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映画「トゥルーノース」。壮絶な北朝鮮の強制収容所でも失わない"人間が生きる意味"

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清水ハン栄治監督

映画「トゥルーノース」(清水ハン栄治監督)は、北朝鮮の強制収容所を舞台に、極限の状態に置かれた人間の生き方を知るための物語でもある。閉塞する環境の中でも、人は命を輝かせることができる、と普遍的なメッセージを投げかける映画だ。

1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民した家族の物語だ。平壌で幸せに暮らしていたパク一家は、父の失踪後、残された家族全員が突然、政治犯強制収容所に送られてしまう。過酷な生存競争の中、主人公ヨハンは次第に純粋で優しい心を失い、他者を欺く一方、母と妹は人間性を失わず倫理的に生きようとする。

映画のワンシーン。収容所に生きる人の中で交流が始まる

作品を監督したのは、清水ハン栄治監督。1970年の横浜生まれの在日コリアン4世だ。これまで、ほとんど韓国や北朝鮮を意識したことはなかった。「そっとしておいて欲しい」くらいの感覚だったという。

しかし、ある時、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の土井香苗さんから北朝鮮の収容所の話を聞く機会があった。さらに脱北者の本を読み、寝られなかった。「北の寒いところへ連れて行っちゃうよ」と幼い頃言われた微かな記憶も湧いてきた。「バラバラだったパズルが、自分の中でばばっと集まったかんじで、『僕がやらないと誰がやるの』」と思い至った。

韓国の情勢を雑誌を通じて知る主人公ら

映画「トゥルーノース」というタイトルには2つの意味を込めたという。「ひとつは英語の慣用句で『絶対的な羅針盤』という意味。人として進むべき方向や生きる真の目的を、究極の環境でも見失わない主人公たちの葛藤を描きたかった」ふたつめは、ニュースでは報道されない北朝鮮の現実だ。「今日でも12万人以上が収容されている政治犯強制収容所での人権蹂躙と、抑圧の中でも健気に生きる北朝鮮の人々のヒューマニティーを表現したかった」という。

炭鉱の中で働く主人公。歌を歌おうと提案する

主な舞台は北朝鮮の強制収容所。草やカエル…やっとかき集めた食べものをかゆのようにして食べる。「優しいと生きていけない」と主人公は変わっていく。自分と家族が生きるために、人を欺き、心を殺していく。しかし、食糧を病人らと分かち合う母はこう言葉をかける。「誰が正しいとか、間違っているかではない。「誰になりたいか」を自分に問いなさい」。政治的な活動のため突然姿を消した父の存在にもつながるメッセージだった。

映画のワンシーン。収容所の中の痩せこけた子供たち

銃殺、飢餓、狂気…数々の悲惨なシーンをアニメーションが伝える。「しかし笑いもあるんですよ。エンタメとして人々に伝わらないと意味がないから」と監督は笑う。

重きをおいたのは、より多くの人に「伝える」ということだ。

アニメーションにした理由を「目を背けてしまうほど過酷なことが行われている現場を伝えるため」だという。実写ではなくアニメーションにしたのは、「このようなことが地球上で本当に起こっているということを、広く知ってもらいたい。知っている人の裾野を広げることが大事です。ソフトメディアのアニメは世界中で親しまれているメディアで、訴求力がある」と話す。 

アニメのキャラクターは、曲面が滑らかではないカクカクした輪郭を持つ。こうしたポリゴンの低い画像にしたのは訳がある。

「収容所では、大人でも体重30キロくらいでガリガリなのが実態。そのまま表現すると“怖い”という感情が先に立ち、観客はキャラクターに気持ちが乗ってこない。しかし、丸くてポワポワしているアニメのキャラクターにしても実態は伝えられない。事実を伝えるために、あえて、実態とアニメの境界線を計算した」という。

 極限の状態に置かれた中で「人の生き方とは何か」を問うーー。このテーマは、ドイツの強制収容所を経験したユダヤ人のヴィクトール・フランクルの著書「夜と霧」とも重なる。

無視できない状況が、日本海の向こうで行われている。
「この映画を見て時代の『目撃者』になってもらいたい」と清水監督は語る。

「ホロコーストの場合、”大勢のユダヤ人が連行された”、”人か何かを焼く煙が出ていた”などと人々は薄々、ホロコーストの存在を知っていた。だが、当時、人々はなぜアクションをとらなかったのか。そう孫世代に問われる。北朝鮮の場合も、同じことだと思います。見て見ぬ振りではなく、我々は、まず事実を知ることから始めなければならない」と話している。 
【ハフポスト日本版・井上未雪/写真・坪池順】

『トゥルーノース』
配給:東映ビデオ
(C)2020 sumimasen 
6月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開  
 
監督・脚本・プロデューサー:清水ハン栄治(「happy – しあわせを探すあなたへ」プロデューサー) 
制作総指揮: ハン・ソンゴン 制作: アンドレイ・プラタマ 音楽:マシュー・ワイルダー  
声の出演:ジョエル・サットン  マイケル・ササキ  ブランディン・ステニス エミリー・ヘレス
【94分 カラー 英語 日本語字幕 2020年日本/インドネシア】
公式サイト www.true-north.jp 

(C)2020 sumimasen

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Source: ハフィントンポスト
映画「トゥルーノース」。壮絶な北朝鮮の強制収容所でも失わない"人間が生きる意味"

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