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パートナーシップでは「婚姻届の紙切れにも届かない」。判決に原告が訴えたこと【結婚の平等裁判】

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「結婚の自由をすべての人に」裁判の原告の(中央右から)田中昭全さん、川田有希さん、坂田麻智さん、坂田テレサさん「結婚の自由をすべての人に」裁判の原告の(中央右から)田中昭全さん、川田有希さん、坂田麻智さん、坂田テレサさん

法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないのは憲法違反だとして、複数のLGBTQ当事者が国を訴える「結婚の自由をすべての人に」裁判。

大阪地裁(土井文美裁判長)は6月20日、「同性愛者と異性愛者の間に差異はあるものの、同性間の関係にどのような保護を与えるかはまだ議論の過程にある」などとして、原告側の訴えを棄却しました。

判決を受け、原告は「議論が尽くされていないからこそ、司法に判断をしてほしかった。大阪地裁が判断から逃げたように、私たちからは見えています」などと思いを吐露し、控訴する方針を示しました。

◆どんな裁判、判決だったのか

判決が言い渡された大阪地裁判決が言い渡された大阪地裁

「結婚の自由をすべての人に」裁判は、全国で30人以上の性的マイノリティが原告となり、全国5つの地裁、高裁で裁判が進んでいます。

大阪地裁の訴訟では、坂田麻智さんと坂田テレサさん、田中昭全さんと川田有希さんら3組のカップルが原告になっています。

この裁判には2つの争点がありました。

1つ目は、戸籍や住民票の性別が同じふたりの結婚を認めないことは、憲法が保障する「法の下の平等」(14条)や「婚姻の自由」(24条)に違反しているのか。

2つ目は、もしいずれか、もしくは両方が「違憲」と認められた場合、国が憲法違反の法律を放置し、必要な法整備を怠っていたことが、国家賠償法に反する「立法不作為」で、違法になるのか。

今回の大阪地裁の訴訟では、法律上の性別が同じふたりの結婚を認めないことは、憲法14条にも24条にも違反しておらず、立法不作為も成立しないとして、原告側の請求を棄却。

昨年3月には札幌地裁が、「同性カップルが結婚できないのは、憲法14条に反する不当な差別で違憲」といった判決を下しており、「結婚の平等」をめぐる司法判断が札幌地裁と分かれる形となりました。

◆類似制度では、紙切れ1枚に届かない

「結婚の自由をすべての人に」裁判の原告の(中央右から)田中昭全さん、川田有希さん、坂田麻智さん、坂田テレサさん「結婚の自由をすべての人に」裁判の原告の(中央右から)田中昭全さん、川田有希さん、坂田麻智さん、坂田テレサさん

判決が言い渡された6月20日の午後、原告の4人と弁護団が大阪地裁を出ると、支援者が拍手を送り「ありがとう」「お疲れ様」「まだまだこれから」といった声をかけました。

判決を受け、涙を流す原告判決を受け、涙を流す原告

夕方には大阪市内で会見が行われ、麻智さんは「なかなか言葉にならない。本当に悔しい。怒りに震えています。この訴訟では、同性愛者に生まれたことが原因で、国に差別されないということを求めています。わたしたちの人権を一切認めなかった判決に、この国の司法がきちんと機能しているのか疑ってしまいます」と、静かに語りました。

判決では、結婚できないことによって同性愛者と異性愛者が享受できる法的効果に「差異」があると認めたものの、「遺言など他の制度などを用いることで、一定の範囲では婚姻と同等の効果を受けることができる」としています。

麻智さんは「判決の中で、結婚に類似する制度というものがありますが、これまでの3年半で、どんな制度を使っても、婚姻届という紙切れ1枚で得られる権利に、何一つ相当しないことを伝えてきました」と指摘。

判決理由は「同性愛者と異性愛者の間に差異はあるものの、同性間の関係にどのような保護を与えるかはまだ議論の過程にある」などとしています。

麻智さんは「議論が尽くされていないからこそ、司法に判断をしてほしかった。
大阪地裁が判断から逃げたように、私たちからは見えています」と話します。

◆次世代の子供のためにも

会見で思いを語る坂田テレサさん(中央)会見で思いを語る坂田テレサさん(中央)

麻智さんのパートナーであるテレサさんも「納得がいきません…」と声を絞り出しました。

大阪地裁は婚姻制度の意味について、「結婚は、男女が子を産み育てるもの」といった判決を示しました。これは国の主張に基づくものとみられ、男女でも子どもを授からない夫婦もいることから、この意見は批判を集めていました。

またテレサさんは、ゲイの友人から精子提供を受け8月に出産する予定で、子どもを育てる当事者も増えています。ですがテレサさんがアメリカ国籍であること、日本で同性婚が認められていないことにより、生まれてくる子どもには、共同親権もダブル国籍もとることができないといいます。

テレサさんは「私たちの子どもは、産まれた瞬間から、(周囲と)同じ扱いを受けられません。早く本当の平等が実現してほしいです」と涙を浮かべ、「自分たちの子どもだけでなく、次世代の人たちのためにも、頑張っていこうと思います」と、強いまなざしを見せました。

◆同じように税金を納めているのに、なぜ…

会見で思いを語る川田有希さん(左)会見で思いを語る川田有希さん(左)

川田さんは「私たちは、『パートナーシップ制度』では平等ではないという意見なのですが、マイノリティと言われる僕たちの話を何も聞いていないなって思いました。尊厳を軽視した判決だと思います」と憤ります。

近年、各自治体が同性カップルの関係を認める「パートナーシップ制度」が広がっているものの、法的拘束力はなく、期待できることですら公営住宅の入居などごくわずかです。当事者はパートナーの法定相続人になれず将来の不安を抱えるなど、法的効力は婚姻に遠く及びません。

川田さんは「僕のパートナーが『二級市民』(扱いをされている)という言葉を使っていますが、まさにそうで、異性カップルと同じように税金も納めているのに、なぜこんな扱いを受けないといけないのでしょうか」と指摘。

「普通に暮らしたいということを今後も伝えていこうと思っています」と今後について語りました。

◆声を上げ、一緒にたたかってほしい

判決後、痛切な思いを語る原告の田中昭全さん(右)と川田有希さん判決後、痛切な思いを語る原告の田中昭全さん(右)と川田有希さん

田中さんは、「自分達はたまたま、親が協力してくれましたが、先月、かつての自分のように、親に受け入れられないことで悩む当事者に会いました。制度がないからこそ、さまざまな人にいろんなことを言われ、自分の不本意な人生を送らされ、困っている人もいます」と指摘。

またこの3年半について「SNSを通し、多くの性的マイノリティが、結婚できないという問題を自分ごととして捉えていると感じてきました。また、いろんな人が声を上げるようになったとも思います」と感じているといいます。

田中さんは、こう呼びかけます。

「声を上げられる人は、自分たちの当然の権利として声を上げてほしい」

「僕たちもとにかく、できうる限りのことをやっていこうと思います。ぜひ、高裁を一緒にたたかってください」

<取材=佐藤雄(@takeruc10)、坪池順(@juntsuboike)/ハフポスト日本版>

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