利用や長女のおむつ替え、食事も認められなかったと訴えている。

さらに署内では、女性と娘が一時引き離され、娘ひとりに複数の警察官が事情聴取したと主張。娘は聴取中に大泣きし、その日以降精神的に不安定になり、医療機関で心的外傷の体験による不眠との診断を受けたと訴えている。

このほか、同意していないにもかかわらず、女性の氏名や住所、電話番号といった個人情報を、差別的な発言を繰り返していたトラブル相手の男性に対して警察官が提供したと主張。加えて、意思を確認されずに母子ともに写真撮影されたとも訴えている。

原告側は、警察官らによる一連の行為が、人種差別を支持・助長するものであり、「異常なまでの圧迫的な扱いはレイシャル・プロファイリング(※)に当たる」と指摘。「公権力の行使に際して人種差別を行ってはならないという職務上の注意義務に違反し、違法だ」として、損害賠償を求めている。

(※)レイシャル・プロファイリング・・・警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすること

東京都は請求棄却を求める

こうした原告側の訴えに対し、被告の東京都は、警察官の一連の対応に違法行為は認められないとして請求棄却を求めている。

被告側は、約4時間半にわたって事情聴取をしたことは認めるものの、「女性が帰宅を申し出たことはない」「食事やトイレ、おむつ交換の要望があった事実はない」として、いずれも否認している。

さらに、民事裁判を理由に女性の連絡先を求められ、男性に提供したことを都側は認めるが、女性の承諾を得ており「(提供を)強要した事実はない」と主張。写真撮影も女性の承諾を得ていたと反論している。

2023年11月の証人尋問で、聴取担当の警察官Aは「原告から、トイレやおむつ替え、食事をしたいという申し出はなかった。必要であれば本人たちから申し出があると思った」と述べた。

警察官Aの指示を受け、連絡先を提供しても良いか原告の女性に確認したという警察官Bは、「通訳を介して、連絡先を男性に教えていいかを聞いたところ、女性から『OK』と承諾を得られた」と証言した。

さらに、「連絡先」が具体的に何を指すかを明示して女性に伝えたかを尋ねる裁判官の質問に、警察官Bは「私の中では住所、氏名、電話番号という認識だった」とした上で、「一つ一つについては(女性に)話していない」と答えた。

一方、公園で通りかかり、英語通訳をした目撃者の男性は12月の証人尋問で「警察官たちは、(相手男性の)女性に対する差別的な発言を止めようとしていなかった」と証言。さらに、「警察官は『どうせお前が蹴ったんだろ』『本当に日本語しゃべれないのか』と娘さんに言い、娘さんの話を聞こうとする態度ではなかった。警察官が、娘さんが(男性の子どもを)蹴ったと一方的に決めつけていたので、(警察官と女性の)通訳に入った」と述べている。

主な争点と、原告・被告の主張主な争点と、原告・被告の主張

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差別発言を繰り返す相手に「警察官が個人情報を同意なく提供」と訴え。南アジア出身の女性と子の聴取訴訟が結審

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