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「妥協しない」から、イノベーションが生まれる。循環型経済を目指すアシックスの理念とは?【イベントレポート】

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大量生産・大量消費型の経済に一石が投じられている現代。サーキュラーエコノミー(循環型の経済モデル)の実現に向けた挑戦が、各領域で進んでいる。

大手スポーツメーカーのアシックスは、スポーツをする環境を守っていくために「2050年までにネットゼロ(大気中に排出される温室効果ガスと大気中から除去される温室効果ガスが同量でバランスが取れている状況)、2030年までに2015年比でCO2を63%まで削減」を目標に掲げている。

2023年からは、リサイクルできるランニングシューズ「NIMBUS MIRAI」や、原料に原料にサトウキビを使用し、温室効果ガスの排出量を最少に抑えたスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」の開発・販売などを通して、サーキュラーエコノミーへの歩みを進めている。さらに今年11月1日からは、これまで廃棄していたシューズを原料に用いたスニーカー「NEOCURVE(ネオカーブ)」をヨーロッパ地域で発売した。

11月下旬、同社は「2024年 アシックス メディア向けラウンドテーブル」をサニーサイドアップ本社にて開催。2023年〜24年のサステナビリティ活動を総括し、今後の展望などについて発表した。

アシックスの目指すサーキュラーエコノミーとは?

アシックス サーキュラーエコノミー推進部長 「NEOCURVE」プロジェクトリーダーの村岡秀俊さん(左)サステナビリティ部長の井上聖子さん(右)アシックス サーキュラーエコノミー推進部長 「NEOCURVE」プロジェクトリーダーの村岡秀俊さん(左)サステナビリティ部長の井上聖子さん(右)

イベントには、同社 サーキュラーエコノミー推進部長 「NEOCURVE」プロジェクトリーダーの村岡秀俊さん、同社 サステナビリティ部長の井上聖子さんが登壇。さらに、COP29に参加中の一般社団法人SWiTCH代表の佐座槙苗さんが、アゼルバイジャンの首都バクーからオンラインでゲスト登壇した。

佐座槙苗さん提供佐座槙苗さん提供

同社では、社内に限らず、バリューチェーン全体でサーキュラーエコノミーを実現することを目標に掲げ、「サプライヤーとの協働」「製品イノベーション」「お客様との協働」を中心に取り組んでいる。

生産段階で排出されるCO₂の削減をはじめとした「サプライヤーと協働」では、2022年には2つの工場でしか調達していなかった再生可能エネルギーを、フットウエアの戦略的1次生産委託工場の9割以上まで普及することに成功。CO₂を削減する技術や製品を開発する「製品イノベーション」では、品質・機能性と環境負荷低減を両立する新製品の開発・販売が進んでいる。また「お客様との協働」では、製品の回収やリサイクルなどを通して循環型の仕組みを生活者と共に作ることに挑戦している。

サーキュラーの取り組みサーキュラーの取り組み

これらの取り組みについて、佐座さんは「アシックスさんの掲げる目標は決して容易ではありません。しかし、『サプライヤーと協働』をはじめ、実効性を重視しながら取り組みを進めてきたプロセスを振り返ると、その企業姿勢に心強さを感じます」とコメント。

さらに「人々の健康に貢献するためには、その基盤である環境が健全であることが不可欠です。異常気象や気温上昇は、スポーツを行う環境にも大きな影響を与えており、スポーツに関わるすべての人々が環境との共生を意識することが重要です」と同社の理念に共感するコメントを寄せた。

「妥協しない」から、イノベーションが生まれる

同社が掲げる「製品イノベーション」を代表する取り組みが、リサイクルできるランニングシューズ「NIMBUS MIRAI」や、原料にサトウキビを使用した温室効果ガス排出量最少スニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」の開発・販売だ。

井上さんは「スポーツシューズの構造はとても複雑です。特に接着は他の業界でも課題になっているそうで、今回独自開発した接着剤は大きな反響をいただいています。今後も広い領域で生きてくる技術になると期待しています」と説明。「GEL-LYTE III CM 1.95」については、「生産過程でいろいろなことが数値化・定量化され、次の一手がクリアになりました。目標が『見える化』されたことで、部門を跨いだやりとりが今まで以上に活発になりました」と説明した。

これらの製品を通して共通しているのが「妥協しない」ことだ。井上さんは「製品の機能性と品質に妥協しないことで、今までになかったディスカッションがたくさんできました。譲れない部分を大事にすることは、イノベーションにおいて大事だなと再認識しました」と開発の苦労と喜びを振り返った。

GEL-LYTE III CM 1.95、NIMBUS MIRAIGEL-LYTE III CM 1.95、NIMBUS MIRAI

続いて、村岡さんは今年11月1日からヨーロッパ地域で販売が開始された「NEOCURVE」について説明した。

「捨てなくてはいけないとされているものをどうやったら、活用できるだろうか?」というシンプルな問いから生まれたというこの製品は、同社製シューズのデッドストックをはじめ、サンプル品や自社規定をクリアせず販売できなかったものなどをリサイクルし、材料の一部として活用している。シューズの回収から解体、材料化、デザイン、製造、販売までをヨーロッパ圏内で行うことによって、CO₂排出量の削減にもつながっているという。 

多くのスニーカーやスポーツシューズは複数の材料で構成されており、それらを分解・粉砕・材料化し、新たにスニーカーやスポーツシューズを製造することは難しいとされている。同社ではオランダに拠点を置くシューズリサイクルの大手であるFast Feet Grinded社と提携することで、さまざまなシューズをシューズフォーム材、ゴム、繊維、皮革、金属、その他材料に分解・粉砕・材料化に成功。シューズを再生した材料は、シューズ全体の約15%に使用しており、一般的な再生材料を含めた再生材料比率は全体で約25%だという。

NEOCURVENEOCURVE

これらの製品イノベーションについて、佐座さんは「妥協しないっていいですね。実はCOP29でも『NIMBUS MIRAI』を履かせていただいて、ふわっとした歩き心地で本当に歩きやすいんです。サステナビリティが大切とは言っても、やはり履き心地も選ぶ上では大切な基準なので、そこを妥協しない製品の存在はとても嬉しいです」とコメント。

さらに、EU加盟国では2026年7月からアパレル事業者による売れ残った衣服や付属品の廃棄が禁止される(エコデザイン規則)ことについても言及し「NEOCURVEはそれを見越した先進的な製品です。商品設計の初期段階からサーキュラーの概念を組み込んでいることは素晴らしいです。さらにアシックスさんは自社開発した技術を独占せずに開示しています。この『社会みんなで活用しよう!』というスタンスはこれからの社会において1つのロールモデルになるのではないでしょうか」と取り組みを称賛した。

今後の課題については、商品によって設計が違うため、培ったノウハウの汎用性が高くないことや、生活者がアクションにより踏み出しやすい構造づくりの必要性などが挙げられた。佐座さんは「どうしたら靴を長く履けるだろう?という誰かに教えたくなるような情報を発信してほしいです」と生活者としての願いを伝えた。

さらに「アシックスさんの今後の挑戦に、大変期待を寄せています。私自身も、アシックスさんが推進するサーキュラーエコノミーの取り組みに参画していきたいと思います」とイベントを総括した。

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「妥協しない」から、イノベーションが生まれる。循環型経済を目指すアシックスの理念とは?【イベントレポート】

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