妻のキャリアを犠牲にしたくない…「共働き子育て世帯」向け転職サービス、男性の利用が5倍に増加。そのワケとは?

イメージ写真

合わせて読みたい>>捕手を「女房役」や「正妻」と表記。夏の高校野球を報じる新聞記事に感じたこと

「共働き子育て世帯」に特化した転職サービス「withwork(ウィズワーク)」で、男性の利用が半年で約5倍に増えたことがわかった。

男性の新規登録者は1年前、60人程度にとどまっていたが、2023年4〜6月に300人を超える登録があったという。

子どもが産まれると、女性がキャリアを諦めたり、働き方を変えたりする傾向が強い日本社会。

withworkの運営会社は、「古い会社の体質に疑問を持ち、転職という選択肢を選ぶ子育て中の男性が増えているのではないか」と分析している。

withworkとは?

withworkは、DEIコンサルティング事業も手がける「XTalent(クロスタレント)」(東京)が運営。

「キャリアとライフはトレードオフじゃない」をテーマに、主に東京都内のIT・Web業界の求人を取り扱っている。

ユーザーに紹介しているのは、「育児・介護に理解があり柔軟な働き方を取り入れている企業」だ。

決してキャリアアップを諦めるのではなく、子育て中でも理想のキャリアを築き、家庭を犠牲にしない働き方ができる企業を厳選しているという。

2019年10月にサービスを開始して以降、ワーキングペアレンツを中心に利用者は増加傾向にあり、21年12月に登録ユーザー数が4500人を突破。

今も右肩上がりの状態が続いており、23年9月時点で8034人となっている。

※(DEIとは、ダイバーシティ《多様性》、エクイティ《公平性》、インクルージョン《包括性》の頭文字をとった略称)

XTalent株式会社のメンバー

子育て中の男性ユーザーが半年前の4.7倍に

そんな中、withworkでは男性の利用も増えている。

2022年10〜12月の新規登録者数は65人だったが、23年1〜3月は276人に増えた。

そして、23年4〜6月は、半年前の4.7倍に当たる306人となった。

日本社会では、「男は仕事、女は家庭」といったステレオタイプなどから、育児や家事が女性に偏っている現状がある。

それゆえ、女性が仕事を辞めたり、キャリアチェンジしたりするケースが多いが、なぜwithworkで男性の利用が増えているのだろうか。

自らもwithworkのコンサルタントとして活動するXTalentの上原達也代表は、ハフポスト日本版の取材に、「子育て中の男性の価値観が少しずつ変化してきている」と答えた。

保育園、育休後…30歳代後半が多い理由

withworkで転職先を探す男性は、30歳代後半が多い。

そのタイミングは、子どもが保育園に通っていたり、育休が終わってしばらく働いた後だったりする時期と重なる。

また、いわゆるハイクラス層の利用者で、「子どもが生まれて価値観が変わった」や「パートナーのキャリアを犠牲にしたくないと思った」と、実際に心境の変化を口にする人もいるという。

上原さんは、「今は昔と違って共働きが当たり前の時代。育児をしながら組織の上を見上げた時に、『なんか違うな』や『この人たちと同じ感覚では働けない』と思う男性が増えている」と話した。

また、「今は社会的風潮という後押しがある。背中を押してもらい、思い切って『転職』という行動をとることができる」と語った。

withworkの公式noteにも、「妻のキャリアも大切に」「自身もパートナーもキャリアを諦めない働き方」といった男性ユーザーの言葉が並んでいる。

withwork

「3.0世代」男性側が変わるタイミングに

さらに、上原さんは「女性のキャリアが広がってきているということは、当然、男性側が変わるタイミングになってきているということ」と指摘する。

これまでは、育児や介護が女性に偏る「1.0世代」、共働きで女性に役割分担が偏る「2.0世代」が中心だった。

最近、共働きで役割分担もフェアなあり方を目指す「3.0世代」が少しずつ増えてきているが、依然として変わらない“昭和的”な働き方や上司のステレオタイプに不満を抱くケースも多い。

その結果、育児や介護をしながら柔軟に働ける企業に転職しているとみられる。

企業も働き盛りの優秀な人材を確保するため、古い感覚をアップデートしながら受け入れ態勢を整えている。

子育て中のマネジメント層の5割が「出社回帰」で転職検討

3.0世代といった人材が柔軟に働ける企業に転職しているというのは、XTalentが実施したアンケート調査でも顕著に現れている。

XTalentは6月2〜18日、子育てや介護をしながら働くワーキングペアレンツら男女1085人(20〜50歳代)にウェブ調査を実施。

現在、新型コロナウイルスの蔓延で増えたリモートワークを廃止・縮小する企業が増えているが、この「出社回帰」現象を理由に「転職を考えた・実際に転職した」と回答した人は、407人中198人だった。

この407人は、子育て中の30〜40歳代のマネジメント層だ。

マネジメント層の約半数が、リモートワークの廃止・縮小で「転職」という2文字を頭に浮かべ、一部は行動に移したということになる。

なお、転職活動時期については、徐々に出社回帰の潮流が目立ち始めた2022年以降に跳ね上がっている。

また、転職する上で「企業選びにおいて重視していたもの」のトップ3は、「リモートワーク可」が最も多く、「柔軟な勤務時間」、「子育てに理解があるカルチャー」などと続いた。

上原さんは、「withworkの男性利用者はますます増えていくと予想しており、割合として半分が男性になってもおかしくないと思っている多様な人材を採用する企業が競争に勝って生き残る環境をつくっていきたい」と話した。

企業選びで重視したもの

インタビュー記事を後日配信

ハフポスト日本版は、XTalentの上原達也代表にインタビューしました。

次の記事では、転職の現場で聞かれる共働き子育て世代の本音、上原代表自身の経験、なぜ企業は変わらなければならないのか、などをインタビュー形式で詳しくまとめます。

【情報提供をお待ちしています】

「子育てがきっかけで転職しました」

ここ最近、こんな連絡が頻繁にくるようになりました。

私が子育てを機に転職した頃(2022年)、業界ではこのような理由で会社を退職する人はほとんどいませんでした(下記記事参照)。

「もったいない」や「『嫁さん』の尻に敷かれている」と言われたこともありますが、withworkで男性の利用が増えているように、徐々に潮目が変わりつつあるのかもしれません。

しかし、子育てを理由に転職する男性は、社会全体で見るとまだまだマイノリティです。

家事や育児、介護などが女性に偏るジェンダー不平等が社会に蔓延する中、キャリアと家庭の両立に悩んでいる男性も多いのではないでしょうか。

上司が子育てに理解がない、育児休暇を取れなかった、悩んだ結果ついに転職したーー。

こんな体験を社会に伝えたいという方がいましたら、ぜひお話を聞かせてください。

当事者のどんな声が伝わっていないのか。そして、どのように会社が変われば両立して働けるのか。

一緒に考えていきましょう。

情報提供は、以下に記載した相本の連絡先までお願いします。

Mail:keita.aimoto@huffpost.jp

Twitter:@AIMOTO8989

(記事)

「妻の育休期間が終わればどうすれば……」私が新聞記者を辞めた理由は「子育て」だった

…クリックして全文を読む

オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
妻のキャリアを犠牲にしたくない…「共働き子育て世帯」向け転職サービス、男性の利用が5倍に増加。そのワケとは?

Keita Aimoto