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「女性だけ出産のタイムリミットがあるのがモヤモヤ…キャリアが考えづらい」「会議が多くてトイレに行けないから、ナプキンを変えられない」
サンリオピューロランドで11月23日、女性の健康にまつわる偏見などを乗り越え、オープンに語り合うイベント「Let’s talk!2023 in Sanrio Puroland」が開催された。
働く女性の本音と、そこから生まれた解決策のアイデアとは?
16社の悩める女性が考えた、わたしたちの“モヤモヤ”
「16社の悩める女性が考えた、わたしたちの“モヤモヤ”」をテーマに行われたトークセッションでは、女性の健康に関する悩みを語り合い、解決策を考えるプロジェクト「タブーを自由にラボ」に参加した3人が登壇した。
「タブーを自由にラボ」を率いるポーラの馬庭千晶さんはラボを始めたきっかけについて「フェムケアやフェムテックの事業を始めるにあたって個人のSNSで課題を問いかけてみたら、『上司に(自分の健康のことを)話しづらい』『婦人科のドアを叩くのが怖い』などの声が寄せられたんです」と説明した。
「(自分の健康の悩みについて)話せない、声に出せないことが一番のネックだなと思いました。まずは会話できる場所を増やして、その先で解決策を考えていきたいなと思い、『タブーに自由ラボ』を作りました」(馬庭さん)
ラボには食品会社から人材会社まで、業界を超えた16社から女性たちが集まり、「体の負担について話すことができない」「婦人科に行くのが怖いと思ってしまう」「疾患や更年期を軸にキャリアを考えるのが難しい」「出産のタイムリミットがあるのはなぜ」などの本音を語り合った。
フェムテックの市場拡大を目指すフェルマータの太田冴さんは、「働くことと女性の健康には、すごく密接な関係があると感じます」と話す。
「女性活躍推進と長らく言われていますが、キャリアを軸に話すことが多いんです。でも、本当にキャリアだけの問題なのか。女性自身の健康問題が深く関わっていることがもっと知られるべきだと思います」(太田さん)
更年期ロスという言葉もある。キャリアの面ではチャレンジをしたい、仕事のやりがいを感じて続けたいと思う女性がいる一方で、昇進の時期と更年期が重なり、「体調面で不安を感じていたり、症状を乗り越えながら仕事をするのが難しいと思って昇進を断ったり、退職するケースもあります」と太田さんは言う。
では、どうやって解決していけるのか。サンリオエンターテイメントで人事を担当する北村萌香さんは、ラボのグループワークを通して、企業の福利厚生の中でできる解決策のアイデアを発表した。
「課題は大きく2つあります。1つは意思決定層に男性が多いこと。もう1つは女性社員同士でも悩みをシェアすることが少ないので、自分自身の課題や悩みに気づけておらず、ニーズすら顕在化していないことです」(北村さん)
そこで発案したのが「Fem care benegit」というプロジェクト。まず社内でアンケートを取ったり、話をしやすい場を作ったりして、数字や言葉で悩みを表現することで、自分自身が悩んでいたことに気づいてもらう。そして男性社員や管理職の社員も巻き込みながらグループを作って理解促進をし、その中で出てきたアイデアをモニターに試してもらいながら福利厚生の形にしていくことを目指すという。
「福利厚生は制度として用意するだけではなく、使ってもらうことが大事。福利厚生を使うこと自体をタブーにしないようにするための一連のプロジェクトとして発案しました」(北村さん)
女性のがんについて話そう
今回のイベントでは、検診する時も罹患した時もなかなか周りに話しづらい「女性のがん」についても様々なトークが展開された。
関東中央病院産婦人科の稲葉可奈子さんは、「がん検診というと、『歳をとってから』というイメージの人も多いかもしれませんが、子宮頸がんの患者さんで一番多いのは、20代後半から40代なんです」と呼びかけた。
「よく、早期発見のために、どういう症状が出たら受けたらいいですか?と聞かれるのですが、子宮頸がんの特徴は、初期は何も症状がないことなんです。不正出血があるイメージがある人もいるかもしれませんが、子宮頸がんの症状として出血があったら、かなり進行してしまっている段階です。検診では発見できる時はそれよりもかなり前の段階なので、『私は元気だから大丈夫』じゃなくて、元気だからこそ検診を受けて欲しいです」
稲葉さんは、自治体や企業によって無料または低負担で検診が受けられることや、原因となるHPVウイルスを予防するワクチンを、小学校6年生から高校1年生相当の女子は無料で接種できることを説明。
「過去にHPVワクチン接種後にしびれや痛みが続いたりなどの症状の訴えがありましたが、国内外の研究の結果、HPVワクチンが原因で起きる症状ではないことが明らかになりました。安全で効果的なワクチンであることをきちんと伝えていきたい」と訴えた。
サンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さんは、乳がんのサバイバーとしての経験も踏まえて、「乳がんになる人は9人に1人からさらに増えていて、がんと言われることが本当に多い世の中です」と語った。
「がんの啓発活動をしていると、『かからないように』という言葉はよく聞きますが、かかった後どういう風に生きていけばいいかという話しが少ない気がしてきます。がんと言われたら、仕事はどうする?友人や家族との関係をどうする?という話を皆さんに聞いていただきたいと思っていました」
小巻さんは乳がんに罹った時、女性活躍を推進する社内ベンチャーで働いていた。真っ先に頭に浮かんだのは、子どもや親になんて伝えよう、ということだったという。
「1週間入院することになっていたので、仕事は淡々と業務を整理しました。『仕事に戻れなかったらどうしよう』と不安もありましたが、どうなるか分からないことは考えないようにしようと自分に言い聞かせていました」(小巻さん)
小巻さんは「経営者として、がんに限らず、介護や怪我をしたとか、色んなことで急に休まなければいけなくなったり、しばらく治療が必要という状況は誰にでも起こりうること。誰にとっても優しい職場であるために、話せる風土と、できるだけの制度は必要だと思います」と話した。
むらさき乳腺クリニック五反田院長の池田紫さんは、「がんを隠して仕事に復帰して、苦しんでいる人をたくさん見てきました」と話す。
「私のクリニックでは、『とにかくしがみついてでも(仕事の)ポジションを手放さないで』と伝えています。周りに申し訳ない、迷惑をかけてしまうという理由で仕事を辞めてしまう人もいるので、それは考えないでほしいなと思います」
ポーラ代表取締役の及川美紀さんは、「チームリーダーという仕事をするようになって十数年経ちますが、自分のチームの中で、がんに罹患した人がいなかったことはないです」と話す。
「弊社では、『ガンについて知ろう、学ぼう、サポートしよう』という3本柱の『がんフレンドリーアクション』を行っている他、検診の無償化や人事的なサポートも行っています。特にがんの経験者の方に体験談を話してもらうことで、学ぶ入り口になったり、上司には言えなくても相談できる人がいる環境作りをしています」
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「サンリオピューロランドで、女性の“タブー”を話そう」働く女性の健康とキャリアの本音とは