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ジェンダー格差が「悪さをしない」仕組みを目指す。資生堂の研究を元に、企業のジェンダー平等のあり方を考えた

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リーダー層に女性を増やす取り組みを各企業が進めている。

しかし、政府目標の女性管理職比率30%を達成したのは、日本の大手企業の中でまだわずか3%(TOPIX500構成銘柄対象、2023年10月パーソル総研調べ)。

そこで、DEIの高い壁にぶつかる企業の担当者の皆さんとともに、壁を乗り越えることを目指す社会変革プロジェクト「未来を創るDEI」を、2024年からハフポスト日本版と朝日新聞社がスタートさせた。

11月15日に「資生堂DE&Iラボ」の事例をテーマに行われたラウンドテーブルの様子をレポートする。登壇者は、資生堂DE&I戦略推進部の山田美和さん、共同研究者で東京大学教授の山口慎太郎さん。コーディネーターはハフポスト日本版の泉谷由梨子編集長。

【関連記事】「板挟み」状態の女性が多い?資生堂DE&Iラボの研究結果から見えてきた「ジェンダー不平等」の原因

科学的根拠で「ジェンダー格差のありか」を解き明かす

未来を創るDEI・ラウンドテーブル未来を創るDEI・ラウンドテーブル

そもそも、資生堂はなぜ科学的なアプローチである「ラボ」を発足させることにしたのだろうか。

同社での20年以上の人事領域キャリアを生かし、現在は「資生堂DE&Iラボ」を運営するグループマネージャーを務める山田さんは、「具体的で納得度の高いエビデンスを実証すること」が狙いだと話す。

「女性活躍が進むことで獲得できる企業や社会へのメリットをエビデンスで示すことで、女性活躍の本質や打ち手を解明していければと思います」

同ラボが初めに重要テーマとして設定したのが「ジェンダー平等」だ。

東京大学大学院経済学研究科 教授 の山口慎太郎さんとの共同研究の結果、女性活躍にれを取っている同質性の高い部の組いては、男女で成果を出す能⼒に差はないにもかかわらず、男性の方が難易度の高い役割をアサインされる傾向にあること、そして上司からのスキル評価において、部のグレードで男性上司から男性部下への評価が高い傾向にあることが示された。同等の能力を持っているにも関わらず、男女で機会と評価が平等ではない可能性があったのだ。

ラウンドテーブル当日のスライドより一部抜粋:資生堂提供ラウンドテーブル当日のスライドより一部抜粋:資生堂提供

男女の評価差は、上司自身のアンコンシャスバイアスによるものとは言い切れないことも判明。また、多くの女性がジェンダーバイアスを持っていることもわかったという。

山田さんは「私は比較的年齢層が高い男性にジェンダーのバイアスは高く出るのではないかと思っていたのですが、研究ではそれに一致する結果は見られず、自分の持っていた偏見にハッとしました」

「女性の方が、日常の中で無意識的に刷り込まれてしまうバイアスを抱えてしまい、結果として『板挟み』状態になっている。インポスター症候群(自分の能力や実績を認められない状態)に陥る女性が多いことも、この研究結果を見ると合点がいきます」とコメント。

株式会社資生堂 DE&I戦略推進部イノベーションG グループマネージャー 山田美和さん株式会社資生堂 DE&I戦略推進部イノベーションG グループマネージャー 山田美和さん

山口さんは「男性と比較して女性のアンコンシャスバイアスが大きいという調査結果は世界各地でされている他の調査でも出ることが多く、ジェンダー平等が進む資生堂でも似た結果が示されました」と調査を振り返った。

また、それらの調査の結果から、男女の格差は、特定の個人のバイアスから生じるものというよりは組織全体の課題として捉えるべきだと結論づけた。組織内のジェンダー格差を是正するにあたり、本研究結果を上層部に提示したり、社内セミナーで利用したりすることを提案した。

東京大学大学院経済学研究科 教授 山口慎太郎さん東京大学大学院経済学研究科 教授 山口慎太郎さん

山口さんは「個人が自身見を持っているかもしれないと気づくような、当事者性を芽生えさせる仕組み作りが大切です」「アンコンシャスバイアスが良くないとわかっても、無意識のものである以上、その人の行動を変えるのは難しい。人を変えるのではなく、ジェンダー格差が『悪さをしない』ような仕組みを目指すと良いでしょう」と見解を述べた。

