ここへ来て冷え込む日が増えています。エアコン暖房を使用する人も多くなっているようです。
ところが空調機器の大手メーカー・ダイキンが実施した調査によると、「電気代に無駄があるかもしれないエアコン使用者は7割以上」だったことが判明しました。
家計に大きな影響を与えるエアコン暖房の無駄を防ぐには、3つのポイントがあるといいます。節電に役立つエアコンの仕組みなども含めて、同社コーポレートコミュニケーション室広報グループの重政周之(しげまさ・ちかし)さんに伺いました。
エアコン暖房の節電に取り組む人は半数以下
電気料金が高騰しているなかで多くの電力を消費する暖房器具、特にエアコン暖房の節電は各家庭にとっても課題といえます。
「冬本番を前に行った『エアコン暖房の節電に関する実態調査』では、暖房器具としてエアコンを使用している人は全体の78.4%。そのうち約7割はエアコンの使用を控えようとしているという結果になりました」(重政さん)
WHO(世界保健機関)は、寒さによる健康への影響から居住者を守るための室温として18℃以上を推奨しています。
「暖房器具の過度な使用控えはおすすめできません。効果的な節電に取り組みながら、我慢せずにエアコンを使っていただきたいと思います。
節電につながる『冬にエアコンを使う際に気を付けていること』を尋ねたところ、節電への取り組みの実施率は半数以下に留まる結果となりました。実施率が最も高い『フィルターを掃除する』でも48.1%、『カーテンなどで部屋の断熱性を高める』が43.0%などと続きました。
中でも、エアコンの節電にとってフィルターの掃除と並んで最も重要といえる『室外機周辺を掃除する』人は7.5%と、少なくなっています。
こうした結果からは、エアコンの基本的な節電方法を知らない人が多いことがうかがえます」(重政さん)
約8割が知らない? 「1℃下げると約10%の節電」
エアコン暖房の使用中に肌寒さを感じた際、設定温度を上げてしまうことは多いものですが、設定温度の高い低いは節電に影響を与えるものなのでしょうか。
「調査では、冬にエアコンを使用している人の約65%が運転していても肌寒さを感じており、そのうちの約76%は、肌寒くなるとエアコンの設定温度を上げていることがわかりました。
肌寒さを感じた際に設定温度を上げている人が多いことから、『冬のエアコンの設定温度を1℃下げると約10%の節電になる』ことをご存知かどうか確認したところ、約8割が知らなかったという結果となりました。
設定温度を上げるとその分多くの電力を消費します。設定温度を上げる前に、加湿をしたり室内の空気を攪拌(かくはん)したりしてみましょう。後ほどご紹介いたしますが、エアコン暖房ではこうした工夫も節電に効果的です」(重政さん)
節電のために知っておきたいエアコン暖房の仕組み
効果的なエアコン暖房の節電を行うために必要な心がけは、どのようなことでしょうか。
「エアコンが部屋を暖める仕組みを知っていただき、ご自宅に適した節電方法を意識することが大切です。
冬場に部屋が寒いと感じるのは、空気中の熱が少ないからです。暖房運転時のエアコンは、屋外の空気中の熱を集めて室内に移動させ、室内の空気中の熱を増やすことで部屋を暖かくしています。
室内機と室外機には熱を集めたり逃がしたりするための熱交換器があり、それらをつなぐパイプ(配管)内には、熱を運ぶ冷媒(れいばい)が室外機に内蔵された圧縮機の働きによって循環しています。室外機は屋外の空気を吸い込んで空気中の熱を熱交換機で集めます。集められた熱は冷媒が受け取って室内機へ運ばれ、温風として送り出されます。
エアコンの消費電力の約80%は、圧縮機が使っています。節電にとって重要なポイントは、エアコンが熱をスムーズに集めたり逃がしたりできる状態をつくり、圧縮機にかかる負担を抑えることです」(重政さん)
エアコン暖房の無駄を防いで効率的に使うには、部屋の環境づくりが大切だそうです。節電につながる3つのポイントは、次のとおりです。
エアコン暖房の無駄を防ぐ3つのポイント
(1)部屋の温度ムラを抑える
暖かい空気は上昇する性質があるため、天井付近と床付近の温度に差が生じる「温度ムラ」が起こりやすくなります。エアコンは天井に暖気がたまっていると「設定温度に達した」と判断して、床付近が肌寒くても運転を緩めてしまいます。
そうなると、エアコンの設定温度を上げたくなると思います。エアコンの設定温度を上げれば足元の肌寒さは和らぎますが、消費電力も増加します。
無駄な電力消費を抑えるためには温度ムラを改善することが大切です。風向はできるだけ下向きにしたり、空気清浄機やサーキュレーターなどを活用して空気をかきまぜたりして、気流をコントロールしましょう。
(2)部屋の湿度を高めに
空気には温度が上がると湿度が下がる性質があるので、エアコン暖房で部屋を暖めたときにも湿度は下がります。湿度が低いと体感温度が下がり、同じ温度でも寒さを感じやすくなります。
洗濯物を部屋干ししたり加湿器を使ったりして、部屋の湿度を40~60%程度にするのがおすすめです。加湿機能が付いた空気清浄機を使うと室内の温度ムラを抑えることにも役立ち、一石二鳥です。
(3)窓から熱を逃がさない
室内の熱が逃げやすいのが窓で、暖かい室内から寒い屋外へ少しずつ逃げて行ってしまいます。熱が逃げるほどエアコンは多くの熱を運んでこなくてはならず、消費電力の増加につながります。
カーテンもポイントになります。断熱性の高いものを選び、上下に隙間ができないよう天井から床まで垂らすと保温効果が高まります。カーテンの色も節電効果が期待できます。暖色系でまとめられた部屋は、寒色と比べて暖かく感じるといわれています。
「エアコンの節電のために大切なことは、“エアコンの心臓”といえる『圧縮機の負担を減らすこと』です。
上記の3つのポイントの他にも、基本的な節電方法『フィルター掃除』『室外機の周辺の掃除』などによって空気の通り道をふさがないことも大切です。フィルターを1年間掃除しないと、消費電力が約25%も無駄になるといわれています。
また、スイッチのオン・オフを繰り返さず、30分程度の外出ならエアコンを一度オフにするより、つけっぱなしにしておくのも工夫のひとつです」(重政さん)
これから本格的な冬が到来します。エアコン暖房の節電に努め、寒い冬の日々を快適に過ごしていきましょう。
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