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9・11から20年 〜 イラク戦争直前に訪れたバグダッド




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しみじみと「反米」を感じる出来事もあった。それはイラクでも有名なアルラシィドホテルに行った時のこと。ホテルの入り口の床には父ブッシュの顔が描かれていたのだ。いわば「踏み絵」である。イラク人たちは嬉々として父ブッシュの顔を踏んでいた。そんなイラク滞在中、どれほど鈴木邦男氏から、「アルラシィドホテルには、ブッシュの踏み絵があるらしいど」というオヤジギャグを聞かされたことだろう。帰国してからもしばらくは嬉しそうに繰り返していた。

滞在中、イラクの街頭を歩くと、毎日のように結婚式に出くわした。これから戦争が始まるかもしれないというのに、街には不思議とのどかで、特に結婚式なんかをやっていると幸福感に満ちていた。しかし、帰国してから、イラクでは戦争を前にして「駆け込み結婚ラッシュ」だったと知った。開戦前の、あの不思議に平和な空気を、私は一生忘れないと思う。

そうして私たちが帰国した翌月、イラクは戦場になった。

イラクに爆弾が落とされるのをテレビで見ながら、イラクで出会った人たちを思い出していた。外国人と見ると見境なく口説いてきた若者。毎晩のようにホテルの部屋に湾岸戦争時の死体写真を売りに来たおっさん。いつも「ノーピクチャー」とうるさかったけど優しくもあり、ずっと同行していた役人。そして街にいるストリートチルドレンたち。小児病院の子どもたち。

そんなイラク戦争で、一度だけ会ったウダイ・フセイン氏は米軍との銃撃戦の末に殺され、その無残な死体写真がネットで世界中に公開された。

5月には戦闘の終結が宣言されたが、その後も泥沼は続き、米軍によるアブグレイブ刑務所でのイラク人への虐待が大きな注目を集めもした。

04年には、現地の武装勢力が高遠菜穂子さんら3人を人質に、自衛隊をイラクから引き上げるよう要求。3人は無事に解放されたが、同年10月、今度は24歳の香田証生さんが人質となり、殺害された。殺したのはISの前身であるイラクアルカイダ。

イラク戦争終結から時間が経ってもイラクは安定にほど遠く、その泥沼はISを産む土壌にもなった。そうして14年、ISはイラクのモスルを制圧、建国を宣言。翌15年、湯川遥菜さんと後藤健二さんがISに殺害されたことは多くの人が覚えているだろう。

9・11テロをきっかけに世界が大きく変わる中、戦場に駆り出された米兵も傷ついてきた。対テロ戦争を経て自殺した米兵は3万人を超えると推計され、戦死の4倍以上(2021年8月24日朝日新聞)。一方、イラクに派兵された約5500人の陸上自衛官のうち、21人が在職中に自殺している(海外派遣自衛官と家族の健康を考える会・編『自衛官と家族の心をまもる 海外派遣によるトラウマ』)。「対テロ戦争」は、決して対岸の火事ではないのだ。

世界を変えた9・11から、20年。

この国の多くの人にとって、イラク戦争はすっかり過去のことだろう。が、当時の小泉政権は米英のイラクへの武力行使を真っ先に支持している。この検証はなされないままでいいのだろうか。

例えばイギリスは16年、イラク戦争についての報告書を公表している。数年間にわたって独立調査委員会(チルコット委員会)が検証を続け、膨大なページ数の報告書にまとめたのだ。そこでは、不正確な情報をもとに戦争に突き進んだ当時のトニー・ブレア首相が厳しく批判されている。一方、イラクに大量破壊兵器がなかったにもかかわらず、当時、武力行使を支持した当時の小泉政権の責任は問われてはいないし、イラク戦争を検証するような委員会も設置されていない。

そんなイラクで強烈に覚えているのは、バグダッドでデモをした時のこと。

自宅からシーツを持参し、ドン・キホーテで買ったポスターカラーで、滞在していたパレスチナホテルの私の部屋でみんなで「NO NUKES」という横断幕を作った。そう描いたのは、「ここに劣化ウラン弾を落とすな」という意味だった。

まさかそれから8年後、原発事故後の日本で同じ横断幕を持ってデモをすることになるなんて、あの頃、誰が想像しただろう。

原発事故からも、今年で10年。

あの事故についても多くのことが曖昧なままで、そして今、コロナ禍で自宅放置された中から多くの死者が出ていることも、今年8月の変死者のうち、実に250人がコロナに感染していたこともおそらくきちんと検証されることもなく、忘れられてしまうだろう。

だからこそ、こうしていちいち記録し、焼き付けておきたい。

 (2021年9月15日の雨宮処凛がゆく!掲載記事『第569回:9・11から20年〜イラク戦争直前に訪れたバグダッド。の巻(雨宮処凛)』より転載)

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Source: ハフィントンポスト
9・11から20年 〜 イラク戦争直前に訪れたバグダッド

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