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神宮外苑の再開発、実質的「スタートOK」状態に。樹木伐採の危機に専門家は「大問題だ」

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こちらもおすすめ>>神宮外苑いちょう並木は「確実に維持できない」専門家が計画を厳しく批判。事業者はデータ示さず

1000本近い樹木の伐採が予定されている神宮外苑再開発計画をめぐって、環境影響評価審議会が12月26日に開かれた。そして今後事業者が書類を提出すれば「スタートOK」な状態となった。

事業者が手続きに則って工事を進めれば、樹木が伐採される可能性がある。

その一方で、この再開発で衰退が懸念されているいちょう並木の調査については、今後も審議が続けられる。

ただし、この審議の間も事業者(三井不動産・伊藤忠商事・明治神宮・日本スポーツ振興センター)は工事を進められるため、いちょう並木以外の樹木が伐採の危機に直面することになる。

再開発の見直しを求める市民や専門家からは、神宮外苑の歴史ある樹木が破壊されることに対する危惧の声が上がっている。

黄金色に輝く神宮外苑いちょう並木黄金色に輝く神宮外苑いちょう並木

再開発は今後どうなるのか

神宮外苑の再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場を場所を交代して建て替えるほか、ホテルや高さ190メートルの高層ビルなどの建築が予定されている。

また、この再開発に伴い、約1000本の樹木の伐採および衰退が懸念されており、その中には神宮外苑のシンボルであるいちょう並木も含まれている。

12月26日の審議会では、委員から「この計画のままではいちょうが枯死する可能性が高い」「都民との情報交換が不十分だ」「野鳥などへの影響も考えられる」などの計画に対する強い懸念も示され、いちょう並木の調査については審議を続けることになった。

ただし、再開発計画全体についての審議はこの日で事実上終了。事業者はこの後、26日の審議会で委員から出された助言を反映した「評価書」を東京都環境局に提出すれば、受理される。

環境計画政策や環境アセスメントの専門家である千葉商科大学の原科幸彦学長は、提出される評価書について「事業者が助言を踏まえて作成しましたと言えば、都はそれを受理することになる」とハフポスト日本版の取材で答えた。

原科氏は、評価書の提出は年明けではないかと見ている。評価書はその後公示され、15日間の縦覧を終えると、事業者は事後調査計画書とともに着工届を提出できる。

原科氏は「公示と縦覧はセットで行われ、待ったをかける術はありません。これを止めるには、都知事が審議会に差し戻すことが必要です。都知事が決めるわけなので、小池知事なら止めることは可能です」と説明する。

また、神宮外苑がある新宿区もしくは港区も、計画にブレーキをかけることが可能だという。

「各区には、都の風致地区条例に関する許認可規制があるので、自治体の判断次第で、樹木伐採は区長が止められます」

建国記念文庫のある新宿区では、早稲田大学名誉教授の川口義一氏が代表を務める「神宮外苑再開発を考える地域住民有志」が、区に対し伐採ストップの要請書を9月に提出している。

神宮外苑にある建国記念文庫神宮外苑にある建国記念文庫

いちょう並木についての審議は続けられるが…

再開発では、新設される神宮球場の壁が、いちょう並木から約8メートルの距離まで迫る計画になっている。そのため日本イコモスの専門家らが「このままでは根がダメージを受け、いちょうが衰退する」と何度も指摘してきた。

事業者はこのいちょう並木について、2023年1月に根の調査を行い、春頃に「事後調査報告書」を提出するとしている。

事後調査報告書が提出されれば、審議会は必要に応じて意見を出すことができるが、原科氏は「その間に他の樹木が伐採されてしまう可能性がある」と指摘する。

「根系調査は1月開始で3か月ほどかかるようなので、事後調査報告書の提出は4月頃ではないかと思います。その間に、工事が順次進むことになります」

「事業者は5月の発表時には、2024年度着工としていました。しかしその前に、新ラグビー場建設予定地である神宮第2球場の解体工事と周辺整備から始めることになります。周辺整備とは樹木伐採が含まれます。このままでは、建国記念文庫の森などの豊かな樹木の大半が、早い段階で伐採されてしまうのではと危惧します」

「いちょう並木に近接する新神宮球場の建設は、その先、秩父宮ラグビー場と会員制テニスクラブの建物を解体した後になりますので、当面はいちょう並木に影響する範囲での工事はないでしょうが、他のエリアの樹木が順次伐採されていきます。だから、やはり大問題です」

環境影響評価審議会が開かれた12月26日、市民らが東京都庁を訪れいちょう並木の確実な保全に関する陳情や声明を手渡した(2022年12月26日)環境影響評価審議会が開かれた12月26日、市民らが東京都庁を訪れいちょう並木の確実な保全に関する陳情や声明を手渡した(2022年12月26日)

さらに、事業者は26日の審議会で「いちょうの根の調査は自分たちで行う」としたが、原科氏は、非常に重要な調査であり、透明性の観点などからも「事業者単独ではなく、日本イコモスなどと共同でやるべきだ」とも指摘する。

 「(事後調査報告書の審議は)根系調査の結果を審議して、神宮球場の計画の見直しが必要か否かを判断できる機会です。そのためには、根系調査がいちょうの根を傷つけずにきちんと行われることが、きわめて重要です」

「かなり弱っているいちょうもあることがわかっていますから、調査は慎重にすべきです。そして透明性が必要なので、イコモスの専門家との共同での公開調査が求められます」

「答えは全然出ていない」市民らが見直しを求める

 12月26日の審議会の後、日本イコモス国内委員会の石川幹子氏や、神宮外苑の再開発見直しのオンライン署名を立ち上げた経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏らが東京都庁で記者会見を開き、改めて工事の見直しを求めた。

計画見直しを求める記者会見。(右から)日本イコモス国内委員会の石川幹子氏、経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏、「神宮外苑を守る有志ネット」の角井典子氏(2022年12月26日)計画見直しを求める記者会見。(右から)日本イコモス国内委員会の石川幹子氏、経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏、「神宮外苑を守る有志ネット」の角井典子氏(2022年12月26日)

カップ氏は会見で、審議会では「なぜ神宮球場とラグビー場は、改修ではなく建て替える必要があるのか」など、「市民が知りたいことに対しての答えは全然出ていない」と指摘。

さらに、プロセスにおける市民参加も不十分であり、オープンな協議の場をつくってほしいと訴えた。

「100年先の未来を見据えて、改めて都民の声に向き合い、幅広い都民参画を取り入れるながら、より良い計画にやり直して欲しいです」

「ぜひ事業者、都市計画や環境問題の専門家、そして都民を集めてオープンな協議の場を作って頂きたい。それは私と私が立ち上げた署名の10万9500人以上の賛同者が心から願っていることです」

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神宮外苑の再開発、実質的「スタートOK」状態に。樹木伐採の危機に専門家は「大問題だ」

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