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「日本企業と提携しうるような大きなイスラエル企業との取引は、イスラエルのジェノサイドや植民地化に加担してしまう可能性が高い」
ビジネスと人権の専門家で、国連人権高等弁務官事務所のパレスチナ副代表を勤めたこともある髙橋宗瑠大阪女学院大大学院教授はそう指摘する。
国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、イスラエルに対しガザ地区の住民の大量虐殺(ジェノサイド)を防ぐため、あらゆる手段を尽くすよう暫定措置を命じていた。
しかし2月12日、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ地区の最南端ラファへの空爆を開始。UNRWAによると、現在ラファには避難民が集まり、元々28万人だった人口が140万人に達している状況だ。そんな場所を攻撃すれば多くの犠牲者が出ることは容易に想像でき、国連やバイデン米大統領らがイスラエルに対し警告をしている。
この状況の中、日本も含めた企業の責任が問われている。
伊藤忠商事らがイスラエル軍事大手との提携終了へ
伊藤忠商事は2月5日、子会社の伊藤忠アビエーションとイスラエル軍事大手「エルビット・システムズ」と締結していた協力覚書(MOU)を2月中をめどに終了すると発表。
同時期にエルビット・システムズと協力覚書を締結していた日本エヤークラフトサプライも9日、契約を2月中をめどに終了すると公式ホームページで発表した。
髙橋教授によると、エルビット・システムズはミリタリーテクノロジー企業で、「イスラエルの軍事企業の代表格」だという。
兵器に使われるテクノロジーや、分離壁の監視技術、爆撃用のドローンなどを手がけており、イスラエル軍が使用しているドローンの85%は同社の製品だという調査もある。
「今回の提携終了の決定はもちろん評価に値します。一方、そもそもエルビット・システムズのような企業と手を組もうとしていたこと自体、人権デューデリジェンスの過程に欠陥があると言わざるを得ません」(髙橋教授)
伊藤忠商事はハフポスト日本版の取材に、「伊藤忠アビエーションとエルビット社とのMOUは、防衛省の依頼に基づいた、日本の安全保障に必要な自衛隊の防衛装備品の輸入を目的とした提携」だと説明。その上で「イスラエルとパレスチナ間の紛争に一切加担するものではない」との見解を示した。
髙橋教授は「エルビット・システムズの技術や製品を買うということ自体が、イスラエルの企業に加担することです」と指摘した。
「そもそもその輸入する武器や技術は、パレスチナ人の弾圧に使われ、パレスチナ人を『モルモット』にして開発されたものです。 それを日本の企業や政府が買うということは、イスラエルの軍事政策を正当なものとして認めているのと同じです」
なお、防衛省に「自衛隊の防衛装備品を輸入するよう伊藤忠側に依頼した事実があるか」と取材したところ、防衛省は「ご指摘のような事実はありません」と回答。伊藤忠の説明と食い違っている。
企業から「クリーンなイスラエル企業はあるか」と相談されるが…
髙橋教授の元にはこれまでに、様々な企業から「日本政府からイスラエル企業と提携するように言われているが、植民地政策に関わるのは評判リスクが高い。クリーンなイスラエル企業を教えてほしい」と相談が来たそうだ。
しかし、「日本企業と提携しうるような大きなイスラエル企業は、何かしら植民地政策や軍事と関わっている可能性が高いと考えたほうがいいです」と髙橋教授は指摘する。
一見すると軍事や植民地と関係がないように見える民間企業との提携であっても、間接・結果的に「植民地政策」に加担してしまうリスクが高いという。
「例えばイスラエルの民間企業にブルドーザーを売っただけだと言っても、そのブルドーザーでパレスチナ人の家屋を破壊し、国際法違反である植民地化を進めているわけです。もし植民地にある企業と取引をしているなら、それは植民地を是認し加担していることに他なりません。イスラエルの経済自体が植民地政策や軍事を土台にしているということを、日本企業は理解するべきです」
一方、どんな日本企業でも「パレスチナ人なんてみんな死ねばいい」と思っている人は基本的にいないと思う、と髙橋教授。企業の中の人が善人か悪人かの問題ではなく、「システムの問題だ」と指摘する。
「イスラエル企業と取引をすれば儲かるという、そのシステムを変えなければいけません。システムを変えるためには1企業の取り組みでは限界がある。システムを変えるのは政府です。政府が政府間ボイコットや経済制裁に向けて動くべきです」
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「軍事企業でなくともジェノサイドや植民地化に加担の可能性」ビジネスと人権の専門家が、イスラエルと取引する日本企業に警鐘