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義理チョコの定番「ブラックサンダー」の裏面マークに気づいた?企業の熱い思いが詰まっていた【バレンタインデー】

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児童労働問題に向き合う有楽製菓の河合辰信社長(右)と、「スマイルカカオプロジェクト」のロゴ(左上)、定番の「ブラックサンダー」児童労働問題に向き合う有楽製菓の河合辰信社長(右)と、「スマイルカカオプロジェクト」のロゴ(左上)、定番の「ブラックサンダー」

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「ブラックサンダー」は、35円ほどで買える小さなチョコバーだ。買いやすい値段で、2月14日のバレンタインデーでは「義理チョコ」の定番と位置づけられているから、過去に誰かにあげた人も、誰かからもらったことがある人も多いのではないか。

このお菓子を手にしたら、ぜひパッケージの裏面を見てみてほしい。子どもがにっこり微笑んでいる黄色いイラストが目に入るだろう。

メーカーの有楽製菓が取り組む「スマイルカカオプロジェクト」のロゴマークである。

1個35円ほどで買える「ブラックサンダー」。義理チョコの定番といわれる1個35円ほどで買える「ブラックサンダー」。義理チョコの定番といわれる
「スマイルカカオプロジェクト」のロゴマーク「スマイルカカオプロジェクト」のロゴマーク

世界中どこでも「同じ幸せ」を

チョコレートの原料であるカカオの実をはさんで、左右に二つの笑顔が描かれている。世界中のどこにいる子どもたちも「同じ幸せを感じられる未来を」という思いを込めてデザインしたという。

この地球上には、学びの機会を保障されなければならない子どもが、長時間の労働を余儀なくされ、学校にも通えないケースが多く存在する。

そのような、子どもの教育や健康的な成長を妨げる、法律で禁止されている労働のことを「児童労働」と呼ぶ。世界では1億6000万人、実に子どもの10人に1人が児童労働をしているといわれている。

中でも深刻なのはアフリカで、カカオの有名な産地であるガーナでも70万人以上が児童労働を強いられている実態がある。有楽製菓は、この地で児童労働をなくすための取り組みを進めている。それが「スマイルカカオプロジェクト」なのである。

カカオ農園で働く子どもカカオ農園で働く子ども

同社はカカオ原料を仕入れるさいに、一般的な価格にプレミアムを上乗せして購入している。この上乗せ分は、農園で児童労働が発生していないかを監視するとともに、生産者への還元や生産性向上支援、自然環境への配慮に活用される。結果的に児童労働が不要となる環境づくりをめざしているという。

プロジェクトは2019年に始まった。創業家2代目の河合伴治会長が、児童労働問題を知ったのがきっかけだった。「なんとかしなきゃ」と一念発起し、社内に児童労働問題研究会、略して「じどもん会」を立ち上げた。

「じどもん会」には3代目の河合辰信社長も加わり、会社を挙げて児童労働問題に取り組む態勢ができあがった。

会社規模で新プロジェクトに着手する時は、まずは実験的に、少しずつ始めるのが常道だ。有楽製菓はちがった。「大きくやらなきゃ意味がない」という会長の鶴の一声で、主力製品である「ブラックサンダー」から、原料を「スマイルカカオ」に切り替えることにしたのだ。

日本国内の原料仕入れ先は、どこも二の足を踏んだ。それならばと海外メーカーから調達することにして、とにもかくにもスタート。やがて国内の取引先も、児童労働問題に配慮した原料を扱い、同社に納入できるように対応してくれるようになった。

2022年に「100%」を宣言

取り組みを初めてから3年。2022年には「ブラックサンダー」のスマイルカカオ率100%達成を高らかに宣言した。23年時点では、同社のすべてのチョコレート商品を合わせたスマイルカカオ率が90%に達しているという。

国際協力NGOとしてプロジェクトに協力してきたACE協会の白木朋子副代表は、同社の取り組みを高く評価する。「日本国内でいち早く児童労働問題に取り組んだ。社内で独自に進めるだけでなく、取引先も巻き込んで業界全体を動かしました」と解説する。

国際協力機構(JICA)が事務局を務める「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」は2月7日、参加団体の取り組み状況をまとめた22-23年のリポートを発表した。そこでも有楽製菓のプロジェクトは「グッドプラクティス」として取り上げられた。

「ブラックサンダー」といえば、23年春に値上げが話題になった。それまで30円だったのが35円になったのだ(小売店によって多少値段はことなる)。だが、この5円の値上げはプロジェクトとは直接関係ないと同社は説明する。カカオ原料のプレミアムのコストは、輸送費や包装代を少しずつ切りつめてまかなった。23年の値上げはそれとは別に、原料高騰にともなうものだったという。

5円値上げして35円。「ブラックサンダー」は子どもでもおこづかいで買える庶民性が人気だ。宣伝戦略もかたひじ張らないものが多い。

チョコを「あげる」楽しい企画

24年のバレンタインデーに向けて東京・新宿で開催したイベントでは、チョコを「あげよう」というかけ声のもとで、「ブラックサンダー」を天ぷらにして油で「揚げて」来場者にふるまい、長蛇の列ができていた。

「ブラックサンダー」の天ぷら。チョコを「あげる」にちなんで揚げてみた「ブラックサンダー」の天ぷら。チョコを「あげる」にちなんで揚げてみた
バレンタインデーのキャンペーンで陳列された系列商品「至福のバター」もスマイルカカオ率100%バレンタインデーのキャンペーンで陳列された系列商品「至福のバター」もスマイルカカオ率100%

そんなふうにファンに楽しんでもらいながら、商品には世界に向けた真剣な「愛」を込めている。パッケージ裏面の「スマイルカカオ」のロゴも控えめで、うっかりすると見逃してしまう大きさだ。

「ブラックサンダー」系の限定商品の中には、スマイルカカオに切り替えているにもかかわらず、パッケージの更新が間に合っていない商品もあるという。

それでも「スマイルカカオ」は少しずつ世の中に知られてきた。プロジェクトを担当する同社経営品質部の牧宏郎係長は「中高生からも活動に関する質問が寄せられるようになった。『ブラックサンダー』をそういう側面からとらえてもらって、すごくうれしいです」と話す。

児童労働問題は、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)にも掲げられている。2025年までに「あらゆる形態の児童労働を撲滅する」と明記されている。

有楽製菓も、25年までに同社製品のスマイルカカオ率を100%にすることを目標に掲げている。

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