緊急避妊薬(アフターピル)ってどんなものか見たことがありますか?低用量ピルは?妊娠検査薬はーー?
私たちの体に関わる大切なものだけれど、実際はどんなものか知らない。そういう人も少なくないのではないでしょうか。
こうした性に関する情報を学べる教材キット「ポケット避妊教室」が誕生しました。アフターピルのアクセス改善を目指す市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現するプロジェクト」が作成。希望する学校や薬局に配布する計画です。
5月31日まで、活用する学校や薬局などを募集しています。
避妊方法は自分自身で「選べる」もの
プロジェクトは2021年、「#緊急避妊薬 (アフターピル)の知識をすべての人へ!」としてクラウドファンディングを実施。約630万円の支援が集まり、啓発キットの作成に取り掛かりました。
養護教諭や薬剤師、助産師などが生徒・相談者に個別指導や説明をする際に使うことを想定。アフターピルや低用量ピル、コンドーム、避妊リングや妊娠検査薬などの実物またはサンプルに加え、避妊法や性暴力に関する情報や相談先が書かれたカード型の教材もセットになっています。
実物に近いものを見たり触ったりして学ぶことで、実際に使うシーンをよりイメージでき、自分自身で「選べる」ものなのだと感じられるよう工夫したと言います。
プロジェクトによると、避妊に関する情報を提供するパンフレットや試供品はあるものの、セットになっているものは日本で流通していないとのこと。海外で活用されているものを参考に、開発を進めたそうです。
「恥ずかしさ」や「罪悪感」ではなく…
性に関することを学ぶときに恥ずかしさを感じたり、緊急避妊薬を使うことに対して罪悪感を持ったりする人もいるかもしれません。
プロジェクトは、そうした気持ちを強めるのではなく「避妊や性のことを大切に思ってもらいたい」とコメント。性別に関わらず身近に感じられるデザインを心がけたそうです。
また、キットに合わせて、緊急避妊薬の入手方法や使い方、相談先などをまとめたパンフレットと動画も作成しました。
動画では「避妊はあなたの夢・望む人生を守ってくれる大切な手段。罪悪感なくサポートを受けられることは全ての人の権利です」とアナウンス。「緊急避妊薬や避妊が特別なものではなく、普段の生活の延長上にあるものとして情報を広げられたら」との思いが込められています。
キットは300個、冊子は1万部を製作。すでに学校や薬局から多くの申し込みが寄せられていて、希望者(多数の場合は抽選)に届けるほか、今後販売も含め増産も検討するそうです。
アフターピルを薬局で買えない日本
プロジェクトがアクセス改善を目指すアフターピルは、妊娠する可能性のある性行為から72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を防ぐことができる薬です。性交後、早く飲むほど妊娠を避ける効果が高くなります。
厚生労働省の調査によると、世界の約90の国では医師の処方箋がなくても薬局などで購入できますが、日本では受診や処方が必須で値段も高額。アクセスのハードルの高さが問題になっており、厚労省が薬局での販売について検討する会議を開いています。
ただ、2017年には同様の会議で「性教育が遅れている」「使用者自身のリテラシーが不十分」などの意見が出て市販薬化が見送られており、先行きは不透明です。
プロジェクトの共同代表を務める染矢明日香さんは「1日でも早く、安心して緊急避妊薬が薬局で入手できる環境の実現に向けて、皆さんの応援や連帯が私たちの力になります」とコメント。厚労省の会議では今後パブリックコメントも予定されており、「ぜひ皆さんで声をあげ、共にアクションを重ねていきましょう 」と呼びかけています。
キットの提供希望はこちらから。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
アフターピル、まずはどんなものか見てみよう。使う「罪悪感」はいらない。「ポケット避妊教室」が誕生