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不登校やいじめが過去最多となった2023年は、子どもにとってどのような1年だったのか。国の動き、フリースクールをめぐる議論など、2023年の出来事をふりかえる。
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不登校過去最多 29万人超え
文部科学省は10月4日、「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を公表した。
2022年度の小中学校における不登校児童生徒数は29万9048人と、前年度から5万4108人(22.1%)増加し、過去最多を更新。不登校は10年連続で増加している。また、いじめの認知件数は約68万件と、前年度から6万件以上増え、過去最多となった。
不登校に関連する事柄として、文科省は8月、不登校経験のある児童生徒が在籍し、学習指導要領に縛られない「不登校特例校」について、「学びの多様化学校」に名称変更すると発表した。
同校は23年末現在、全国で24校設置されており、文科省は今後300校まで増やす方針を示している。今年4月には「東京みらい中学校」(東京都足立区)が開校を予定しているほか、来春には福岡県福岡市や神奈川県鎌倉市で開校に向けた動きが進んでいる。
学びの多様化を実践できる学校をつくることができるのなら、なぜすべての学校でそれを実践できないのだろうか。
文科省が7月に公表した「学校教員統計調査」によると、精神疾患を理由に離職した教員が1052人と過去最多となったことがわかった。同様の理由による休職も5897人と過去最多となっている。文科省はかねてより、「魅力ある学校づくり」に取り組んでいるが、子どもにとっても、教員にとっても、学校が安全・安心な場になっているとは言い難い現状を変える必要があるのではないか。
子どもの自殺は…
厚生労働省は3月、2022年の自殺者数を公表した。小中高生の自殺は514人。統計開始以降、過去最多となった。これを受け、こども家庭庁は6月、「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」を設置し、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を取りまとめた。
また、文科省でも7月、児童生徒1人に1台支給されている端末を活用し、子どものSOSの早期把握に努めることなどを盛り込んだ通知を出した。子どもの自殺は長期休み明けに注目されがちであるが、年間の自殺者数が500人を超える今、その対策は待ったなしである。
「不登校は親の責任」発言
10月、滋賀県東近江市の小椋正清市長の「フリースクールは国家の根幹を崩しかねない」、「不登校の大半は親の責任」という発言が大きな物議を醸した。小椋市長は市民側との折衝をふまえ、謝意を表明したものの、発言そのものは撤回しなかった。
不登校家庭への財政支援の動き
他方、フリースクール利用者に対し、財政支援に踏みこむ自治体の動きもあった。東京都は1月、フリースクールを利用する不登校の小中学生を対象に、1人あたり年間最大24万円を支給する方針を固めた。神奈川県鎌倉市は8月、フリースクール利用時における補助金として月1万円を上限に支給することを決めた。
行政による財政支援の取り組みが広がりつつあるなか、不登校の子どもを持つ家庭において、財政支援が喫緊の課題であることが民間の調査で浮き彫りになった。
NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワークが5月、不登校の子どもを持つ640人の親に行なった調査結果を公表した。それによると、不登校を機に、3割の家庭で世帯収入が減り、4割の家庭で支出が増えたという。
増えた支出の内訳は「食費(給食費代わり)」が68.1%、「フリースクールなどの会費」が39.8%などであり、「支出に変化なし」と答えた割合は8.8%にとどまった。親の約7割が経済的支援を求めていることも明らかとなった。
児童生徒数が過去最少となるなか、不登校・いじめ・自殺など、子どもをめぐる問題が過去最多を更新した2023年。学校のありようそのものを見直す必要がある。
(編集局・小熊広宣)
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「不登校、いじめ、自殺が過去最多」2023年子どもをめぐる問題を振り返る