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「一石二鳥」は動物虐待の正当化につながる?米スタンフォード大の有害な言葉リストが議論呼ぶ

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年度末や年度初めは人前であいさつする機会が増える。

目の前の人やその人たちに関わりのある人をも不快にさせない表現に努めようとした時、言葉のチョイスに悩むことはないだろうか。

ダイバーシティという言葉や考え方が浸透し、年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などさまざまな属性を尊重する現代。十人十色を超えて「千人千色」とも、億とも言える人々に配慮しながら心に響くスピーチが求められるため、スピーチコードを意識することは重要である。

幸いにして、私は法廷に立ち、裁判官と陪審員の前で弁護をする弁護士として、このテーマには敏感に、そして丁寧に対応してきた。

日本とアメリカの社会で暮らす私にとって、両方の文化を踏まえたスピーチを考える時間は、自らのクリエイティブな才能やモラルと向き合うことにつながる有意義な時間である。

「やりすぎ」との声が上がった有害な言葉リスト

2022年末、新年の挨拶を推敲していた際にスタンフォード大学のニュースが目に留まった。同大学のウェブサイト上に散見される人種差別、暴力、偏見につながる有害な言語表現の撲滅運動である。2020年にダートマス大学の一例を伝えた通り、アメリカの複数の大学がこうした活動を展開している。

2022年初めにはワシントン大学が、そして、スタンフォード大学とほぼ同時期にカリフォルニア工科大学も有害な表現を排除すると公表した。

スタンフォード大学の有害な言語表現のリストにはジェンダー等の10の項目に150以上の言葉が連ねられている。

リストには「アメリカ人」や「祖父」、「一石二鳥」等も含まれていた。理由は次のとおりである。アメリカ人「南北アメリカは複数の国が存在するのに、アメリカ人は米国人のみを指している」、祖父は「南北戦争後に成立した祖父条項という黒人の投票権のはく奪に由来する」、一石二鳥は「動物に対する虐待を正当化するから」というのである。

正直なところ、やりすぎではないだろうか。スピーチコードの重要性は理解しつつも、私の日常からこれらを完全に排除できるか、やや困難を感じた。

リストについてマスメディアで報じられると、イーロン・マスクら著名人をはじめ、社会から様々な否定的な声が上がり、スタンフォード大学は大学のウェブサイトからこのリストを削除するに至った。社会が「これはやりすぎ」と認めた結果だろう。 

使う使わないではなく、教育的な試み

スタンフォード大学によれば、このリストの作成は言葉を使うか否かに対処しようとするものではなく、言葉の潜在的な影響についての教育的試みだという。

そこで、私はこれまでの経緯を踏まえて新たにリストを見直してみた。

例えば、「hip-hip hurray(hip hip hooray)」はホロコースト時代にドイツ市民がユダヤ人に向けて発していた言葉だと付記されていて驚いた。言葉の背景を知った今、この表現を使うことは躊躇われるから、その効果があることは確かだろう。

こうした有害な言葉のリストを巡る一連の動きは、ダイバーシティを重んじる現代社会において、その先駆的、進歩的なスタンスが一般社会に受け入れられるために時間がかかることを示している。

今でこそ、当たり前であるダイバーシティがアメリカで推進され始めたのは1960年で、公民権活動や女性運動が活発化し1964年に公民権法が制定された頃である。

日本においては1985年の男女雇用機会均等法の制定あたりではないだろうか。当時からゆっくりと着実に歩を進め、「ダイバーシティ&インクルージョン」に代表されるように多様性とその能力の活用が有効であることが社会に浸透した。

これらの教育効果を息子たちとの会話を通じて思い知らされることがある。彼らは他者を表現する代名詞(彼、彼女、彼ら等)の用い方にも繊細で、表現する際は必ず当事者に尋ねているというのだ。私が過ごした学生時代よりも、さらに個を尊重する姿勢が身についていると実感する。

私たちがスタンフォード大学のリストに列挙された言葉、一つずつを吟味することは、「ダイバーシティ&インクルージョン」的な社会に近づくことになるだろう。

(文:ライアン・ゴールドスティン 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)

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