18世紀中頃から研究されてきた「三体問題」。現在においても研究者たちの頭を悩ませています。最近では大ヒットしたSF小説「三体」のテーマとして取り上げられ、一躍注目を浴びました。そんな三体問題に対して、12,409通りの新たな解答が発見されました。その内容について、科学メディア「Science Alert」が詳しく解説しています。
*Category:サイエンス Science *Source:Science Alert ,Cornell University
三体問題に対する12,409通りの解答
1687年、アイザック・ニュートンは運動の法則と万有引力の法則を発表し、遠くの星、月、惑星の運動に焦点を当てました。また、ニュートンの先駆的な研究は、太陽、月、地球のようなカオスな三体系を制御するための数学的解を何世紀にもわたって探し求めるきっかけにもなりました。
ブルガリアのソフィア大学のイワン・フリストフ氏らは、3つの天体が衝突したり宇宙空間に飛び出したりすることなく、互いの重力の相互作用によって安定した状態であることを説明する答えを見つけようとしてきました。この難問は「三体問題」と呼ばれ、重力的に絡み合った3つの天体に適用されます。解が見つかれば、天文学者はこれらの天体の初期位置と速度から予測される運動をプロットすることができるでしょう。
そして今回、フリストフ氏らは、ニュートンの法則の範囲内で機能し、質量が等しい3つの天体を持つ3体系の軌道パターンを、12,409通りも発見しました。(まだ査読はされていません。)今まで、三体問題に対する包括的で普遍的な解は見つかっていません。というのも、ほとんどの場合で予測困難なカオス的な運動が生じるのです。しかし、この最新の研究のように、システムが特定の条件下で動作する特殊なケースについては、多くの解が発見されています。中には実用的な天文学に関連するものもあります。この最新の解は、3つの天体が互いに重力を受けて「落下」する前に、まず静止している場合のものです。数学者には満足かもしれませんが、おそらく実世界での応用はほとんどないでしょう。
フリストフ氏らは2019年に発表された、自由落下する三体問題の周期軌道の300以上の新しい組合せを発見した以前の研究に基づいて、スーパーコンピューターを使用して研究を行いました。そこで彼らは、以前の研究での数学的な不一致点を解決しようとしました。つまり自由落下システムの天体は、閉じたループ軌道に落ちるのではなく、開放軌道を揺れ動くという問題です。ただし、彼らの研究は、ランダムな質量ではなく、等しい質量の3つの天体を考慮しています。
自由落下軌道は「天文学的に重要であることが証明されるかもしれない」とフリストフ氏は述べています。ただし、遠方の天体や太陽風の影響を考慮した場合に、新しい解がどの程度安定するかによります。そしてルイジアナ州立大学の物理学者ジュハン・フランク氏は三体システムは崩壊する傾向があり、2つの天体が連星系で合体し、3つ目の質量が放出されるのだと話します。
少なくとも今のところ、フリストフ氏は、予測される軌道の美しさを楽しんでいます。「安定であろうと不安定であろうと、理論的には非常に興味深いものです。それらは非常に美しい空間的、時間的構造を持っているのです」と語っています。
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200年以上も数学者を悩ませている「三体問題」の解が〝12,409通り〟見つかる