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「危機的な状況です」雪山の変化を目撃している人たちの訴え。私たちが今、気候・エネルギー政策に向き合わなければいけない理由

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「雪が降る日数が確実に減っている」「雪山では、気候変動による影響を目の当たりにしています」

スキーやスノーボードなどのアウトドアコミュニティが、気候変動対策とエネルギー政策をめぐり、共に声を上げている。

北海道新聞と信濃毎日新聞の朝刊に10月8日、気候危機を訴える広告が掲載され、都内のアウトドアブランドのショーウィンドウでもメッセージが掲げられた。

また、都内で同日、プロスキーヤー、アウトドアブランド、スキー場経営者、町長など様々な立場の人々が共に、気候・エネルギー政策への共同提言を発表した。

気候・エネルギー政策に対し、共に声を上げたアウトドアコミュニティ気候・エネルギー政策に対し、共に声を上げたアウトドアコミュニティ

【あわせて読みたい】「日本で雪が降らなくなるのを待つだけでいいのか」スノーボーダーたちの切実な問いかけ。気候変動の影響を目撃する私たちにできること

「私たちは、このまま雪が降らなくなるのを、待つだけでいいのか」と問いかける広告を企画したのは、一般社団法人「Protect Our Winters Japan」(POW)。

雪山で気温上昇の影響を肌で感じているスキーヤーやスノーボーダーがつくる団体で、ウインタースポーツコミュニティに向けて気候変動について発信するなど様々な活動を行っている。

広告には、アウトドアブランドのPatagonia、THE NORTH FACE、スノーボードブランドのBurtonなども名前を連ねた。

原宿にあるBurton旗艦店のショーウィンドウに掲げられた広告原宿にあるBurton旗艦店のショーウィンドウに掲げられた広告

プロスノーボーダーでPOW代表理事の小松吾郎さんは、アウトドアコミュニティと連携して、このようなアクションを起こした理由をこう説明した。

「POWで活動を始めた6年前、日本ではまだ気候変動に懐疑的な人も多くいました。しかし、ここ数年の暑さや海水温の上昇、豪雨や洪水、山火事などを前に、もうその変化に気づいていない人はいません。気候変動に由来する気象災害が増え続けています。

私たちに他の選択肢はあるでしょうか。この問題は一個人、一団体、一企業の努力で解決できるものではありません。日本全体、世界全体が変わるために、正しく皆が前を向ける政策を強く求めます」

POW事務局長の髙田翔太郎さんは「必要なのは、化石燃料に頼って成り立っている今の経済社会システムを変えるシステムチェンジ。その道筋を作るのが国の政策」とした上で、「脱炭素の方向に舵を切っていくためにも、国の明確な指針が必要」と指摘した。

アウトドアコミュニティが、気候・エネルギー政策めぐり政策提言をする理由

共同提言では、▽気候・エネルギー政策が「1.5℃目標」に整合すること、▽気候変動政策の「決め方」の見直し、の主に2点を求める。

提言1では、NDCやエネルギー基本計画、GX2040ビジョンに「1.5℃目標」を明記した上で、それらがどう目標に整合しているかの説明を要求。

提言2では、審議会や研究会のメンバーの所属やジェンダーなどに偏りが見受けられるため、人選方法を変更し、気候変動の影響を現に受けている当事者の声を気候変動政策に反映させる仕組みづくりを求めている。

「1.5℃目標」とは、2015年にパリで開かれたCOP26で合意された目標値で、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるというものだ。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減することが必要だ。

共同提言はPOWと一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパンが賛同呼びかけ人となり、アスリート・個人318人と、110の企業・団体・自治体が賛同している。

共同提言の発表には、プロスキーヤー、アウトドアブランド経営者、町長、スキー場経営者など様々な立場の賛同人9人が登壇し、それぞれが雪山で感じる「変化」と、気候・エネルギー政策への意見を述べた。

バートンジャパン合同会社の竹鼻圭一代表バートンジャパン合同会社の竹鼻圭一代表

スノーボードやアウトドア用品を製造・販売するバートンジャパン合同会社代表の竹鼻圭一さんは、雪山での変化について話した。

「雪が降る期間が短くなっています。本当に危機的な状況です。ちょっと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、 本州では1、2月しか初心者の皆さんが安心してスキーができる期間がなくなっています。昔は『春スキー』というと、5月のゴールデンウィーク頃までのスキーを指しましたが、今では1ヶ月半程も短くなり、3月を『春スキー』と言っています」

また、先日行われた自民党の総裁選や立憲民主党の代表選挙でも、気候変動が議題にすらなっていなかったことを指摘。「政策のリーダーシップが本当に必要」とした。

「今、気候変動の加速を止めるためには政策の転換が必要で、政策のリーダーシップが必要です。化石燃料を燃やすのではなく、 再生エネルギーで大胆な転換を今すぐにすることが重要です」

「気候変動の影響を目の当たりに」スキーヤー、スキー場経営者の声

プロスキーヤーの小野塚彩那さんプロスキーヤーの小野塚彩那さん

プロスキーヤー(ソチオリンピック銅メダリスト)で、POWのアンバサダーを務める小野塚彩那さんは「子どもの頃と比べて、スキーができる期間もものすごく短くなっています」とし、肌で感じる危機について語った。

「バックカントリーで滑っていると、気候変動の影響を目の当たりにします。春先には、雪崩などフィールドでの危険性も非常に感じますし、バックカントリーに入れる時期も遅くなっています」

小野塚さんはPOWのアンバサダーとして、小学校などで気候変動がもたらす雪山などへの影響について出張授業をしている。 

大都開発株式会社・代表取締役の澤生道さん大都開発株式会社・代表取締役の澤生道さん

長野県と群馬県にあるスキー場の経営者3人も登壇し、スキー場で感じる危機感について話した。

かたしな高原スキー場を運営する大都開発株式会社・代表取締役の澤生道さんは、「現場で感じること」として、2015〜2016年のシーズンから、雪不足が常態化していると指摘。スキー場の全面滑走可能日数のデータからも、顕著に変化が見受けられるとした。

今回、アウトドアコミュニティの一員として声を上げた理由として、「気温上昇による変化のスピードが加速度的に上がってるなと体感していること」を挙げた。

「スキー場を50年以上運営してきた中でも、特にここ9年間では、今までありえなかったことを何回も目の当たりにするということがあります。これは通常の変化ではないなと思っております。

例えば、積雪の少なさや雪の減りの速さ、恐怖を覚えるほどの豪雨などで、近い将来、この変化に頑張ってついていこうとしても、振り落とされる地方中小企業が出てきてしまいます。1.5度目標は、少しでも気候変動の加速をやわらげるものだと信じており、行動する必要性を感じます」

「雪がなくなったら、全員負け。」とストレートに伝える広告「雪がなくなったら、全員負け。」とストレートに伝える広告

提言は8日午後、自由民主党の「ウインタースポーツ&リゾーツ議員連盟」幹部4人に手渡された。後日、超党派の「山の日」議員連盟にも手交する予定だ。

同日公開された特設サイトでは、提言の内容など詳細な情報がチェックできる。

(取材・文=冨田すみれ子)

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