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ペットは食べないのに、なぜ牛は食べるのか。ビジネスの原点は、少年時代に感じた強烈な違和感だった。

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グリーンカルチャー株式会社 代表取締役 金田郷史さん

ある日、先生が「このブタを育てて、最後にはみんなで食べようと思います」と生徒たちに提案する。生徒たちは、ブタをPちゃんと名付け、飼育を始める。次第に、生徒たちはPちゃんに対してペットとしての愛着を抱くようになっていく。
そして1年後。生徒たちはPちゃんを「食べる」か「食べない」の選択を迫られる。生徒たちが出した答えはー。

2008年に公開された映画『ブタがいた教室』だ。大阪の小学校で実際に行われた授業がもとになっている。

ブタを飼わずとも、小さい頃に一度は「動物を食べるのはかわいそう」と思ったことがある人もいるのではないか。

植物由来の“肉”を開発するグリーンカルチャー代表の金田郷史さんも、少年時代に感じた「ペットは食べないのに、なぜ牛は食べるのか」という違和感が、起業の原点になっているという。

肉を食べないと決めたことで感じた不便さや我慢。同じように食生活で困っている人の役に立ちたい。金田さんが挑戦する、肉でも野菜でもない“新たな食べ物”への思いを聞いた。

 

ペットが側にいて、手には牛丼

生まれた時から、家には犬がいた。動物が大好きで、うさぎやハムスター、亀、金魚などを飼ってきた。育てて、可愛がって、遊んで、死んでいく時は悲しかった。

高校生になったある日、家で大好きな牛丼を食べていて、ふと思った。

「なんで飼っている犬は食べないのに、牛は当たり前のように食べるんだろう。同じ命なのに何が違うんだろうってすごく気になり出したんです。

食べ終わってすぐに『畜産 動物 扱い』と検索しました。畜産動物が『プロダクトアニマル』と呼ばれて狭い小屋でモノ同然に扱われることがあったり、流れ作業のように命の終わりを迎えていってしまう側面もある、などの情報を目にして、ものすごく衝撃を受けました。

自分が接してきた動物は、感情もあって、動物なりの考えだってあるという存在でした。生まれた場所が違うだけなのに、命の扱われ方が違いすぎるのではないか?それがどうしても見過ごせないと思いました」

では、どうやったら解決できるのか?その時の金田さんが考えた解決策は「食べないこと」だった。今すぐ社会を変えることはできないけれど、自分にできることは「肉を食べないことで、せめて自分だけでも動物を平等に扱うこと」だった。 

イメージ

 

「納豆ご飯を食べている」が恥ずかしい

「肉を食べないことにする」と母に伝えると、高校に持っていくお弁当には肉を入れないようにしてくれた。しかし、家族は今まで通りの食事なので、朝食と夕飯は自分で用意することが多く、苦労の連続だった。

多くの料理に肉が入っていることに気づき、何を食べたらいいかわからなくなった挙句、ひたすら豆腐と納豆を食べる日々。学校の友達との「何食べた?」という何気ない会話でさえ、「納豆ご飯を食べた」と言うことが恥ずかしくて、「食べることに対してコソコソしている感じが嫌だった」と振り返る。

高校卒業後、カリフォルニアにある短大に進学。「食」において日本が遅れていると感じた2つのカルチャーショックがあったという。

1つ目は、他人の食の価値観に対して寛容なこと。滞在先のホストファミリーに肉を食べないことを伝えると、特に理由を聞かれることもなく「じゃあ、食べられるものを用意するね」とすんなり理解してくれたという。それは周りの友人たちも同様だった。

2つ目は、割高で種類こそ少ないものの、プラントベース(植物由来)のミートボールやハンバーグなどが売られているスーパーが普通にあったこと。

日本とアメリカの、食に対する価値観や環境の違いを痛感し、それまで肉をやめたことで感じてきたモヤモヤから一転、「日本でもこのカルチャーを実現したい」と強く思ったという。

「日本には、おそらく自分と同じように肉を食べないことで生きづらさを感じている人がたくさんいるはず。そういう人の役に立ちたいと強く思いました」

肉か野菜かの二択じゃない、新たな選択肢。

アメリカで起業を決意した金田さんは帰国後、2011年にグリーンカルチャー株式会社を創業。当時の日本でも、ひよこ豆のカレーや乾燥の大豆肉などヴィーガン向け商品はゼロではなかったが、まとめて買えるところが少なかったことから、まずは様々なメーカーの動物性フリー商品が買える通販サイトを始めた。

