記録的に早い梅雨明けのあと、日本列島では「災害級」の暑さが続いています。7月1日には東京都心は7日連続の猛暑日となり、最高気温37.0度を記録しました。
こうした中で熱中症対策に効果的なのが、日傘です。2016年の研究結果によると、晴天時に日傘を使用することで、頭部の体感温度が3.9〜9.3℃低下。全身の体感温度も1~2℃低下することが実証されました。しかし、ハフポスト日本版が2020年に集計したアンケートでは日傘を使っているのは女性が8割なのに対し、男性は5割と低迷しています。
熱中症対策として効果的なのに「日傘は女性が差すもの」として抵抗感がある男性もいるのではないでしょうか。「男性学」を専門とする社会学者の田中俊之さん(46)もその一人でした。大妻女子大学人間関係学部で准教授を務めています。
数カ月前、折りたたみ式の雨傘兼用の日傘を購入したものの、雨天のときにしか使っていませんでした。6月30日朝、大学への通勤時に思い切って、人生で初めて日傘を差してみたところ、直射日光をしのげて非常に快適だっただけでなく、ある気づきがありました。
これまで「男らしさ・女らしさにこだわる必要はない」ということを著書などで訴えてきた田中さんですが、日傘に関しては差すことに「恥ずかしさ」を感じていたそうです。思い切って差してみたところ、自分を縛っていた「男らしさの呪縛」から解き放たれて、「すごく自由を感じた」とハフポスト日本版の取材に話しました。
■田中俊之さんとの一問一答
―― 日傘を初めて使った印象はいかがでしたか?
一回、昨日差した後は「もう差さないと無理だな」っていうレベルで。「今までなんで差してなかったんだろう」って感じでしたね。もう本当に人にお勧めしたいって思えるレベルです。暑いじゃないですか。すごく単純に。
―― これまで日傘を使わなかった理由は?
やはり僕もジェンダーのことを研究してきた人間なので「男だから」「女だから」ってこだわりはあんまりないつもりできました。
だから日傘を差さないのも「日光を浴びるのが好きだから差さない」と思ってたんですけど、今年の春にいざ買ったわけですよね。昨日に限らず、5月下旬から暑い日が続いたので、差すタイミングはこれまでもあったんです。でも、いざ日傘を差そうとすると差せない自分がいたんですよ。
あ、これはすごいなと思いました。自分はジェンダーのことを職業として研究してきていて「男らしさ・女らしさにこだわる必要はない」という話をしてるのに……。
僕が子どもの頃には、今よりも男と女がきっぱりと分かれていたこともあり、「日傘って女の人が使うもの」という認識がものすごく僕の中に染みついてたみたいです。
学生にも、日傘を僕が差してたらどう思う?と聞いてみたんですよ。当然「どうも思わない」と。今回、本当に気づいたんです。自分の中で「男はこうあるべき」といううこだわりが、実はいろいろある。その縛られてるものの一つが、日傘だったんだなあと実感しましたね。
差したときに、すごく自由を感じたんですよ。今まで自分を縛ってたものから解き放たれた。自分が男として「日傘なんて」と思っていた部分が外れて、これまで自分が言ってることとの適合性もあった。「男だから女だからって言っちゃうと選択肢が狭まって不自由だ」という話をしてきましたが、その自分が「日傘を差さないという不自由」を味わっていたわけです。
――男性で「日傘を差してみたいけど迷っている」方にアドバイスがあれば教えてください
例えば中高年の男性が日傘を差すことに対して、変な目で見る人ってのは非常に少ないと思います。ただし、全くいないとは言えなくて、パフェを食べてる男性がいたときに『あのおじさんパフェ食べてる』ってチラっと見てくる人がいるかもしれない。男性の日傘もまだ珍しいからチラッと見てくる人がいるかもしれないけど、それが大多数を占めることはないですよね。
だから「ほとんどの人は気にしない」っていう事実にまず気づいてもらう必要があって。ただ、僕は今回の自分が経験で面白いなと思ったのは、買うことは容易なんです。日差しも強いし、デパートの紳士向けの売り場にも日傘は置いてあるんで。ただ、実際に差す段階になって、自分を知る面白さがあるんじゃないかと思います。
「日差しが強いから日傘を差す」は、自然なことじゃないですか。それをためらってしまうのであれば、自分の『男らしさ』への縛られ具合がわかって面白いですよ
僕も昨日の暑さで「もう差そう!」と思うまでは、日傘をためらっていた自分がいたんですよ。その気づきがあったので「是非お試しあれ」と言いたいですね。
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人生で初めて日傘を差したら「男らしさ」の呪縛から自由になった。社会学者の田中俊之さんが語る