ChatGPTなどを提供する「OpenAI」取締役会が、創業者のサム・アルトマンCEOを解任したことに対し、従業員から強い反発が起きている。
ニューヨークタイムズによると、同社従業員770人のうち700人以上が、11月20日にアルトマン氏の復帰を求める文書を取締役会に送った。
従業員はアルトマン氏の解任について「我々が成し遂げてきたことすべてを危険にさらし、会社とその使命に損害を与えた」と主張。
取締役会の退陣も求め、要求が受け入れられなければ全員が同社を去ると通告している。
Now 715. I should note that this includes colleagues with tenuous visa situations, a colleague who was literally in the hospital with the birth of their first child, signatories in the air on their way to Thanksgiving break, and many others. The support here was shocking https://t.co/gmR0PVg7Wt
— Evan Morikawa (@E0M) November 20, 2023
アルトマン氏の解任をめぐる動き
アルトマン氏は急成長を遂げているOpenAIの創業者の一人で同社の顔となってきた。
しかし取締役会は11月17日、突然同氏の退社を発表。解任理由について「彼は取締役会とのコミュニケーションで一貫性を欠き、責任を果たすことを妨げた。OpenAIを率いていく彼の能力に、もはや信頼がおけない」とブログで説明した。
その後、アルトマン氏も「OpenAIでの時間は素晴らしいものだった」とXに投稿して退社を認めた他、OpenAIのゲスト入館証のようなカードを首にかける写真をアップして「これを着けるのは最初で最後」とコメントした。
first and last time i ever wear one of these pic.twitter.com/u3iKwyWj0a
— Sam Altman (@sama) November 19, 2023
取締役会はアルトマン氏の退任と同時に、共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏が取締役会の会長職を解かれることも発表した。
これを受けてブロックマン氏は17日、「私たちは不可能に見えた多くを成し遂げてきたが、今日の出来事が理由で辞めることにした」とSNSで辞任を発表した。
アルトマン氏とブロックマン氏の退社に波紋が広がる中、サプライズ発表されたのがふたりのMicrosoft入社だ。
Microsoftは、OpenAIに100億ドル以上を投資して49%の株を所有する筆頭株主。同社のサティア・ナデラCEOは20日、アルトマン氏とブロック氏が同社の先端AI研究プロジェクトチームに加わるとSNSで伝えた。
しかしOpenAIを支えてきたふたりの創業者が去ることになったことに多くの従業員が納得しておらず、同氏の復帰と取締役会の退陣が認められなければ、全員がMicrosoftに移籍すると通告している。
注目すべきはこの手紙に、アルトマン氏解任後に暫定CEOに就任したミラ・ムラティ氏や、共同創業者でチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏も署名している点だ。
サツキバー氏は取締役会のメンバーであり、アルトマン氏解任に関わった一人とされる。
しかし同氏は20日、「取締役会の行動に加わったことを深く後悔しています。OpenAIに損害を与えるつもりは全くありませんでした。私たちがともに築いてきたすべてを心から愛しており、会社を再び結束させるためにできる限りのことをします」とXに投稿している。
I deeply regret my participation in the board's actions. I never intended to harm OpenAI. I love everything we've built together and I will do everything I can to reunite the company.
— Ilya Sutskever (@ilyasut) November 20, 2023
アルトマン氏はどんな人物なのか?
対話型AI「ChatGPT」で、今や大きな注目を集めるテック企業の一つになったOpenAI。
共同創業者の一人として2015年に同社を立ち上げ、CEOを務めてきたアルトマン氏はどんな人物なのか。
アルトマン氏は1985年、アメリカ・ミズーリ州生まれの38歳。ニューヨーカーによると、8歳ですでにプログラミングを覚え、Macを分解するなど、幼い頃からテクノロジーに対する知識や興味を見せていた。
アルトマン氏は同性愛者であることを公表しており、Macは世界と繋がる手段だったと同メディアに話している。
「2000年代に中西部でゲイとして育つのは、最高のことだとは言えませんでした」「でもAOLのチャットルームを見つけた時に人生が変わったんです」
16歳の時に両親にカミングアウトし、さらに通っていたプレップスクール(大学進学を目的とした私立校)で、キリスト教団体がセクシュアリティをテーマにした集会をボイコットした後には、学校全体に自分がゲイであることを公表。学校は抑圧的な場所であるべきか、それとも異なる考えを受け入れる場所なのかと問いかけたという。
アルトマン氏の大学進学カウンセラーだった同校のマデリン・グレイ氏は、「サムは学校を変えた」とニューヨーカーに語っている。
ビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏など、複数の著名なテック起業家が大学を中退したことで知られるが、アルトマン氏も同じ道を辿っている。
スタンフォード大学に進学したアルトマン氏は、コンピュータサイエンスを2年間学んだ後に、クラスメートらと位置情報共有アプリ「Loopt」を立ち上げるために中退。
Looptは起業時に約3000万ドルを調達し、AirbnbやTwitchなどの立ち上げに貢献したスタートアップ・アクセラレーター名門「Yコンビネーター」からの支援も獲得した。
最終的にLooptは2012年に4300万ドル(約3億5,000万ポンド)で売却されたが、アルトマン氏はこの時に、共同創業者で9年間恋人だったニック・シーヴォ氏と別れた。その時のことを「彼と結婚するつもりでした。とても愛していた」とニューヨーカーに語っている。
その後、アルトマン氏は28歳だった2014年にYコンビネーターの代表に就任。2015年には、フォーブスの「世界を変える30歳未満のベンチャーキャピタリスト30人」に選ばれた。
そして同年にブロックマン氏やサツキバー氏、さらにイーロン・マスク氏らと共に、AI研究機関であるOpenAIを立ち上げた(マスク氏は2018年に同社を去っている)。
OpenAIは元々、「すべての人の利益となるAIを作る」というミッションを掲げた非営利研究機関だったが、2019年には活動資金を得るために「利益上限付き(capped-profit)」の営利部門を設立し、Microsoftと提携した。
同社が2022年に公開した対話型AI「ChatGPT」は2カ月で100万人のユーザーを集め、テック業界に大きな影響を与える強力なプラットフォームに成長した。
アルトマン氏は、AIが私たちの社会の形を変える力があるとする一方で、虚偽情報に使われる恐れがあるなどの問題も指摘してきた。
アルトマン氏の解任後、暫定CEOに元Twitchのエメット・シア氏が就任することが明らかになった。
シア氏は今回の解任劇のプロセスを調査するとしているが、従業員が求めているのはアルトマン氏の復帰だ。
そのアルトマン氏は20日に、最優先事項はOpenAIが繁栄し続けることだとXに投稿している。
satya and my top priority remains to ensure openai continues to thrive
we are committed to fully providing continuity of operations to our partners and customers
the openai/microsoft partnership makes this very doable
— Sam Altman (@sama) November 20, 2023
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
700人以上の従業員が復帰を求めるChatGPTのサム・アルトマン元CEO。どんな人物なのか