さらにゴルフや飲み会、サウナ、喫煙室など、男性が多くなりがちな非公式のコミュニティで仕事に関わる決定がされることもある現状について言及し、全社員がリラックスして話せるランチ会やコーヒータイムの実施などを提案した。

「女性管理職=スーパーウーマン」じゃなくていい

イベント後半では、参加者が3、4人のグループに分かれ、今日の気づきと学び(ファインディングス)と、それぞれが属する組織でのアクション案をテーマに言葉を交わした。その後、代表者1人がグループディスカッションの内容を抜粋して全体と共有した。

発表の中で最も多かったのが「山田さんと同じく、女性のジェンダーバイアスが高い傾向にあることに驚いた」という声だ。また「多様な女性のリーダー像やロールモデルのいる環境づくりが大切なのでは」「特に地方出身だと、そもそも働く女性が近くに少ない」という声も寄せられた。

さらに「いつもなぜか女性がやっている業務を男性にアサインしてみたり、その逆をやってみるのも気づきになりそう」「オンライン会議において、アバターや声を変えるツールを導入すれば、主語に依存しない会話ができそう」などのクリエイティブなアイデアも寄せられ、会場からは拍手や感嘆の声が上がる場面もあった。 

ディスカッションに使用されたシートディスカッションに使用されたシート

今回のラウンドテーブルを振り返り、山田さんは「女性のロールモデルが少ないことはとても大きな課題ですね。男性社会の中でパワフルに活躍する少数派の女性リーダーもいますが、誰もが彼女たちのような『スーパーウーマン』になれるわけではありませんし、そうである必要もありません」とコメント。個人が既存の枠組みに適応するのではなく、個人のパーソナリティを加味した多様なリーダー像を組織と共創することの重要性に光を当てた。

山口さんは「難しいことは必要ありません。1日30分でも良いので組織の現状を整理してみるだけで『ここに課題ありそうだな』という部分が見えてくるはずです。具体的な数字や課題の可視化は、経営層がアクションに乗り出すための後押しをしてくれます」と参加者にエールを送り、イベントを締め括った。

ディスカッション後にはネットワーキングの機会も設けられ、業界の垣根を超えて今後のコラボレーションの機会を見つけた参加者もいたようだ。

次回のテーマは「ジェンダー表現 アップデートできてますか?」

ジェンダー表現 アップデートできてますか?ジェンダー表現 アップデートできてますか?

次回の「未来を創るDEI」ラウンドテーブルのテーマは「ジェンダー表現 アップデートできてますか?」。

記事や広告を発信する現場では、気をつけたつもりでもジェンダーステレオタイプにとらわれたり、無意識に誰かを排除しかねない表現になっていたりして、今も試行錯誤が続いている。

日々の記事表現の判断に迷った時の手引きとして、朝日新聞は社内向けに「ジェンダーガイドブック」(初版は2002年)を制作。

イベントでは、ガイドブックを執筆・編集した朝日新聞の有志が登壇し、ガイドブックの紹介や、参加者と現場の課題や解決策についての意見交換を実施する。

※終了後には、簡単な懇親会も予定しています。

<イベント概要>
【タイトル】ジェンダー表現アップデートできてますか?
【日時】2024年12月13日(金)14時30分~17時予定 ※14時開場
14時半~15時半:トークセッション
15時半~16時半:参加者同士のディスカッション、発表
16時半~17時:ネットワーキング
【会場】朝日新聞東京本社 新館15Fレセプションルーム(リアル参加のみを想定)
東京都中央区築地5-3-2 (都営大江戸線築地市場駅)
【参加費】無料
【登壇者】朝日新聞ジェンダーガイドブック検討チーム

▼このような方におすすめ
・DEI部署のご担当者
・人事ご担当者
・DEIの浸透した社会の実現に興味がある、すべてのビジネスパーソン

参加希望の方は以下のフォームからご応募ください。

「ジェンダー表現アップデートできてますか?」イベントお申し込みフォーム

応募締め切り日は12月11日(水)。応募多数の場合は抽選とさせていただきます。

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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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