7月10日に投開票を迎える見込みの参議院議員選挙。若者の政治参加が進まず、未来へ希望が持ちにくいと言われるなか、各政党はどのようなビジョンを示すのか。
U30世代に向けてSNSなどでわかりやすくニュースや社会問題を伝えている「NO YOUTH NO JAPAN」の代表で、ハフポスト日本版のU30社外編集委員を務める能條桃子さんが、各政党にインタビューを実施。政治への疑問や社会に対する不安をぶつけた。
第2回は国民民主党。2020年に新政党として再スタートして以後も、一貫して代表を務める玉木雄一郎氏が取材に応じた。
■すごく簡単に言うと「給料が上がる日本をめざす」
能條桃子さん(以下、能條):
まずはグランドビジョンからお伺いします。「国民民主党が次の世代にどんな日本を残したいと思っているか」について教えてください。
玉木雄一郎代表(以下、玉木):
すごく簡単に言うと「給料が上がる日本」にしたいと思っています。(物価影響を除いた実質賃金」グラフが描かれたパネルを示しながら)この25年間、日本の実質賃金は下がり続けています。
私が社会人になったのは1993年でしたが、その3〜4年後が日本の賃金指数のピークで、どんどん落ち続けている。そこを変えることが、我が党が一番やりたい政策です。給料が上がる経済にします。
「頑張って就職して一生懸命働けば給料が上がる」っていう希望があれば、学生が奨学金を借りるのも不安じゃなくなるし、結婚もできるし子どもを持てる。「第1子が生まれたけど、2番目、3番目の子どもはどうしよう」という相談を聞くことが多いんです。大学まで全て私立で子どもを通わせると、1人2500万円ぐらいかかる。2人を子育てするとなると合わせて5000万円。老後で2000万円かかるから「もういい加減してくれよ」って話になる。
でも給料が上がっていけば、さまざまな問題が解決されます。実現できるのか?とよく言われるけど、アメリカでは25年から30年で賃金水準は倍になっています。出生率が日本より低いとされる韓国でも上がっています。真面目で一生懸命に頑張る国民が多い日本で賃金が下がり続けるのは、一重に政策がおかしかった。そこを変えていきたい。それが我々の一番やりたいことです。
■給料が上がらない理由。悪かった日本の2つの政策とは?
能條:
私は1998年生まれなんで、ちょうど賃金が下がり始めたあたりで生まれています。そこからずっと下がり続けていますが、政府の政策でどんなところが悪かったんでしょうか?
玉木:
悪い政策は2つあります。まず1つ目。賃金が上がっている国と日本の政策を比較してみると、一番違うのは人への投資です。イノベーションや技術開発が成長の源泉です。生産性が上がって、初めて給料も上がっていく。そこで、教育や科学技術への予算を倍にしようと思っています。(子ども・子育て支援に対する公的支出は)OECD平均はGDP比で2.34%なのに対して、日本は1.79%と低い。倍にしてやっとOECD平均を超えるぐらいなんで、これを速やかに倍にする。
高校までの教育費は完全無償化にする。大学も給付型奨学金を拡充して、基本的に学ぶことにお金がかからないようにする。ドイツは(国公立校の場合には)大学卒業まで学費がかかからないので、勉強を一生懸命できるし、空いた時間にインターンに行ける。その結果、知識と経験を持ってすぐ社会に出る即戦力が生まれます。
学業を犠牲にしながらアルバイトしないと学費が払えない日本とは、最終的に人材の差になるし、社会や経済の差になります。
もう一つは、「何でもかんでも外国から買う」ということをやめた方がいい。私の出身の香川県の名産である讃岐うどんを例にあげましょう。うどんは、小麦と塩と水と3種類あればできるけど、主な原材料である小麦は、讃岐うどんの場合、ほとんどがオーストラリアからの輸入です。私が300円払って讃岐うどんを食べると、そのお金は巡り巡ってオーストラリアの農家に入り、国内の農家には入らない。
同じようなことはたくさん起きています。たとえば新型コロナウイルスのワクチンも、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ……。全て海外の製薬メーカーです。税金で払ったから個人負担ではないけど、我々のお金が何兆円とつぎ込まれているのに、日本企業や日本人には基本的にお金が落ちません。
日本はグローバリズムを推進してきたけど、コロナ禍やウクライナ危機でも分かったことは、ある程度大事なものは、国内で多少高くても作って流通するような仕組みにしとかないと、いざというときに困る。富を海外に流出させるんじゃなくて、お金を払うにしても国内で循環するようにして、日本企業や日本人の所得の向上に繋がるような、新しいお金の流れに変えていく必要があります。
■闇雲にお金を出すのではなく使途を限定。「教育国債」はリターンが見込める
能條:
先ほどの賃金の話から含めて若者の将来不安への対策なのかなと思いました。改めて若者に向けて何をするのかを伺えればと思います。まず財政についてですが、これだけ赤字が増えると、プライマリーバランスを黒字化するためにはどうすればいいでしょうか?
