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若き発明家が指摘する、大人がスルーしている「可能性」。アイディアを生み出すための思考法とは

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「本当は誰もが発明家になれるんです」

そう話すのは、「1日1発明」を習慣にしているという発明家の高橋鴻介さん。発明家というと機械やロボットを想像する人も多いかもしれないが、高橋さんが発明するのは「接点」だ。

これまで、触覚を使って誰もが遊べるユニバーサルゲーム「LINKAGE(リンケージ)」や、視覚障害のある人が使っている点字の上に文字を重ねて、目が見える人も読めるようにした「Braille Neue(ブレイルノイエ)」など、社会にある「壁」を無くして、人々の間に新たな「接点」を作る発明品を生み出し、社会にじわじわと広げてきた。

そんな現代の発明家として活躍する高橋さんは、「誰もが発明家になれる」という。大人になればなるほど「スルー」してしまっている、誰もが持っている「可能性」とは?

※ハフポスト日本版では日建設計とのコラボで高橋鴻介さんによるワークショップを企画しています。11月30日(木)19時より。詳細は記事の末尾で。

発明家の高橋鴻介さん発明家の高橋鴻介さん

「面白そう」は社会とどこかで繋がっている

高橋さんは2018年頃、盲ろう者(視覚と聴覚の両方に障害がある人)の田端快仁(たばたは・やと)さんと出会い、手話の形を手で触ってコミュニケーションをする「触手話」の存在を知った。

「僕は手話ができなかったので、まず何よりも、快仁くんと直接コミュニケーションしたかった。それに、触覚でコミュニケーションする触手話は、触ったり、押したりする力の違いで感情も伝わってくると知って、『面白いなあ』と興味が湧きました」

しかし、手話をいきなり覚えるのは難しい。そこで高橋さんは、触手話をヒントに指で遊ぶツイスターのようなゲーム『LINKAGE』を手話通訳士の和田夏実さんと快仁さんと一緒に開発した。

触手話をヒントに手話通訳士の和田夏実さんと快仁くんと一緒に開発し、指で遊ぶツイスターのようなゲーム『LINKAGE』触手話をヒントに手話通訳士の和田夏実さんと快仁くんと一緒に開発し、指で遊ぶツイスターのようなゲーム『LINKAGE』

快仁さんは、ゲームマーケットでブースを出し「LINKAGE」の売り子の役割も担った。実際に「LINKAGE」で遊んだ来場者からは、大好評だったという。

この経験を経て、「触覚デザイナーになりたい」と考えるようになった快仁さんはその後、京都芸術大学の大学院に進学し、触覚の研究を行っている。

「五感や体を使ったコミュニケーションって、実は話すだけよりも情報量が多くて、可能性に溢れていると思うんです。LINKAGEのものづくりをきっかけに快仁くんが世界を広げていったように、僕を含め、会話だけのコミュニケーションに不安や違和感があったり、障害や課題を抱えていたりする人が疎外感を感じずに人とつながる面白い方法を探したい。僕のやりたいことは、あらゆる壁をなくして新たなコミュニケーションを生む『接点』の発明なんだと気づいたんです」

触手話をヒントに開発した、指で遊ぶツイスターのようなゲーム『LINKAGE』触手話をヒントに開発した、指で遊ぶツイスターのようなゲーム『LINKAGE』

「見ない、聞かない、話さない」から生まれるコミュニケーション

その後も数々の発明をしてきた高橋さん。そのうちの一つ、「未来言語」は、「見ない、聞かない、話さない」の3人組になってしりとりなどのコミュニケーションをとるワークショップだ。企業や自治体の研修に活用されることも多いという。

「『これなんで伝わらないんだろう、この感じを伝えたいのに!』というものを、言葉だけだなく、音を立てたり絵を描いたり、五感や体を駆使してどうやって伝えるか試行錯誤することで、コミュニケーションの本質的な“基本”に気づけます」と高橋さんは説明する。

