東京・上野の森美術館で開催中の「モネ 連作の情景」が、入場者数20万人を突破するなど盛況だ。睡蓮や積みわらを描いた代表作や日本初公開となる作品など約60点を並べ、モネの「連作」に光を当てている。「モネ100%」をうたう本展の見どころをまとめた。
展覧会名:モネ 連作の情景
会期:2023年10月20日〜2024年1月28日(12月31日と1月1日は休館)
会場:上野の森美術館(東京都台東区)
料金:(月〜金)一般2800円/大学・専門学校・高校生1600円/中学・小学生1000円(土日祝)一般3000円/大学・専門学校・高校生1800円/中学・小学生1200円
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
※2024年2月10日から、大阪中之島美術館(大阪市北区)に巡回予定
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10月20日に上野の森美術館で開幕した「モネ 連作の情景」が、12月4日に入場者数20万人を突破した。SNS上には「平日の昼だったのに激混み」など混雑ぶりを伝える投稿が見られ、会場内のグッズ売り場には行列ができる日も。昨今は展覧会の値上げが続き、本展のチケットも平日一般2800円と決して安くはないが、日本のモネ人気はいまだ衰えるところを知らないようだ。
国内外から60点以上のモネの代表作を集めた本展は、《睡蓮》や《積みわら》にみられる「連作」という手法がテーマ。ジヴェルニーの庭の睡蓮を描いた作品が約300点も存在するように、モネは季節や天候の移り変わりに応じて、同じモチーフを何度も執拗に描いたことで知られる。今回の展示は、画家の生涯をたどりつつ、そうした連作の意味に迫っていくものだ。
全5章からなる展示は、第1章「印象派以前のモネ」から始まる。1840年生まれのモネは、18歳までフランス北西部のル・アーヴルで過ごし、画家ブーダンから風景画を教わった。画家を志してパリに出ると、同世代のルノワールやシスレーらと親交を深め、サロン(官展)入選を目指して応募を繰り返す。
黒を基調にプライベートな室内を描いた《昼食》は初来日となる作品で、本展の目玉の一つだ。65年、66年と順調にサロン入選を果たしたモネだったが、その後は戸外で描いた意欲作が保守的な審査員から不評を買うなど、落選を重ねる。《昼食》もそうした落選作の一枚で、結果的にモネが新たな道へと踏み出す契機となったという。
自由な表現を受け入れないサロンを離れ、モネたちのグループは1874年に「第1回印象派展」を開く。第2章「印象派の画家、モネ」は、この時期に描かれた70~80年代の作品を紹介する。「筆触分割」などの技法によって戸外の明るい光を描いたモネは、なかでも水辺の風景を好んだ。水面に映る影の描写が美しい《ヴェトゥイユの教会》などは、いかにも印象派らしい一点と言えるかもしれない。
続く第3章「テーマへの集中」は、旅する画家としてのモネに注目。鉄道網の発達を背景にヨーロッパ各地へ足を運んだモネは、人影のない海岸や険しい岩場にイーゼルを立て、絶え間なく変化する海や空の様子をカンヴァスに描き留めた。今回、ノルマンディー地方エトルタの奇岩や、プールヴィルの断崖の絵が複数展示されており、あえて同じテーマを描くことで見え方の変化を追究する画家の関心が読み取れる。
そして第4章「連作の画家、モネ」で、いよいよ本格的に「連作」が登場する。秋の風物詩である「積みわら」を描くにあたり、モネは複数のカンヴァスを並べ、同時並行で制作を進めた。時とともに刻々と変化する表情を複数の絵に描き分け、一挙に展示するというモネ独自のスタイルがここに確立するのだ。
出品作である《積みわら、雪の効果》はこうした手法で描かれ、15点の連作として発表されたうちの一枚。一方、テムズ川に架かる「ウォータールー橋」の連作からは、もわっとした空気の質感まで伝わってくるかのようだ。ロンドン名物の霧をモチーフに光の複雑な様相を捉えようとした、画家の格闘の痕跡をうかがうことができる。
展示の最後を飾るのはもちろん睡蓮。第5章「『睡蓮』とジヴェルニーの庭」には、後半生を過ごしたジヴェルニーの自邸の庭で描かれた作品がいくつか並ぶ。幾重にも像が映り込む池の水面は色彩の変化に富み、「見えるがままに描く」というモネの試みの果てしなさを思わせる。晩年は視力の衰えとともに、筆致はより粗く、輪郭はより曖昧に。そのようにして生まれた色と光のぼんやりと広がる画面が、のちの抽象画家たちに大きな影響を与えたことはよく知られるところだ。
国内外40館以上からモネの作品だけを集めた「モネ100%」の本展は、2024年1月28日まで。2月からは大阪に巡回予定。
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モネ展「連作の情景」上野の森美術館で2024年1月28日まで。睡蓮など約60点で印象派の光にふれる【展覧会】