インドの無人探査機「チャンドラヤーン3号」の月面着陸が成功しました。これはアメリカ、旧ソ連、中国に次ぐ快挙で、月の南極付近への着陸としては世界初です。
月に探査機を送ろうとしたのはインドだけではありません。失敗には終わっているものの、2023年4月には日本のベンチャー企業「ispace」が民間初の月面着陸に挑戦しており、つい最近ではロシアも「ルナ25号」を送り込んでいます。下火になっていた月面探査に、なぜ再び注目が集まっているのでしょうか?
*Category:テクノロジー Technology *Source:BBC ,NASA
インドの探査機が着陸した「月の南極」にある2つの重要資源
月の南極に注目が集まっている重要な理由の1つが「水」の存在です。月には大気を留めるだけの重力がないため、基本的に月の水は蒸発して宇宙空間に拡散してしまいます。しかし1960年代から、「月の極」にある永久に影になるクレーターには氷が存在するのではないかと推測されてきました。
2008年、インドが初めて打ち上げた月探査機「チャンドラヤーン1号」は、初めて月面に水が存在する証拠を発見しました。NASAはこの観測を解析した結果として、月の北極に「少なくとも総計6億トンの水が存在する」という見積もりを発表しています。
水は地球上ではありふれた資源ですが、宇宙空間においては非常に重要です。イギリスのオープン大学の惑星科学者であるシメオン・バーバー教授によれば、月に飲料水1リットル送るには約100万ドルかかるとのこと。
That’s $1m per litre of drinking water! Space entrepreneurs no doubt see lunar ice as an opportunity to supply astronauts with locally sourced water
— 引用:BBC
「飲料水1リットルあたり100万ドル(約1450万円)だ!宇宙起業家たちは、月の氷が宇宙飛行士に地産の水を供給するチャンスだと考えているに違いありません(BBC)」
さらに、水を分解してできる水素と酸素は、どちらもロケットを発射するための推進剤として役立ちます。月にどれだけの氷があるのか、採掘し精製できるのかを調査することは非常に重要なのです。
また、NASAのプロジェクト科学者であるノア・ペトロ氏は「太陽光発電は、南極が持つもうひとつの資源です」と述べています。月の南極のいくつかの場所は、最大で地球の200日分の太陽光が絶え間なく降り注ぎます。このエネルギーと水は、月面に有人基地を設置する上では欠かせません。
アメリカのノートルダム大学で惑星地質学を教えるクライブ・ニール教授は、インドの探査機の着陸地点は「実際の極から少し離れている」ものの「そこから得られるデータは魅力的なものになるだろう」と指摘しました。
月探査ではインドの他、ロシアと中国が月宇宙ステーションを建設する計画を立てており、NASAも半世紀ぶりの月への有人着陸を成功させる計画を進めています。また、日本も8月26日に小型月着陸実証機「SLIM」を送る小規模ミッションを予定しており、2026年までにインドと共同で「月の裏側」を探査する月極探査(Lupex)ミッションも計画中です。
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日本も狙う「月面着陸」いまさら〝競争激化〟のワケ