「未来言語」のワークショップの様子「未来言語」のワークショップの様子

例えば、パナソニックでは海外のスタッフと日本のスタッフのコミュニケーションの壁をなくすために、神戸市では障害の有無に関わらず、コミュニケーションを楽しめるように「未来言語」のワークショップが取り入れられた。ワークショップを終えると、言葉がなくても通じ合えることが分かり、今までよりも距離が近づいたようだ。

「大人になればなるほど、会議だったり飲み会だったり、会話のコミュニケーションだけで解決しようとするようになる。でも初対面の人と上手に話すのが苦手な僕を含め、会話だけのコミュニケーションに不安や違和感があったり、障害や課題を抱えていたりする人は疎外されてしまっているんです」

思い返すと、子どもの頃は、ゲームをしたり外で遊んだり、話す以外にも体や五感を使って友達と仲良くなっていたことも多かったのではないだろうか。「五感や体を使ったコミュニケーションって、実は話すだけよりも情報量が多くて、可能性に溢れていると思うんです」と高橋さんは言う。

「社会課題のほとんどは、根底にコミュニケーションの問題があると思っています。コミュニケーションは奥深い。だからこそ、僕は『接点』を発明することにしたんです」

「この世にまだないもの」を作りたい

高橋さんは2022年にこれまで勤めていた大手広告代理店を辞め、発明家として独立した。自分のクリエイティブの力を、この世にまだない「接点」を生み出すために使いたいと思ったからだという。

次に発明したいものを聞くと、「ちょうど今、ヨーロッパを旅する中で言葉が通じずに孤独を感じているんです」と話す。

「日本もこれから外国人の移住者が増えていくと思います。言語が通じなくても海外の人と仲良くなれる『接点』を開発したいですね。あと、今はとある自治体の焼き物のプロジェクトにも携わっています。伝統工芸の職人さんって気難しそうなイメージで勝手にコミュニケーションのハードルを感じていたのですが、実際話してみると、とてもフレンドリーで、全然そんなことなかったんです。職人さんと若い人や伝統工芸を知らない人との『接点』も作ってみたいですね」

発明家の高橋鴻介さん発明家の高橋鴻介さん

高橋さんは「自分の場合、社会課題から考えると、自分ごととして考えにくいんですよね」と言う。

しかし、社会の最小単位である「自分」や「出会った人」のために発明した高橋さんの「接点」は、たしかに社会課題に繫がり、立ちはだかる「壁」を無くしていっている

未来を作る×ピントとミカタ未来を作る×ピントとミカタ

誰もが「発明家」になれる

ハフポスト日本版では連続ワークショップ企画「未来を作る×ピントとミカタ」を日建設計イノベーションデザインセンターとのコラボで開催。

前回のイベントでアイディアを出し合っている時、「自分って頭が固くなっているかも…」と感じた人も多かった。「1日1発明」しているという高橋さんにアイディアを出すコツを聞くと、「小さな好奇心や違和感を集めておくこと、そしてそれを人と共有すること」だという。

自分しか気づいていない不満や面白いことなどの『発明の素』って、人と共有して初めて気づくことが多いんです。僕の場合は、人と話していて普段の生活で「接点」にまつわる発見が多いことに気がついて、それをテーマにしています。『分かるけど知らない』ことって気付くのがすごく難しいので、考えずに『脳直(脳に思い浮かんだことをそのまま)』で人に話すのもポイントです」

イベントの前半は「1日1発明」をどうやってしているかや、実際にアイディアを形にして社会に実装するまでのエピソードなどを聞くトークショー。後半は高橋さんが編み出した思考法「NO“NO”法」を使いながら、自分のオリジナリティを発見し、「発明」するワークショップを行う。

日時:2023年11月30日(木)19時〜20時半

場所:日建設計東京オフィス(本店)3F PYNT(〒102-8117 東京都千代田区飯田橋2-18-3)

参加費無料。応募者多数の場合は抽選となります。

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