マイクロソフトのInternet Explorerの後継機であるMicrosoft Edge。しかし実はEdgeは、ライバルであるGoogleが提供するChromiumで構築されています。
すこし前までのマイクロソフトは、ユーザーに自社のソフトを出来る限り使わせることを重視した会社でした。なぜマイクロソフトはこのような柔軟な企業に変化し、そして利益を伸ばせたのでしょうか?
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マイクロソフト復活の鍵となったサティア・ナデラCEO
2000年まで、マイクロソフトの主要製品はWindowsとMicrosoft Officeの2つでした。
これらの製品は、コンピュータの分野だけでなく、技術産業にも革命を起こしました。マイクロソフトはその勢いに乗り、電子メール、検索、メッセージング、ビデオ会議、ゲーム、音楽、と様々な分野へ進出しようとします。しかし、どれも上手くはいきませんでした。Internet ExplorerはChromeに負け、HotmailはGmailに負けたのです。
それでもマイクロソフトは他社に対抗し続けました。Skypeを買収し、Bingを立ち上げ、スマートフォンの分野にも参入しました。しかしまたしてもGoogleの検索エンジンやAndroidや完敗したのです。株価は17年間低迷し、マイクロソフトに対する世論はかつてないほど悪化していきました。
そんなマイクロソフトは大きな変化を必要としていました。ここで登場したのが、サティア・ナデラ氏です。
CEOとして迎え入れられた彼の最初の仕事は、ゴミをすべて取り除くことでした。ナデラCEOはスマートフォン事業など数十の部門を閉鎖し、史上最悪のOSであるWindows 8を入れ替え、Internet ExplorerをEdgeに変えました。ナデラ氏はコンシューマーサイドを追求する気はなかったのです。
その一方で、クラウドインフラストラクチャという新進気鋭の市場を攻めることにしました。当時、AWSは唯一のクラウドサービスでしたが、優れている反面、非常に高価でした。そこでナデラ氏は、格安のクラウド市場に力を入れることにしたのです。マイクロソフトのAzureはAWSより最大5倍も安い価格に設定しました。さらに顧客の要望により、Linuxのオプションを提供し始めたのです。ナデラ氏はマイクロソフトのプライドを捨て、企業のニーズに合わせてカスタマイズしていく道を選択したのです。
一見、マイクロソフトはコンシューマー向けビジネスから撤退したように見えます。しかし、むしろその逆です。マイクロソフトが消費者からの収入に頼らなくなったことで、消費者向け分野をこれまで以上に強く攻めることができるようになったのです。
代表的な例がInternet Explorerの後継機としてリリースされたMicrosoft Edgeブラウザです。Edgeは、ライバルであるGoogleが提供するChromeのオープンソース版であるChromiumをベースに構築されています。マイクロソフトはChromeを受け入れ、ブラウザをより効率的にし、極端なラム使用量を削減したのです。60個のタブを開いた場合、Chromeは3.7GB、FireFoxは3.9GBのメモリを消費しますが、Edgeは2.9GBの消費に抑えることができました。
また最近ではChatGPTの自社版を創るのではなく、最初からChatGPTそのものを取り入れることにしました。マイクロソフトの製品としては久しぶりに注目を集めており、結果的には成功しているといっていいでしょう。
マイクロソフトは、スマートフォン、音楽ストリーミング、Windows 8、スマートアシスタント、そしてAIの分野でも敗北してしまいました。しかし、他社と上手く付き合い、そのパイのほんの一部を自分のものにすること、それこそが長期的な持続的成長へと繋がることに気付いたのです。
一見弱々しく見えるこのアプローチですが、堅実にしっかりと基盤を築いたからこそ、マイクロソフトはBingへのAI統合で素早く、大掛かりなチャレンジができたのです。対するライバルのGoogleは、自社の根幹事業を危ぶみながらも、なかなか身動きが取れていない状況。この状況こそが、マイクロソフトとGoogleの違いを決定づけているといっていいでしょう。
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Googleに4連続で負けたマイクロソフト、AIで大逆転できた理由