カディーナ・コックスさんは、イギリスのパラリンピック・アスリートだ。
2016年のリオ大会ではパラ陸上とパラサイクリングで金メダル、東京大会ではパラサイクリングで2つの金メダルを獲得しており、テレビ番組などメディアにも頻繁に出演している。
彼女が患っているのは、中枢神経系の脱髄に繰り返し炎症が起こる多発性硬化症。よくある症状としては、視覚障害や感覚障害、運動障害や震え、疲労感などがある。多くの患者は、状態が比較的良好な期間と悪化する期間を繰り返すことが多いという。
けいれんや運動障害など、目に見える症状もあるが、そうでないものも多いため、障害者用の席や駐車スペースを使用するとき、疑われることは少なくない。
「障害者としてメディアの露出がある私でさえ、過去に障害者用スペースを利用する際に疑われたり、テレビ出演した際に私の障害が分からなかったとネガティブなコメントを受けたことがあります」と彼女は話す。
現在31歳のコックスさんは2021年、イギリスのリアリティ番組に出演した。しかし、番組内で彼女が「問題なさそうに歩行している」様に見えた為、「混乱している」という視聴者の声があり、その疑問に答える必要性を感じたという。
当時コックスさんは、「私は車椅子が必要な時とそうではない時がある、パートタイム利用者です。リアリティ番組でみなさんが観ているのは、私の日常の切り取られた一部分だけです」と答えた。
悲しいことに、このような経験をしているのは彼女だけではない。
グローバルヘルスケア企業Bupaと障害者平等を支援するイギリスのチャリティ団体Scopeが行った調査によると、見た目ではあまり分からない障害や症状を持つ人の71%が、過去1年間に自身の障害について疑われた経験があるという。
また、63%の人が、それがメンタルヘルスに悪い影響を与えたと答えた。
コックスさんもこの結果に同感し、「それは、私たちをネガティブな気分にさせ、外の世界は私たちを歓迎していない、生きにくい場所だと感じさせるのです」と話した。
調査によると、回答者は旅行や買い物などをしている際、障害があるのか、どんな障害なのか、と質問されるという。最も一般的なのは、バリアフリーのトイレや交通機関の優先席、障害者用駐車スペースなどを利用するときだ。
また、彼らの76%が障害について無神経な発言をされたことがあると答え、68%が過去1年に「障害があるように見えない」と言われたことがあるという。
調査対象者のほぼ4分の1(22%)が、嫌な経験をすると、外出せず家に閉じこもる傾向が強くなると答えた。
Scopeの最高責任者であるマーク・ホジキンソンさんは、一般の人々が障害者平等についてや彼らの経験についての理解を深め、味方になるよう呼びかけた。
「多くの障害者は目に見えない障害や症状を抱えているので、見た目で障害の有無は明確に判断できません。こうした態度や行動は、障害を持つ人々の社交や就職活動、教育や公共交通機関の利用など、生活のあらゆる分野での活動を妨げるのです」
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。
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見た目では分からない障害や症状を抱える人々の苦悩 71%が疑いの目で見られた経験あり