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「選挙に立候補した皆さんは、既に一つ、社会を変えたんです」(荻上チキさん)
5月13日、政治のジェンダーギャップの解消を目指し、女性の選挙立候補を支援する「FIFTYS PROJECT」が、支援した候補者とともに4月の統一地方選を振り返るイベントを東京都内で開催した。
今回の統一地方選でFIFTYS PROJECTが支援した候補者29人のうち、当選を果たしたのは24人。この日は落選者も含め全国から21人が集まった。
イベントでは一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」の荻上チキさんがファシリテーターとなり、候補者たちが統一地方選を振り返るワークショップを実施。
荻上さんは「当選しなくても、女性が候補者になることが多くの若者、とりわけ女性の有権者の行動を促すという先行研究があります」と語りかけた。
「皆さんの顔が選挙の掲示板にある社会とない社会は全然違います。ここからさらにもう一つ社会を変えるために、皆さんの協力が必要です」
20〜30代の女性たちが、選挙に立候補するとはどういうことだったのか。「次」にバトンを渡すため、現場のリアルを語り合った。
女性の政治参加を阻む壁が浮かび上がる一方で、希望も
ワークショップは3〜4人のグループに分かれ、テーマについて思い浮かんだことを次々とメモして貼り出し、そのことについて話し合ったりグループ化して考えをまとめていく「KJ法」を用いて行われた。
テーマは、選挙に立候補すると決める前から選挙が終わるまでの「ポジティブ・ネガティブな体験や内面」と「助けられたサポート・サポートの不足や不満」について。参加者たちはポストイットに思いつくままに書きながら、模造紙に貼っていった。
「選挙を経て、自分のことをもっと好きになれた」
「初めて応援したいと思える候補者に出会えたって言ってもらえた」
「結婚しているのか、子どもはいるのかしつこく聞かれて嫌だった」
「母子家庭支援や女性の地位向上を政策のメインにしたら、『票の幅が縮まるぞ』と言われた」
模造紙はあっという間にポストイットで埋め尽くされた。
それぞれのグループの発表では、男性が偉そうに女性を見下しながら何かを解説・助言する「マンスプレイニング」や「つきまとい」、たまたま車の中で男性の選挙関係者と二人きりになった時に「パパって呼んでもいいんだよ」と言われるなどのハラスメントの問題や、個人情報の悪用や金銭的な不安など構造的な課題が浮き彫りになった。
一方で、ポジティブなポストイットの数の方が多いグループも目立った。「政治をもっと身近なものにしたい」「自分たちが誇りを持てる社会にしたい」という思いや「手伝いたい」と言ってくれた友人や家族の存在、「あなたのような人を待ってた」と声をかけてくれる人たちや、挑戦しなければ出会えなかった人たちに出会えたことなどがポジティブな経験として挙げられた。
また、「FIFTYSが自分の居場所の一つ。これからも戦い続けなければならない中で支えになると思います」など、「FIFTYS PROJECT」のコミュニティに言及する声も多く、同プロジェクトが候補者たちを支えになっていたことが伺えた。
「FIFTYS PROJECT」代表の能條桃子さんは、「個人ではなく、制度として社会側が変わらなければならないことも多い。今回の声を受けて、FIFTYSのアドボカシー活動などに繋げていきたい」と話した。
「絶対人は優しいです」未来の「選挙候補者」に伝えたいこと
女性比率50%を達成した東京都武蔵野市で当選を果たしたさこうもみさんは、「日に日に選挙ボランティアに来てくれる人が増えていったのが嬉しかった」と話す。
「ほとんどの人が選挙のボランティアは初めてでした。投票よりさらに政治に一歩踏み出してみるきっかけになれたのかなと思うので、本当に立候補して良かったです」
さこうさんは、これから先選挙に挑戦するかもしれない人たちに向けて、「自分の想像の中だけで考えて諦めないで。気になったら現職の人たちの話を聞いてみてください」とメッセージを送った。
「私も立候補前に、『将来子どもを持つ可能性があるかもしれないけど、いつ選挙に出たらいいんだろう』と悩みましたが、現職の人で任期中に産んでいる人もいて決心できました」
長野県諏訪郡下諏訪町から立候補し当選を果たした竹元かんなさんは、下諏訪町史上初の20代で、女性で、移住者の立候補者だったという。
「長野県は、立候補者が定数以下で無投票だった市区町村議会の割合が4割もあり、下諏訪町も2期連続で無投票になってしまいました。民主主義の危機だと思っています」
諦めムードが漂い、移住者に厳しい視線がある中でも、竹元さんは辻立ち(交差点など人の多い場所で挨拶や演説を行うこと)をするなど選挙活動を行った。「おじいちゃん、おばあちゃんたちも、若者世代の諦めた人たちも希望に思ってくれて、車の中から『頑張れ』って叫んで応援してくれました。次の4年で、この状況を変えていける希望を感じました」
元々はダンサーになる夢を追いかけ、ずっと非正規雇用で働いていたという竹元さん。「政治家ってお金がないとなれないものだと思っていましたが、ワーキングプアでお金がない私でも、意外と政治家になれちゃいました。一歩踏み出せば、意外と道は開けると思います」とエールを送った。
また、広島県尾道市から立候補したたなかふみえさんは、残念ながら落選したものの、「女性議員が1人だけのこの街で、ましてや移住者には絶対無理だよ」と言われながらも1136票を獲得した。
「絶対人は優しいです。大丈夫、冷たくない。自分の意見を言ったら絶対面白がってくれる人がいるし、多分それは町に必要な声だと思うから、挑戦した方がいいと伝えたいです」(たなかふみえさん)
能條さんは今回のイベントを受けて、「みんな前向きでポジティブなオーラを放っていて、この熱が、次の候補者を増やすことや、2期目続けたいと思えることに繋がればいいなと思います」とコメント。
ワークショップで挙がった声や候補者のアンケート結果は、荻上チキさんらチキラボとFIFTYS PROJECTが共同で調査レポートとしてまとめる予定だという。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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