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緑茶やほうじ茶、麦茶に玄米茶、そば茶…私たちはなぜこんなにも「お茶」が好きなのか

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愛媛県のローカル食について書かれた西森路代さんの前回のコラム、食の好奇心が存分に刺激されて、読んでいたらお腹が鳴った。きっと西森さんも書きながらお腹が空いたことだろう。  

彼女は松山のご出身、私は過去に3度訪ねている。鯛が身近な地域だなあ…という印象を受けた。昔から好漁場で、養殖生産は日本一。ごちそうとしての大きな鯛はハレの日のものだけれど、手頃に買える小鯛をおかずに焼いたり、鯛めしにしたりするのは普通、なんて声がよく聞かれる。西森さんも刺身と粉末出汁を使って「鯛めしをよく炊く」と書かれていたが、そのくだりから県民食のリアルが垣間見えてとても面白かった。

同様に紹介されていた「今治焼き豚玉子飯」、私は食べたことがない。特製のタレがおいしいとのことだったが、先日カルディや成城石井で売ってないかと探してみたとき、とある感慨におそわれたので今回はこれをテーマに書いてみたい。

日本人の「茶欲」の強さ

和食にはじまり中国料理、韓国料理、タイやベトナム、あるいはイタリアンにフレンチなど、日本人が日常的に接する料理の多さはよく言われることだが、私は同時に「お茶の種類の多さ」にも感じ入ってしまう。

ごく一般的なスーパーを訪ねても緑茶にはじまり、ほうじ茶や麦茶に玄米茶、そば茶にウーロン茶ぐらいは並んでいる。そして「お茶」を「日常的に飲むもの」と広げて考えれば、コーヒーや紅茶を好む人も多い。それぞれの種類の多さは言わずもがなだ。

カルディや成城石井を訪ねて、茶コーナーの棚面積の広さ、そして種類の多彩さに……なぜか急に感じ入ってしまったんである。韓国のコーン茶、ベトナムの蓮茶に中国茶の数々。あるいはルイボスティ、マテ茶にチャイ、黒豆茶やごぼう茶、フルーツ系などのフレーバーティ。日本人の「茶欲」って、すごいもんだなと。選択肢の多さにあらためて感じ入って、口をあんぐりとさせて私はしばらく棚前に立っていた。

白央さんちの茶ストックより、これでも一部だそう白央さんちの茶ストックより、これでも一部だそう

今、うちには茶がどのくらいあるだろう……と、数えてみる。常飲しているのは緑茶とそば茶、水出し麦茶の3種類。ティーバッグではスパイスチャイに阿波番茶(徳島県のローカル茶。ほんのり酸味があってさっぱりとして、好物)、そして抹茶入りの玄米茶がある。抹茶入り玄米茶はお茶漬けに使うと実にうまいので、機会があればお試しください。 

さらには最近、紅茶に凝り出したので茶葉が6種類ほど。いただきもののフレーバーティーも3種類あり、つれあいはコーヒー党……さすがに在庫過剰だ。けれどもお茶類が好きな人なら、5~6種ぐらいは家にあるという人、珍しくないのではないだろうか。西森さんはどうだろう。何をよく飲まれますか。

 1杯の緑茶が教えてくれたこと

と、ここで緑茶に関するちょっとした思い出を書いておきたい。

私は20代の頃、とある俳優の付き人をしていた。

「お茶を淹れてくれる?」 

頼まれて、出したら黙って飲んだのちに「淹れ方を教えてあげる」と言って、目の前で示してみせてくれた。

急須に茶葉を好みの量入れ、湯呑み1杯分の湯を注ぎ、20秒ゆっくりと数えてから半量をまず湯呑みに注ぐ。それから2分待ち、残りを注ぐのだ、と。

「このとき辛抱づよく、最後の一滴まで淹れるの」

念押しするように言った声の重い響きがまだ耳に残っている。この方法で淹れたお茶は確かにおいしく感じられた。甘味が際立ち、舌にやさしい。なんでも名優・西村晃さんのお宅でいただいたお茶が実に見事で、淹れ方を教わったのだと。その俳優さんは芝居巧者だったが、もうずいぶん前に名前を聞かなくなってしまった。 

『teteria』の紅茶『teteria』の紅茶

最近は紅茶が私の日常に欠かせないものとなっている。これまで特に好きでも嫌いでもなかったのに、『teteria(テテリア)』の紅茶、特に「アッサム オーソドックス」に出合ってから一変したのだ。毎朝淹れるたび「なんておいしいのだろう」と思う。深い香りと味わいをただ感じているとだんだん世の煩わしいことが消えていき、カップ1杯を飲む時間だけ、とても静かで自由な時間を得られる。そんな気持ちになる。

大事なのは、パッケージに書いてあるとおりに計量し、煮出す時間を守ること。一度「もう感覚はつかめた」と思って目分量でやってみたら本来の味わいにならず、後悔した。というわけで毎回『teteria』の指示どおり、きっちりと淹れている。私はもともとがアバウトな性格で「人生、目分量」という感じで来てしまっているが、一日を「何かに従う」ことから始めるというのは、気持ちがシャキッとしていいものだということをこの頃知った。

(文:白央篤司 編集:毛谷村真木

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緑茶やほうじ茶、麦茶に玄米茶、そば茶…私たちはなぜこんなにも「お茶」が好きなのか

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