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アメリカでは、自立していることは長所だと評価される。デスティニーズ・チャイルドの「インディペンデント・ウーマン」やボン・ジョヴィの「イッツ・マイ・ライフ」など、誰にも頼らないことを称える曲を挙げだしたらキリがないということも自立することの素晴らしさを物語ってもいる。
誰にも頼らないことが褒められるのは人間関係においてもだ。これを読んでいるあなたも、パートナーには精神面でも経済面でも気を使わせないようにしていると得意げに思っているかもしれない。
自立しているというのは確かに素晴らしいことだ。しかし、ハフポストの取材に応じた専門家たちによると、程度によっては危険をはらむケースがあるという。
自立も行き過ぎると、健全な人間関係を築くうえで邪魔になる。さらに、不安で頭がいっぱいになるという弊害も生じる。
周りに助けを求められず、頼れるのは自分だけという状態は「極度の自立性」と呼ばれている。
「健全な自立性」と「極度の自立性」の違い
心的外傷(トラウマ)が専門で、家族・結婚セラピストの資格を持つサマー・フォーレンザ氏は「極度の自立性がある人は周りに頼れず、自分に頼りすぎている状態にある。『心をむしばむ自立性』と呼ばれることもある」と話す。
過度に自立してしまうと、できないことが出てくるから厄介だ。例えば、仕事でつまずいても同僚に相談できない。パートナーから奢ってもらうことを受け入れられない。他人を信頼していないので何かを任せるということもできない。
メンタルヘルス・カウンセラーの資格を持ち、ポッドキャスト番組「Let’s Be Honest」を配信しているリアーナ・ロス氏は「自立性に濃淡があると考えるとわかりやすい」と説明する。
ロス氏は自立していることは本質的にはいいことだとしながらも、人間関係にマイナスの影響を及ぼし、さらには不安感をもたらすようであれば、それはもう健全な自立性ではないという。「極度の自立性は、究極の自己依存。本当に必要な助けさえも拒否し、支援の網から自分自身を切り離すところまでやってしまう人もいる」と指摘する。
どうして人は必要以上に自立するように自分を追い込んでしまうのか。フォーレンザ氏とロス氏によると、子どものころに保護者に適切に面倒を見てもらえなかったなどのトラウマに起因することがある。信頼していた相手に繰り返し裏切られるなどの経験も、他人はあてにせずに生きるという極度の自立性につながってしまう。
トラウマが専門の臨床メンタルヘルス・カウンセラーのローレン・アウワー氏は「もし子どもの時に自分やきょうだいの面倒を誰も見てくれず、頼れるのは自分だけという環境だったとしたら、自分で何事も解決することが自分の支えになっていたというのは理解できる。でも、子ども時代に染み付いてしまったその行動パターンは、後々の人生において恋愛や友人との人間関係を台無しにしかねない」と話す。
では、実際に自立が行き過ぎると、どんな悪影響が生じるのか。
恋愛にはこんな影響が出る。「恋愛のゴールは2人でチームを築くこと。でも、極度に自立している人は相手のことを頼ることはせず、自分でなんでもやってしまう。これではとてもチームになれない」とロス氏。さらに、自分には感情的な親密性は必要ないと思い込んでいるため、愛着を避ける傾向もあるという。これでは相手を信頼し、弱みをさらけ出せる関係を築くことは難しい。
相手を信頼し、弱みをさらけ出せないとなると、恋愛だけでなく家族や友人関係においても足かせとなるとアウワー氏。これにはフォーレンザ氏もうなずき、「人間は社会性がある生き物で、それは互いを頼るということだ」と付け加えた。
極度の自立性は克服できる?
ここまで読んで、もしかしたら自分も自立し過ぎてしまっているかもしれないと感じている人もいるはずだ。
そんな自分を変えたいと思う人には、専門家からのアドバイスが参考になるかもしれない。
フォーレンザ氏がやるべきと勧めるのが、その行き過ぎた自立性がこれまでの人生であなたを支えてきてくれたということをまずは認めること。きっとそうしなければやってこられなかった理由があったはずだからだ。
そのうえで、毎日の生活を振り返り、過度に自立していることがどんなところに悪影響を及ぼしてしまっているかを考えてみる。例えば、子どもを数時間だけ見ておいてとか、どこかに車で連れて行ってとか、お願いすれば助かるとわかっているのにどうしてもできずにいることはないか。
あるいは、同僚に頼めばすぐに手助けしてくれるのがわかっているのに、手こずっている仕事を一人で抱えていないか。
もう少し周りの人を頼りにできたら生きやすくなると思うことがはっきりしたら、一歩踏み出してみよう。ほんの少しずつでもいいので、頼めるように努力してみる。「安心して頼める人を見極め、少しだけ相手に心を開いてみる。その時に自分がどう感じるのかみてほしい」とフォーレンザ氏は言う。
その際に、知っておくと気が軽くなることをアウワー氏が紹介している。それは、ほとんどの人が大切に思っている人の助けになりたがっているということ。「誰かの助けになれていると感じるのは気分のいいもので、そうやってみんなお互いに健全な関係を築いている」
誰にでも助けが必要なときがある。人を頼りにし、お願いごとをするのは弱さではない。むしろその逆で、あなたを強いに人間にしてくれる。
ただ、他人を頼り過ぎることもまた危険をはらんでいる。極度の自立性の反対は極度の共依存。こちらもさまざまな弊害を引き起こしてしまうので注意が必要だ。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
『自立しすぎ』は心をむしばむ。仕事や人間関係に及ぼす悪影響と気が楽になるアドバイス