玉木:
私は借金が増えてることそのものが問題ではないと思っています。「借りたお金を何に使うか?」「何のために借りるのか?」すごく大切だと思っています。たとえば今までは「橋や道路を作るためには国債発行が認められます」ということだったんだけど、近年の企業では、使途を限定して社債を発行する「ESG債」とか「グリーンボンド」が盛んになってきています。それを進んで買うようなマーケットもできています。その国債版として「教育国債」をやりたいと思っています。
使途を何に限定するのかというと、これから将来残すべき最大の資産はやっぱり人材です。未来への投資としての教育国債だから、借り入れでもいいので国債を発行する。将来の経済成長や税収増などが見込める分野に、借金を使ってどんどんやったらいいと思うんです。ある意味リターンがあるから。
でも逆に年金医療介護などの高齢者向けの支出は、老後の何年間かの支出なので、その人自身が返すことは難しいので負債だけが残ってしまいます。こうした分野には、きちんと税と保険料を当てることにして、支出を分けたらいいと思うんですよね。
「借金が貯まって駄目ですよ」と言っても、見合う資産があれば別に問題がない。我々は「積極財政に転換しろ」と言ってるんだけど、闇雲にお金を出せって言うんじゃなくて、やっぱり教育とか子育てとか人作りとか、そういったところはもっと積極的に国債を発行して、お金を入れるべきですね。
人を限定した教育国債を発行すれば、受益をした子どもたちが、もう30年もすれば立派な納税者になるので、彼らがその世代として返済する。国が運営する大きな教育ローンのようなものと考えて、どんどんやったらいいと思っています。
■若い世代ほど大きな負担。裕福な高齢者が「同じ世代で支え合う」仕組みが必要
能條:
高齢者だけではないかもしれないけど、たしかに少子高齢化の中で医療や介護負担の部分は、リターンが見えないまま、金額が膨張しているところがあると思います。それはどうコントロールしていきますか?
玉木:
私はよく世代会計について、高校生や大学生向けに演説しています。世代に応じて一緒に渡って受け取る受益と負担。プラスマイナスありますが相殺すると、60歳以上の高齢者はプラス4000万円。それが世代が若くなるにつれて下がっていき、0〜10歳の将来世代はマイナス8300万円。今の制度だと若い人ほど損なんですね。
その理由は単純で、日本の制度は賦課(ふか)方式をとってるため、年長者の世代を若い世代が支えることになっています。人口がどの世代でも全く同じだったら完璧に回るんだけど、若い世代ほど人口が少ないから1人当たりの負担が大きくなっちゃうんです。
これまでの日本政府は、若い人に「お前が働いてんだから、お金を出して支えてくれ」という立場でした。でも、これからは高齢者の中でもかなり裕福な方がいらっしゃるので「同じ世代の中で支え合ってください」とするべきです。若い人が高齢者を支えるのではなく、「豊かな高齢者がそうじゃない高齢者を支えてください」という具合に、世代内で支え合っていくような仕組みに変えていく必要があります。
■「社会保険料が高すぎてビビる」という友人の声⇒「ビビりますよね」
能條:
就職した友達からは「社会保険料が高すぎてビビる」という声をよく聞きます。社会保険料がちょっとずつ上がってきていて、「どこまで上がるんだろう?」という不安があります。ただでさえ給料低いのに、可処分所得はもっと低くなっているという現状について打開策を伺えれば。
玉木:
ビビりますよね。全くおっしゃる通りです。たとえば大学院までいって働き始めて、25歳から65歳まで働いた場合、40年間で年収500万円だった場合だったら稼ぐのは2億円。そのうち税金で払うのが5000万円。社会保険料は税金と同じかちょっと多いくらいで5000万円。2億円稼いでも1億円は、税と保険料で持っていかれる。国民負担率50%というのは、そういうことなんだよね。
結局、源泉徴収で若い人から知らないうちに取るのが楽なので、こうなった。「若い人は選挙に行かないし文句も言わないから、もうそこから出していけばいい」となった結果が、今の日本の仕組みなんですよね。
「打ち出の小槌」はないから、働いてる人が給料から引かれてる保険料を抑えるんであれば、誰かに負担してもらわなきゃいけない。そこで、高齢者の中でも、少し余裕のある方には一定のご負担をお願いする。それが究極的には世代内の負担になるし、若い世代へ負担を先送りすることを止めることにもなる。そこは政治が正直に語っていかないといけないと思いますね。
■「給料が上がって欲しい」と思う人は国民民主党に是非
能條:
最後に、この夏の参院選でどこに投票しようか考えている若い世代に向けて「こういう人は国民民主党に投票するといいよ」というメッセージをお願いします。
玉木:
「頑張ったら報われる国」にしたいので、その意味で私達は本当に「給料上げる」「国を守る」っていうことを訴えていくので「給料が上がって欲しいな」と思う人は国民民主党に是非(笑)。
そのために経済政策を積極財政に転換して、特に「人への投資を倍増させる」ということで、私達は明確な方向性とビジョンを出しています。「人を大切にする国」を作りたいので「人を大切にする国民民主党」に、ぜひ力をお貸しください。
(執筆:安藤健二 写真:坪池順)
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「社会保険料が高すぎてビビる」若者の声にどう応える?玉木雄一郎代表インタビュー【U30×国民民主党】