東京・新宿駅の東南口前の広場で6月28日、法律上の性別が同じ2人の婚姻「結婚の平等」の実現を求める、サイレントデモが行われた。
デモを開催したのはコスメブランドLUSH(ラッシュ)で、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告や、LGBTQ当事者、アーティストなど28人が参加した。
4人のオペラ歌手がミュージカル『レント』のテーマ曲「Seasons of love(シーズン・オブ・ラブ)」を歌う中、参加者たちは1日も早い結婚の平等実現を訴えるメッセージやアート作品を掲げた。
これは、ラッシュが実施している「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンの一環で、1969年にストーンウォールの反乱が起きた日として知られる6月28日に、東京と大阪でサイレントデモを行った。
キャンペーンの目的は「結婚の平等に賛同する声」を可視化し、会話を広げること。誰もが望む相手と結婚できる社会を目指し、6月24日〜7月10日まで、全国70以上のラッシュ店舗や公式サイトで実施されている。
ラッシュは今回のキャンペーンで、12人のクリエイターが手がけたアート作品を通して、メッセージを発信している。
サイレントデモや歌もアートメッセージの一つで、道ゆく人々に結婚の平等について感じてもらうために計画された。
ショックだった判決。でも負けない
参加者の中には、「結婚の自由をすべての人に」訴訟原告の福田理恵さんと藤井美由紀さんの姿もあった。
同訴訟は、全国5つの地裁・高裁で進んでいて、2021年3月には札幌地裁で「法律上の性別が同じ者同士の結婚を認めないのは、法の下の平等に反する」という判決が言い渡された。
福田さんは、この判決を聞いた時に「初めて公に、一人の人間として見てもらえたんだ」という喜びや安堵感を感じたという。
しかし、サイレントデモの1週間前の6月20日、大阪地裁で「法律上同性のふたりの結婚を認めない現在の法律は、憲法に違反しない」という、札幌とは異なる判断が示された。
この判決に落ち込み、涙を流したという福田さんと藤井さん。
福田さんは「大阪判決は『差異があっても良い』というような内容で、拒絶されたような気持ちになりました。差別されていい存在なんだって言われたような気がして、とてもショックでした」と話す。
その一方で、声を上げることの大切さを改めて実感したという。
「原告の私達がここでくじけてしまったら、声を上げられない大勢の当事者の人たちが希望を失ってしまう、と思いました。だから声を上げられる私たちは、このサイレントデモのような場でもしっかり声をあげていこうと話しました」
ラッシュのキャンペーンは、今回で2度目となる。前回は3月に実施し、チャリティーソープを販売。売上全額を「公益社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に(通称:マリフォー)」に寄付した。
企業が結婚の平等を後押しするキャンペーンを続けていることは、福田さんと藤井さんに大きな励みだ。
九州の地方都市出身の藤井さんは、ラッシュの全国の店舗でキャンペーンが展開されていることにも勇気づけられている。
「地方の生きづらさなども知っているので、そういう場所にある店舗でも(結婚の平等をテーマにした)飾り付けがされているのを見て、『結婚の自由、いいんだ』とか『存在が認められたんだ』『応援してくれる人がいるんだ』と思えて、心の支えになっています」
職業や将来を選択するときに、性別にしばられないことと同じように、
結婚を選択するときに、性別にしばられない未来がくるべきだと思います。
すべての人類に愛ある未来を!!!#結婚の自由をすべての人に#マリフォーLUSH#マリフォー国会メーターpic.twitter.com/g56Q76VSGL— LUSH アミュプラザ鹿児島店 (@lushjp_gokagshm) June 24, 2022
本日のアートはこちら💁🏻♀️✨
「誰を好きになってもいいんだよ」
ぜひ皆さんもお気に入りのアートを選んでアクションしてみてくださいね💓#マリフォー国会メーター#マリフォーLUSH#結婚の自由をすべての人にpic.twitter.com/utrmtqJpGY
— ラッシュ盛岡フェザン店 (@lushjp_mfmoriok) June 28, 2022
互いを想い合う2人が、当たり前に一緒にいられる、そんな未来を願ってこの絵を制作しました。カップルを優しく包み込むような空気感を作りたく、穏やかな色使いの植物を散りばめています。
Natsuki Kurachi#マリフォー国会メーター#マリフォーLUSH#結婚の自由をすべての人にpic.twitter.com/aV1ylEqImM
— ラッシュ ピオニウォーク東松山店 (@lushjp_hmmatsym) June 28, 2022
声は力になる
大阪地裁の判決では、法律上の性別が同じカップルに「どのような保護を与えるのか、議論が尽くされていない」という判断も示された。
しかし、福田さんは「議論ができないからこそ、一部の人が声を上げて訴訟起こしている。声を出せない状況ということを理解して欲しいと思う」と訴える。
そして、そういった議論を後押しするためにも、声の可視化が大切だと感じている。
「可視化しないと、性的マイノリティがいるということ、応援してくれる人たちもいるということが伝わりません。それを知ってもらい、そこから議論が起きるのかなと思っています。当事者の人たちも『声を上げていいんだ』と感じられるようになる雰囲気が作られていくと、世の中変わっていくのかなと思います」
藤井さんは、デモをしながら感じたことがあった。
「立ち止まってる人と歩いていく人がいて、現実と同じようだなと感じました。立ち止まってる人は気にしてくれている人。でも、通り過ぎる人もたくさんいて『関心がない人たちは通り過ぎているんだな』と思いました」
「でも少しだけでも『あれ?』『何やってるんだろう』とか、存在に気付くデモになっていたら嬉しいなと思います。『今日歌っていたよね』と話題にしたり、Twitterの投稿や記事を目にして『これ見たよ』とか『結婚の自由と言ってたよね』と話すとか。そういった形で、知らない人たちも話題にしていたらすごく嬉しいです」
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
歌とアートで「結婚の平等」を訴える。サイレントデモでLGBTQ当事者らが伝えたこと