COP28、石炭火力だけでなく「すべての化石燃料からの脱却」へ。「大きな前進」だが重要なのは「文言ではなく行動」

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アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された、国連の「気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」が、12月13日に閉幕した。

パリ協定で合意した「産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を1.5℃に抑える目標」を達成するために、残された時間はわずかしかない。世界は果たして前進できたのか。

COP28に参加した2人の専門家に話を聞いた。

最終会議の開始を待つCOP28議長ら

「死亡診断書には署名しない」

COP28の会期は12日までの予定だった。しかし、化石燃料をめぐる合意文書の表現がまとまらず、1日延長していた。

最初の草案には「化石燃料の段階的な廃止」という文言が盛り込まれていたが、産油国などが反発。これを受け、「化石燃料の消費と生産を公正かつ秩序ある形で減らす」へと表現が変更され、「骨抜き」の内容になった。

この2回目の草案に対し、ツバルやモルディブなど気候危機の影響を強く受けるとされている国々でつくる小島嶼国同盟(AOSIS)が批判の声を上げた。

AOSISのセドリック・シュスター代表(サモア)は「死亡診断書には署名しない」と強く反発した。このほか、EUやアメリカからも脱化石燃料へ向け、表現を強めるよう求める声が出た。

サモア天然資源・環境大臣/小島嶼国同盟(AOSIS)代表のセドリック・シュスター氏

化石燃料をめぐっては、2021年にスコットランド・グラスゴーで開催されたCOP26での合意文書に「排出削減対策を講じていない石炭火力発電の段階的な削減」と明記された。翌年にエジプトで開かれたCOP27では、表現に大きな変化はなかった。

今回のCOP28では、「化石燃料の段階的な廃止」が明記されるかが焦点となっていた。最終的に合意された文書では、化石燃料について以下のような文言となった。

「エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を、公正で秩序ある衡平な方法で実現する。重要となるこの10年間に行動を加速させ、2050年までにネット・ゼロ(温暖化ガス排出実質ゼロ)を達成する」

COP28の様子

COP28に参加した国際NGO「WWFジャパン」の田中健さんは、期待されていた「すべての化石燃料の段階的廃止」から表現は弱められてしまったものの、COPの決定文書に「化石燃料からの脱却を加速させる」と盛り込まれたのは初めてだと指摘。「すべての化石燃料に言及したのは大きな前進だ」と評価する。

「今回の表現にとどまることなく、各国がすべての化石燃料からの脱却を可能な限り速やかに進めていくことに期待します」(田中さん)

同じくCOP28に参加していた、企業や自治体、NGOなどのネットワーク「気候変動イニシアティブ」共同代表の加藤茂夫さんも、「石油産油国のUAEが議長国となったCOP28でしたが、懸念を払拭する『エネルギーシステムにおいて化石燃料から転換していく』という合意がなされたことは大きな前進です」と評価した。

「しかし、最も重要なのは文言ではありません。世界中のコンセンサスとなっている1.5℃目標に向かって、各国政府や企業、自治体、市民が野心的なアクションを取ることです。すべての化石燃料からの脱却、すなわち脱炭素社会の構築を速やかに実行していくことが重要になります」(加藤さん)

再エネ容量3倍、エネルギー効率の改善率を2倍へ

また、今回の合意書では、「2030年までに再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍にし、エネルギー効率改善率を世界平均で2倍にする」ことが盛り込まれた。

田中さんは、IEA(国際エネルギー機関)が示した科学的知見に基づいた具体的な目標値が合意されたことに「希望が持てます」と話した。

「環境省が公表している調査結果によると、日本にはこの合意を実現するのに十分な再生可能エネルギーの導入ポテンシャルがあります。化石燃料の使用を延命する策に固執することなく、この合意を実現するために、再生可能エネルギーの導入を加速させていってほしいと思います」(田中さん)

日本政府に期待することは?

加藤さんはCOP28に参加し、様々なステークホルダーと対話する中で「決意を新たにした」という。

「気候変動対策に野心的に取り組む企業・金融・自治体・大学・NGOなど非政府アクターのネットワークである気候変動イニシアティブのメンバー798団体は、COP28の合意を基にパリ協定の1.5℃目標に向けてさらに行動を加速させていきます。自らの行動だけでなく、政府や社会への提言を強化し、日本でのカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます(加藤さん)」

また、日本政府に期待することについて、「COP28の合意にある2030年までに再エネの容量を3倍、エネルギー効率の改善率を2倍にする、化石燃料からの脱却という具体的な目標を後押しする政策の展開」だと加藤さんは話す。

「地球沸騰化を抑え、次世代のためによりよい社会を作り上げていくことが現代の我々の責任ではないでしょうか。それを実現できなければ、日本は国際社会から孤立し、国際競争力も失うことになりかねません」(加藤さん)

COP28では、パリ協定の進捗を評価する仕組み「グローバルストックテイク」も行われた。2025年には各国が2035年の排出削減目標を含む温暖化対策の包括的な目標を提出することになる。

田中さんは「日本政府が社会全体の声を広く聞き入れ、これから策定する2035年の削減目標が、先進国として求められるのに十分野心的なものとなり、さらにはそれを実現するために有効な政策が迅速に導入されていくことを期待しています」とコメントした。

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COP28、石炭火力だけでなく「すべての化石燃料からの脱却」へ。「大きな前進」だが重要なのは「文言ではなく行動」

Maya Nakata