65年前に劇場公開された後、幻の存在となっていた戦争映画がある。『われ眞珠湾上空にあり 電撃作戦11号』(以下、『電撃作戦11号』)だ。
太平洋戦争中に撮影した記録映像をつなぎ合わせて作ったドキュメンタリー映画。老朽化したフィルムを倉庫で発見した製作者の孫が、再上映できる状態に修復するためのクラウドファンディングを開始した。
■幻の戦争映画『電撃作戦11号』とは?
クラウドファンディングの対象となる『電撃作戦11号』は、もともと造船事業などを手がけていた故・矢元照雄さんが、大和(だいわ)映画製作株式会社を設立して製作した。
『電撃作戦11号』は真珠湾攻撃のコードネームとされている。1941年の真珠湾攻撃に始まり、1942年のガダルカナル島争奪をめぐるソロモン海戦など太平洋戦争初期の記録映像とナレーションで構成された全77分の長編映画だ。戦争初期の旧日本軍の勝利が続いていたシーンをつなぎ合わせてあるのが特徴だ。ラストの靖国神社のシーンのみ制作時の撮影となる。
『映画秘宝』2007年7月号に掲載されたインタビューで、矢元照雄さんは製作の動機を以下のように述べている。
「それで商用で東京に出るたび、映画館でかかっている映画が、日本が負けたものばかりだって気がついたのが、映画を作るきっかけになった。確かに日本は戦争に負けた。しかし戦争に勝っていて元気だった時代も確実にあった、そのことを映画にして見せられないかと思ったんだよ」
1957年8月9日に封切り。全国600館以上で公開される大ヒット作になったという。GHQの占領が解かれてから5年後だったこともあり、旧日本軍を再評価する内容に注目が集まったと思われる。ただ、その後は再上映やテレビ放送はもちろん、メディア収録もされたことのない「幻の戦争映画」となっていた。
■「国映の現在につながる代表作の1つ」作者の孫がフィルム修復のプロジェクトを開始
フィルムを保管していたのは、大和映画製作株式会社を前身とする国映株式会社だ。昭和期には数多くのピンク映画を製作していたが、現在は映像製作からは手を引き、東京・銀座で「TCC試写室」を運営。矢元照雄さんの孫、矢元一臣さんが会社を引き継いでいる。
2019年から2022年にかけて倉庫の整理をした際に、『電撃作戦11号』のフィルムが全編見つかったことを機に、クラウドファンディングで資金を集め、亡き祖父の遺作を修復して再上映することを決意したという。一臣さんはハフポスト日本版の取材に対し、以下のようにコメントしている。
「母から聞いた話では、祖父は『電撃作戦11号』について『戦後出兵したものの帰らぬ息子となった息子の姿を探す親御様達が何度も劇場へ足を運び、感謝してくれたことが寄せられ、映画を製作して良かった』と話していたそうです。『電撃作戦11号』は、国映の現在につながる代表作の1つとの認識がありますので、現代表としてデジタル化して修復し、この作品を鑑賞したい望む多くの方に観ていただきたいと思っています」
■クラウドファンディングの概要は?
クラウドファンディングは、CAMPFIREとパルコが共同運営する「BOOSTER」で6月30日から始まった。期限は7月31日まで。募集するのはフィルムのデジタル化や映像補正などのための資金102万円。
リターンは5000円を支援した人には、8月にTCC試写室で開催する『電撃作戦11号』の上映会への招待券。5万円を支援した人には『電撃作戦11号』の映像をBlu-rayディスクに収録したものを送付する。
「All-in方式」のプロジェクトのため、目標金額に満たない場合も計画を実行し、リターンを届ける予定だという。告知ページは以下の通り。
【幻のドキュメンタリー映画『われ眞珠湾上空にあり 電撃作戦11号』修復プロジェクト】
■修復作業中の『電撃作戦11号』の動画
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
祖父が作った「幻の戦争映画」を復活させたい。『われ眞珠湾上空にあり 電撃作戦11号』のクラウドファンディング始まる