アクサ損害保険は12月13日から、同性パートナーも「配偶者」として、自動車保険やその他の特約などで法律上の夫婦や事実婚の人らと同様の補償を受けられる保険の引き受けを開始した。
対象となるのは保険始期日が同日以降の契約で、同性パートナーとの関係性の証明は、自治体が性的マイノリティのカップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」や、民間法人が発行する証明書で行う。
アクサグループは4月に行われた国内最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)2022』で「プラチナスポンサー」となっていた。当時は自動車保険で同性パートナーを配偶者として認められておらず、ゲイ当事者から抗議を受ける一幕があった。
同社の担当者はハフポスト日本版の取材に「お客さまにはご不快・ご不便な思いをさせてしまい、大変申し訳なく思っております。これを教訓に、今後もたゆむことなく企業努力を重ね、お客さまに安心をお届けしてまいりたいと思います」と話している。
◆同性パートナーを配偶者として保障。何が適用できる?
自動車保険や特約などで、同性パートナーを配偶者として新たに補償する。対象となるのは保険始期日が12月13日以降の契約。
・補償される運転者の範囲を限定することで保険料を節約できる本人・配偶者型の「運転者限定特約」
・自動車保険の事故歴に応じて保険料が割増、割引される「ノンフリート等級」の引き継ぎ
・日常生活における偶然な事故で他人の財物を壊したりケガをさせたりして、法律上の損害賠償責任を負ってしまった場合に備える「日常生活賠償責任保険特約(示談交渉付)」
などが、同性パートナーにも適用できるようになるという。
同性パートナーとの関係性の証明には、各自治体の「パートナーシップ制度」のほか、一般社団法人Famieeが発行するパートナーシップ証明書も利用できる。発行自体は無料だが、申請に必要な証明書類を取得する際に手数料がかかる可能性はあるという。
現在の契約者については次回の契約更新から、同性パートナーを配偶者として補償の範囲に含めたり、本人・配偶者型の運転者限定特約を使うことで保険料を下げたりすることができる。
自動車保険の契約期間は1年となっており、担当者は「約款改定前は、同性パートナーのご契約者様が、仮に運転中に一方のパートナーに誤ってぶつかったり、ひいてしまった場合には、賠償の対象となるため、保険金を支払えました」と説明。
「しかし、同性パートナーとして配偶者の範囲に入ってしまうと、賠償の範囲外となってしまいます。このように、契約期間中に約款を変更してしまうデメリットも生じますので、契約の更新時より新しい取り扱いとさせていただいております」と補足する。
◆ 「誰もが自分らしさを発揮できる環境づくりに」
ハフポスト日本版はアクサ損害保険の担当者に、今回の取り組みについて取材した。
ーー「配偶者」に同性カップルを含めた思いについて、教えてください。
お客さまの人生に寄り添い、さまざまなニーズにお応えしたいという思いで、改定を進めてまいりました。今後もお客さま一人ひとりが自分らしい人生を送っていただけるよう、商品・サービスを展開してまいります。
ーーTRP2022で、ゲイ当事者の方から「同性パートナーを配偶者として認めていない中で、プラチナスポンサーになるのはおかしい」と抗議がありました。これについて、受け止めを聞かせてください。
当時、弊社の制度が完全ではないことは重々承知しており、ご批判はごもっともとして真摯に受け止めております。TRP2022以前から、同性パートナーを配偶者としてお引き受けできるよう準備を進めておりましたが、約款やシステム・帳票の改定に時間を要してしまいました。一部のお客さまにはご不快・ご不便な思いをさせてしまい、大変申し訳なく思っております。
TRP2022でのご意見をいただいたのち、マイノリティのお客さまに向けてさらに向上・改善できる点がないかを総点検し、経営陣を含めて真剣な討議を進めました。これを教訓に、今後もたゆむことなく企業努力を重ね、お客さまに安心をお届けしてまいりたいと思います。
ーーアクサグループで他に、同性パートナーへの補償をしている保険を教えてください。
アクサ・ホールディングス・ジャパン傘下企業が提供している保険商品ラインナップは生命保険、自動車保険、バイク保険、ペット保険となります。
「アクサ生命保険」では同性パートナーを受取人にしていただくことができます。「アクサダイレクト生命」では、2022年12月22日より、新規お申込み時に同性のパートナーの方も死亡保険金等受取人および指定代理請求人に指定いただくことが可能となりました。
ーーLGBTQフレンドリーの取り組みに対する思いを教えてください。
弊社では、LGBTQ+当事者とアライの従業員ネットワークを中心に、社内理解を深める研修やイベント等の実施、新卒採用において応募する学生に性別の記入や顔写真の提出を求めるプロセスの廃止、育児休暇、特別有給休暇(慶弔休暇)付与や慶弔金等を支給の際に、申告により取得できるなどなど、属性に関わらず誰もが自分らしさを発揮できる環境づくりに努めております。
また、従業員一人ひとりが属性に関わらず、組織の一員として能力を発揮できる職場環境を構築していく目的で世界のアクサ企業従業員を対象とした、インクルージョン・サーベイを実施しています。設問の中には、「あなたは、多様性に富んだインクルーシブな職場として、アクサをどの程度推奨しますか?」といった設問が用意されており、インクルーシブな職場環境作りの進捗状況を把握するために定点観測しています。
アクサグループ全体で、今後も誰もがあたりまえに混ざり合える職場・社会を目指してインクルージョン&ダイバーシティ推進をしてまいります。
<文=佐藤雄(@takeruc10)、写真=坪池順(@juntsuboike)/ハフポスト日本版>
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アクサ自動車保険、同性パートナーを「配偶者」として補償開始。LGBTQイベントで抗議を受け「安心を届けたい」