※2024年にハフポスト日本版で反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:2024年5月29日)
アメリカ・サウスダコタ州で、親戚の集まりで熊肉を食べた人らが、脳などの臓器に侵入する寄生虫に集団感染した。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が5月23日に発表した。
CDCによると、集団感染は2022年7月に発生し、野生の熊の肉を食べた6人が旋毛虫症(トリヒナ症)と診断された。
熊肉は、集まりに参加した一人がカナダで狩猟をして手に入れたもので、野菜と一緒に焼いて提供された。しかし肉そのものの色が黒かったため焼き加減がわかりにくく、完全に火が通っていない状態で食べたという。
十分に調理されていないことに気づいた後に再び加熱したものの、この肉を食べたミネソタ州の29歳の人物が発熱や激しい筋肉の痛み、目の周りの腫れ、血液の異常で入院した。
この人物は、17日間で4回治療を受けて、2回入院。2度目の入院で熊肉を食べたことがわかり、寄生虫の治療を受けて、抗体検査で感染が確認されたという。
症状を訴えた6人のうち、3人が腹痛、筋肉痛、発熱、下痢、目の周りの腫れで入院。肉で二次汚染されたと思われる野菜のみを食べた2名にも感染の兆候が見られたものの、抗体検査では感染を確認できなかったという。
集まりに熊肉を持ちこんだ人物は、狩猟ガイドに「冷凍すれば寄生虫が死滅する」と言われて、45日間冷凍した後に調理したという。
しかし、旋毛虫は低温に強い寄生虫だ。
CDCは、野生動物の肉を食べる場合は中心部温度74℃以上で調理することを推奨している。
「旋毛虫を死滅させる確実な方法は、十分な加熱調理だけです。感染した肉で他の食品が二次汚染する可能性もあります」
「今回の集団感染で確認されたように、肉の色は適切に調理されているかどうかの判断基準にはなりません」
【画像📷】集団感染の感染源と思われるクマの肉から発見された寄生虫の幼虫
旋毛虫症は、かつては豚肉から人間に感染するケースが多かった。しかし豚の生産方法が変化したことで、豚肉からの感染は減少している。CDCによると、2016〜2022年までにアメリカで発生した旋毛虫症は7件で、そのほとんどの感染源が熊肉だった。
米国立医学図書館に掲載された旋毛虫症の過去の感染例によると、十分に加熱していない肉を通して人間の体に侵入した旋毛虫の幼虫は、小腸から血流、骨格筋、心筋、脳に移動して、発熱や臓器の炎症などの全身症状を引き起こす。
感染の重症度は、摂取した幼虫の数に関連しているという。
「脳の寄生虫」に関しては、ニューヨークタイムズが2024年5月に、アメリカ大統領選挙に立候補しているロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、「脳の寄生虫が原因で集中力や記憶力の低下に悩まされた」と過去に主張していたと報じた。
ケネディ氏によると、脳のスキャンで黒い点が見つかり、寄生虫の死骸であることが判明した。
ケネディ氏は寄生虫の種類や感染経路はわかっていないものの「南アジアを旅行した際に感染した可能性がある」とニューヨークタイムズに述べている。
感染症専門家や神経外科医は(直接診察したわけではない)、ケネディ氏の説明から、寄生したのは豚を中間宿主とするカギサナダの幼虫だった可能性があるとニューヨークタイムズの取材で答えている。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
熊肉を食べた人たちが「脳の寄生虫」に集団感染。米保健機関が「加熱して」と注意喚起【2024年回顧】