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シャチの攻撃をヘヴィメタで食い止めよう――船乗りたちが考え出した対策が水の泡となった。
ヨーロッパでは、ポルトガルやスペインのあるイベリア半島を中心に、シャチがヨットを攻撃する事故が2020年以降相次いで発生している。
これまでに人間が死亡した例はないものの、この近辺を航行する船乗りたちにとって攻撃は恐怖であり、様々な方法でシャチを遠ざけようとしている。
その一つとして、ドイツ人の船乗りフロリアン・ルッチュ氏が試みたのがヘヴィメタルを使った撃退策だ。
ニューヨークタイムズによると、ルッチュ氏は11月にカタマランヨットでジブラルタル海峡を横断する際、ヘヴィメタルのプレイリストを作り水中スピーカーで流した。
大音量でシャチを遠ざけることが目的だったが、10曲からなるヘヴィメタルのプレイリスト「シャチのためのメタル」が功を奏することはなかった。
シャチの群れは素早く行動してヨットの舵を襲い、操舵を不可能にしたという。最終的に乗組員は救援を要請し、スペイン当局がヨットを岸にけん引した。
ヘヴィメタは逆効果との指摘も
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学海洋哺乳類研究ユニットのアンドリュー・トライツ氏は、大音量の音楽は逆効果になる可能性があるとビジネスインサイダーに語っている。
「水中に大音量を流すことで、最初はヨット特有の音を隠せるかもしれません。しかしシャチたちは音を理解するようになり、船をより簡単に見つけるようになるでしょう」
トライツ氏は、水中の大音量はシャチの聴力を損傷させるなど、海の生き物に害を及ぼす海中騒音を引き起こす可能性があるとも指摘している。
「水中で大音量で流すことの最大の問題は、それがどんな種類の音楽であろうとさらなる海中騒音を生み出し、海洋生物に有害な影響を及ぼす可能性があることです」
アメリカ海洋大気庁によると、海中騒音は船舶の航行やエネルギー資源探査など人間の活動によって生じる音で、海洋生物や生態系に悪影響を与えている。
一方、船乗りたちにとって相次ぐシャチの攻撃は悩みの種だ。ルッチュ氏は「害にならないような解決法を早く見つけなければ、さらに思い切った手段に訴える人が出てくるのではないかと心配しています」とニューヨークタイムズに語っている。
シャチの攻撃は、2020年からこれまで数十件発生しており、少なくとも3隻のヨットが沈没した。
シャチがヨットを襲う理由について、研究者たちの見解はわかれている。
一部の生物学者は、ヨットに傷つけられたメスのシャチ「ホワイト・グラディス」が自己防衛から攻撃するようになり、他のシャチがその行動を真似たと考えている。
一方、シャチは単にヨットで遊ぼうとしているだけだと主張する研究者たちもいる。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
ヨットを襲撃するシャチに「ヘヴィメタ」で対抗。船乗りたちの対策、完全な失敗に終わる