「経営については教科書で学んだだけだったので、起業の時は何もわからない状態だったんですけど、絶対に世の中を変えてやるんだと思って無我夢中でやっていました」

しかし次第に、すでに世にある商品だけでは不十分だ、と思うようになった。

今のままでは、ヴィーガンの人たちは「我慢したまま」の食生活を送ることになりはしないか。そんな思いが湧き上がってきた。

思い返せば、肉を食べないと決める前は、牛丼やハンバーグ、とんかつ、唐揚げといった肉料理が大好きだった。肉を食べる時の食の楽しみはそのままに、動物の命を尊重できる食品はないだろうか。そこで、植物由来の原料で“代替肉”を作る開発を始めた。

研究を進める中で、植物から肉を作るということは、ただ肉を代替する以上の付加価値があるのではないかと考えるようになった。

牛肉をめぐっては、以前から生産過程における環境負荷の問題も指摘されていた。例えば、牛肉のゲップにはCO2の25倍もの温室効果のあるメタンガスが含まれている。生産だけではなく輸送や流通にも環境負荷はある。餌となる穀物の生産も同様だ。

「植物由来の肉であれば、環境課題に対してもアプローチができる。しかも、開発技術が向上してよりおいしい代替肉が作れるようになってきている。これは、“植物肉”という新しい食べ物であり、新しい価値の創出であると思いました」

植物肉を使用したハンバーグの製造工程

 創業から11年を迎えた今年、事業会社などから資金調達を実施し、植物肉の研究開発をさらに加速。

現在グリーンカルチャーは、大豆やエンドウ豆など植物由来の原料から作られた“植物肉”を使った唐揚げや春巻き、ナゲット、ソーセージなど15品ほどを商品として販売している。

食の多様性と環境負荷。二つの課題に挑む金田さんが目指すのは、「植物肉」という新たな食べ物であり、新たな食文化だという。

「肉を食べないとなると、どうしても肉か野菜かの二択になってしまいがちですが、そこにはグラデーションがあって良いと思っています。肉のように満足感があって、野菜のようにヘルシー。決して肉を代替するわけではない新たな食べ物で、肉と野菜のグラデーションを埋めていきたいと思っています」

「それから、美味しいことは大前提だと思っています。ヴィーガンメニューは、どこかヴィーガンのためのメニューで、ヴィーガンじゃない人は積極的に食べようと思わないと思うんです。でも、美味しければ、ヴィーガンにもノンヴィーガンにも食べてもらえる。肉を食べる人にとっても、『今日は軽めでいきたいから』『今月はダイエットしたいから』などと、気分や状況に応じて植物肉を選んでもらえる。そんな新たな食文化を作りたいです」

高校時代に感じた「ペットは食べないのに、なぜ牛は食べるのか」という違和感。自分にできることは「肉を食べないこと」と一度は答えを出して実践してきた少年は今、社会に対して「食べない」を越えた新たな価値を提供している。

大豆ミートの和風ベジハンバーグ

肉を食べる人も食べない人も、美味しく楽しめて、さらに地球環境にも優しい“植物肉”。金田さんが挑戦している“アタラシおいしい”。

たまには“植物肉”という選択肢を選んでも良いかもしれません。

***

ハフポストが毎月お届けしているSDGsをテーマにしたライブ番組「#ハフライブ」。金田さんが出演した7月のハフライブは「食とSDGs」について配信。みんなで食の課題と未来について話し合いました。

「疲れたから夕飯を作るのめんどくさい」
「手抜き料理って思われるかも」
「もっと食べたいけど、ダイエットや健康が気になる」
「環境にも身体にも良い食べ物って美味しくなさそう」
「ヴィーガンをはじめたいけど、周りに言いづらい」
人は、食べることなくして、生きられない。
それなのに、食をめぐってはたくさんの我慢や罪悪感、課題があります。
もっとおいしくて、ラクで、栄養がとれて。フードロスや環境破壊など、食をめぐる社会問題にもきちんと気を遣いたい。
自分にも地球にも優しくて楽しい。そんな “アタラシイおいしい” を探しませんか。
「#アタラシイおいしいを探そう」で、ぜひみなさんのオススメも教えてください。

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Source: ハフィントンポスト
ペットは食べないのに、なぜ牛は食べるのか。ビジネスの原点は、少年時代に感じた強烈な違和感だった。

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