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「自分を愛せるようになった」二階堂ふみさん。動物と暮らして気づいた、新しい豊かさを語る。

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保護犬をはじめとした6匹の動物と一緒に暮らす、俳優の二階堂ふみさん。

着飾らなくても、モノで補わなくても「自分を愛せるようになった」。それは、アニマルライツ(動物の権利)や環境、人権について考え行動することが自分の誇りになったからだという。

ファッションを通じて社会にメッセージを発信する二階堂さんが、アパレルブランド「KAPOK KNOT」とのコラボレーションを通して考えたこととは。

「アニマルライツ×モード」の新しい形と、これからの時代に求められる「豊かさ」について二階堂さんに話を聞いた。

二階堂ふみさんがこの日着用したのは、チャイナドレスとキルティングコートをミックスした二階堂さんイチオシの「CHINA DRESS」二階堂ふみさんがこの日着用したのは、チャイナドレスとキルティングコートをミックスした二階堂さんイチオシの「CHINA DRESS」

「搾取する側」の罪悪感に気づいた

――二階堂さんは現在、保護犬をはじめとした6匹の動物と一緒に暮らしているそうですが、アニマルライツに目を向けるようになったきっかけは何でしたか。

約8年前にフェレットと暮らし始めたことです。「こんなに感情豊かで、美しい生き物がいるんだ」と驚かされたのと同時に、それまでの自分がファーやレザーの衣装を普通に着ていたことに思い至ったんですね。

自分は「搾取する側の人間」である。そのことに罪悪感と、絶望的な気持ちを抱くようになりました。でも、じゃあどうしたら人間と人間以外の動物が共存していけるのかを、ファッションはもちろん、実生活でも考えるようになりました。

もしかしたら私のこの選択は搾取、もしくは搾取に加担している可能性があるかもしれない。そうしないためには何ができるだろう。

自分の中にそんな視点が生まれたことで、動物福祉や、その先にある環境のことも意識できるようになれたんですね。そこからどんどん生活が変わっていったし、自分自身のことも大切にできるようになった。今はすごくいい循環ができているなと実感しています。

――動物や環境を意識することで、自分自身も大切にできるようになった。なぜでしょう。

動物と暮らすようになって気づいたのが、自分自身がまず安定していないと、動物と一緒の暮らしはできないんですね。それは経済的にも精神的にも。だからこそ自分の生活を見直すようになりましたし、動物福祉や環境問題について勉強することで、心が豊かになれた実感もあります。

きっかけをくれたフェレットは亡くなってしまいましたが、今はもう1匹のフェレットとワンちゃん2匹、猫ちゃん3匹と一緒に暮らしています。 

二階堂ふみさん二階堂ふみさん

紅白の衣装で発信したメッセージ

――最近は人や社会、環境に配慮した「エシカル消費」の意識が社会全体で高まっています。二階堂さんもその変化は感じていますか。

エシカル(倫理的)な消費それ自体は良いことだと個人的に感じていますが、言葉だけが先行しているような危機感もあります。

服であればどういった染色の工程があるのか、製造過程のカーボンフットプリントはどれくらいか、会社としての雇用形態はきちんとフェアなのか……そういったあらゆる過程において透明性があるものが本当の意味での「エシカル」だと考えてます。

ただ、トレーサビリティを重視すると、価格が上がってしまう難しさはありますよね。でも安いものを適当に3つ買うよりは、価格はちょっと高めだけれども、環境や人権に配慮しているものを1つ選んで買う。そうすることで、自分だけじゃなく次の世代にも優しさが循環されていくのではないでしょうか。

買い物も一種の投票だと思っています。選挙の結果が生活に反映されるように、どのブランドや店に投票したかも、いつかきっと自分に還ってくる。だからこそ優しさを循環させていけたら。

――何を選び、どこで身にまとうか。ファッションはその行為自体が他者へのメッセージにもなります。2020年のNHK紅白歌合戦で、二階堂さんは動物愛護に力を入れる「エリザベッタ・フランキ」のスーツやアンチ・レイシズム(反人種差別)と書かれた指輪を着用したことが話題になりましたね。

スタイリストさんと相談しながら決めました。3着目に着用したステラマッカートニーのドレスは私物です。私にとってファッションは自己表現であり、意思表示、メッセージでもあります。ですから、普段のファッションでもそのブランドが掲げる思想や信念が、できるだけ自分の思いと重なるブランドのものを選ぶようにしています。

今回のKAPOK KNOTとのコラボレーションも同じです。KAPOK KNOTの存在を初めて知ったのは2021年、肌寒い現場でスタイリストさんが用意してくれたアウターがきっかけでした。薄手なのに暖かくて、インドネシアに自生するカポックという木の実から作られる繊維だと知って「こんなブランドが日本にもあるんだ」と興味を持ち、そこから色々やり取りをさせていただくようになりました。

羽毛の寿命は約100年、1世紀持つと言われています。地球上に今ある羽毛をリサイクルしていけば、水鳥からこれ以上、羽毛を取る必要はないそうなんですね。

動物素材のすべてが悪だとは思っていませんが、これ以上、他の動物から搾取しなくとも環境に負荷をかけない素材がすでにあること。それから「ダウン以外にも防寒の選択肢ってあるんだな」と今回のコラボをきっかけにまず知っていただけたらと思っています。

木の実由来のカポック素材を使った二階堂ふみ×KAPOK KNOTの共同制作による「Animal Free Down」3種。長く着用できるタイムレスなデザインとサステナブル素材にこだわった。アイテムの収益の10%がアニマルライツを追求する団体に寄付される。いずれも数量限定販売。木の実由来のカポック素材を使った二階堂ふみ×KAPOK KNOTの共同制作による「Animal Free Down」3種。長く着用できるタイムレスなデザインとサステナブル素材にこだわった。アイテムの収益の10%がアニマルライツを追求する団体に寄付される。いずれも数量限定販売。

異なる価値観の人と、手を取り合って考えたい

――今回のKAPOK KNOTとのコラボレーションは、「新しい時代の豊かさ」とは何かを消費者にも問いかけてきます。二階堂さんは、人生の「豊かさ」をどう捉えていますか。

心地良いと思えることやモノに触れて、自分を大切にできること。それが新しい時代の「豊かさ」なのかな、と今は感じています。

以前の私にとって豊かさは物質的なものでした。だから着飾ったり、モノで身を固めたりして自分を補うことで、自分を愛そうとしていたんですね。

でも動物と一緒に暮らすようになり、動物や環境、人権を考えた選択をするようになってからは、そんな自分に誇りを持てるようになったし、愛せるようになった。

だからといって自分の価値観を押し付けたいわけではまったくありません。むしろ異なる価値観の人たちと意見交換をしながら、手を取り合って一緒に考えていきたい。異なる視点のおかげで気付かされることもたくさんありますから。

そうした過程で生まれる優しさが、どんどん社会で循環していく。それが私にとっての豊かさであり、「美しい人生」である気がします。

かつては自分の考えを主張することがあまり歓迎されませんでしたが、今はどんどん社会や消費者の意識が変わってきていますよね。私はアクティビストと名乗れるほどのことはまだできていませんが、自分の発信やアクションを共有することで誰かがその問題について考えるきっかけに少しでもなれたら、それだけでも十分に嬉しく思います。

(取材・阿部花恵 編集・泉谷由梨子)

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「自分を愛せるようになった」二階堂ふみさん。動物と暮らして気づいた、新しい豊かさを語る。

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