しかしこのいちご、実はその構造は案外知られていないようです。千葉県香取郡神崎町でいちご栽培を手がける星野律子さんに伺いました。
いちごの“つぶつぶ”の正体
「いちごの花には『雌しべ』が100以上あります。この雌しべがそれぞれ受粉すると、雌しべが生えている土台である『花托(かたく)』という部分が大きくふくらんで、後に赤く色づきます。これがいちごの可食部分です。
つまり、いちごの『果実』と思われている部分は、このふくらんだ花托で、花托の周りにある小さなつぶつぶが痩果(そうか)と呼ばれる果実なのです。花托の表面に果実がびっしりついて、この一つ一つに種になる胚珠(はいしゅ)が入っています」(星野さん)
確かに、赤い部分が果実で、つぶつぶが種だとすると、種が果実の外に飛び出して張り付いているということになり、少し不自然な気がしますね。
つぶつぶの色で熟度が分かる!?
一般的にいちごは、ヘタの付け根まで赤くなると完熟に近づくとされていますが、完全に完熟した状態ではないそうです。
「その状態でも完熟と言えるほど甘みが多くなっていますが、いちごが完熟すると一部の種類を除いてつぶつぶ(痩果)も赤くなります。
つまり、痩果が白っぽい色から赤く色づいてきているものは完熟に近いということになります。店頭でいちごを選ぶときやいちご狩りなどに出かけた際には、つぶつぶの赤みが濃いものを選んでみるといいでしょう」(星野さん)
つぶつぶから芽が出ることも!?
いちごのつぶつぶの中に種が入っているため、当然そこから芽が出てくることもあります。
「見慣れないので、不思議な状態に感じると思いますが、ある一定の環境下では写真のように芽が出ることもあります。このような状態にするのは難しいですが、つぶつぶを蒔くと比較的簡単に芽を出させることができます。
まず、可食部分の花托をできるだけ取らないように、つぶつぶだけをピンセットでつまみ取り、十分濡らしたキッチンペーパーなどに1粒ずつのせます。つぶつぶは乾燥させないように水を補いながら発芽を待ちます。
いちごの種は1日の平均気温が20~25℃ぐらいで発芽するので、寒冷地を除き5月上旬から中旬ぐらいが蒔き時です。気温が低いと発芽までの日数が長くなります。
発芽したら植え替えなどを行い、日当たりの良い場所に置いて双葉から本葉が出て株になるまで世話をしていくと、うまくいけば種蒔きから1年ほどで収穫することもできます」(星野さん)
身近なのに意外とその構造を知らないいちご。次にいちごを食べる際にはつぶつぶにも少し注目してみてはいかがでしょうか。
【関連記事】
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
知ってた?いちごの“つぶつぶ”は種じゃない。意外な正体とは