近年、リスキリングの中で注目を集めている「英語学習」。ビジネス英語の習得により、仕事の幅が広がり、外資系企業などへの転職で年収アップも見込めます。
忙しい社会人が英語を学び直す際、カギとなるのは「具体的な目標設定」です。特に、TOEICスコアの目標を立てることで学習の指針が明確になり、モチベーションも維持しやすくなります。
英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」代表の三木雄信氏は、ソフトバンクの元社長室長で、孫正義社長のもとで働きながら、わずか1年で英語をマスターしました。第1回では、効果的な目標設定や学習計画の立て方、続けるコツについて聞きました。
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目標スコアを決める際の3つのポイントは?
――英語を学び直す上で、なぜ具体的な目標設定が大切なのでしょうか?
英語学習で挫折する主な理由の一つは、具体的な目標を持たずに漫然と取り組んでしまうことです。目標を設定することは、自分の進捗を測る基準を持つことに他なりません。例えば「TOEICで800点を取る」という目標があれば、自身のスコアの推移を確認しやすくなり、達成感を得ながら学習を進めることができます。
もし目標が明確でなければ、いつまでにどんな学習が必要かも定まらず、計画も立てづらくなります。例えば、スコアを450点から800点を目指す場合には約975時間の学習が必要とされています。この勉強時間を確保するには、1日3時間の学習で約1年かかります。このように具体的な目標を決めることで、目標スコアまでに必要な勉強時間が分かり、無理のない学習計画を立てることができるのです。
――ビジネスパーソンがTOEICの目標スコアを設定する際、現実的にどのような目標を立てるのがよいでしょうか?
TOEICの目標スコアを決める際は、「キャリアの目標」「日々の勉強にかけられる時間」を考慮することが重要です。また、スコア設定の際に意識すべきポイントは3つあります。
1つ目は「キャリアの目標からスコアを逆算する」ことです。例えば、海外赴任を目指すなら800点以上、短期出張での使用を想定するなら750点前後が目安です。目的に応じた目標を立てれば、モチベーションも上がり、無理のない学習が可能になります。
2つ目は「職位ごとの目標スコアを意識する」こと。多くの企業では、昇進や役職に必要なTOEICスコアを設定しているため、それに合わせて学習の目標を定めるのも有効です。企業によっては求められるスコア基準が異なるため、職場での職能要件を考慮に入れて計画を立てるといいでしょう。
3つ目は「学習時間から目標を設定すること」です。現在のスコアや確保できる学習時間をもとに目標を立てれば、現実的かつ無理のないプランが作れます。例えば、6ヶ月で800点を目指す場合、基礎的な文法や単語力を土台にした集中的な学習が求められます。自分のスケジュールに合わせた学習計画を立てることが、効率的な英語力向上につながります。
学習計画は「1週間単位」で立てる
――目標達成にむけたスケジュールや計画を立てる際のポイントを教えてください。
ポイントは心理学でいう「マジカルナンバー7±2(人は一度に7±2個のものしか同時に把握、記憶することができないという考え方)」に基づき、1週間単位で計画を立てることです。1週間ごとに計画を立てることで、短期的に達成感を得ることができ、無理なく学習を続けられます。
また、自分のタイプに合った効果的な学習スタイルを知ることも大切です。絵や図表、文字などの視覚情報を好む「視覚型」、話を聞いたり会話を通じて学ぶのが得意な「聴覚型」、実際に体験したり体を動かすことで理解を深める「コミュニケーション型(運動感覚型とも)」などのタイプがあります。
――それぞれのタイプに合った効果的な勉強法とはどのようなものでしょう?
視覚型の人はテキストや図解を中心に学習するのがよく、聴覚型の人は通勤中にリスニング教材を活用する方法が効果的です。コミュニケーション型なら、ロールプレイやシミュレーションなど、実際の会話を交えた学習を取り入れると、より深く理解できるでしょう。自分のタイプを把握し、それに合った方法で学習計画を組むことで、効率よく進められます。
また、学習においては、アメリカの言語学者であるスティーブン・クラッシェン教授が提唱した「i+1(アイ・プラス・ワン)」という理論を取り入れるのが効果的です。これは、自分の理解度より少し上のレベルの教材で学ぶことで、効率よくスキルアップが期待できるという考え方です。やや難易度の高い教材で学ぶことで理解が深まり、習得できた際の自信にもつながります。
挫折しないコツは「マイルストーン」と「予備日」
――とはいえ、英語学習は目標を立てたとしても、モチベーションが下がったり、勉強時間を確保できなかったりと挫折しやすいのも事実です。細く長く継続するためのコツはありますか?
勢いだけで学習を始めると、途中で挫折しやすくなるため、マイルストーン(中間地点の目標)を設けることも大切です。マイルストーンとして、TOEIC模試を活用することをおすすめします。スコアの伸びを定期的に確認するなどして進捗を実感でき、実力が目に見えてわかることで、達成感も得やすくなります。
また、忙しい社会人の場合、毎日決まった時間に学習を継続するのは難しいため、週に1日は予備日を設けるなど、柔軟に対応できる計画を立てておくと良いでしょう。こうした工夫で、計画的かつ無理のない学習を続けることが可能です。
社会人にとって、仕事や私生活との両立を図りながら英語学習を続けるのは大きな挑戦です。自分に合った目標と計画で、着実に英語力を伸ばし、キャリアにおける新たなステップを目指しましょう。
(取材・執筆:橋本岬、編集:荘司結有)
【PROFILE】三木 雄信(みき・たけのぶ)さん
英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」主宰。トライズ株式会社代表、株式会社日本英語コーチング協会代表理事。東京大学経済学部卒業後、三菱地所株式会社を経てソフトバンクグループ株式会社に入社。2000年、ソフトバンク社長室長。通信事業参入時のプロジェクトマネージャーを務める。2015年に英語コーチングスクール「TORAIZ(https://toraiz.jp/ )」を開始。
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