有機ELテレビでは、「焼き付き」という、画面内の同じ位置に残像が残り続ける現象が起こることがあります。TVやモニターの分析、レビューを行っている海外メディア「RTINGS」が、この焼き付きについて詳しく調査しました。
*Category:サイエンス Science *Source:Ars Technica ,SONY ,RTINGS com R&D
有機ELテレビにおける「焼き付き」問題
焼き付きにはいくつもの原因がありますが、ほとんどの場合は「バーンイン」と呼ばれる有機EL層の永久的な劣化ではなく、パネルの薄膜トランジスタ(TFT)層の変化によっておこります。このような一時的な不具合は、有機ELピクセルの発光量に熱が影響した結果であり、使用後数分で発生する可能性があります。しかし、テレビの電源を切って冷却すれば、たいていはすぐに直るものです。
しかしRTINGSによれば、TFTのしきい値電圧の変化で起こる焼き付きは「テレビの内部機能やダウンタイムに大きく左右される」とのこと。RTINGSは100台のテレビを対象とした耐久性テストを実施しており、有機ELテレビのTFT層の「特性」が時に「ドリフト」し、一時的な画像の固着を引き起こすことがあると説明しました。
RTINGSは「このような焼き付きが発生するのは、静止画素子を使用したオンタイム動作で1時間程度ですが、時間が経つにつれて焼き付きは蓄積される」と述べています。他の一時的な焼き付きと同様、これは有機ELテレビで見られる普通の現象です。この焼き付きは、テレビに搭載されている短い補正サイクルでクリアすることができます。
焼き付きを修正する「補正サイクル」
現在の有機ELテレビは、テレビの電源がオフの状態で一定の累積使用時間が経過すると、自動的にこの補正サイクルが実行されるように設定されています。メーカーによって、ピクセル・リフレッシュやスクリーン最適化など様々な名称で知られていますが、通常10分未満で終了し、「TFT層の電気特性の変化を検出して補正し、ベースライン状態に戻す」とRTINGSは述べています。
RTINGSは、2021年発売の42インチWOLEDテレビ、ソニーA90Kを使用して、一時的な焼き付きをクリアする短い補正サイクルを検証しました。A90Kは、RTINGSのロゴとカラフルな四角形の静止画をオーバーレイしたCNNストリームを120時間流すというテストを行った後、一時的な焼き付きが発生したと報告しています。RTINGSが行うテストは極端なものであり、通常のユーザーがテレビをここまで酷使することはまずないでしょう。下の画像を見ればわかるように、A90Kのビジュアルアーチファクトのほとんどは、1回の短い補正サイクルの実行で消えました。
次の画像も、短い補正サイクルがどれだけ効果的かを示しています。これは、ソニーの2021年A80J白色有機EL(WOLED)テレビで、画面の下部に50%のグレースライドがあります。8ヵ月後、RTINGSはこのテレビで補正サイクルを実行しましたが、その違いは顕著でした。
このように、有機ELテレビでは「焼き付き」が現れたようにみえても、永久的なものではなく、テレビの電源がオフのときに実行される補正で消えることが多くあります。しかしRTINGSは、サムスンやソニーといった大手メーカーのテレビでも、この「補正サイクル」が適切なタイミングで行われていなかったとも指摘しました。RTINGSはこれらの「バグ」の結果として、より焼き付き現象が顕著に見られている可能性があると指摘しています。
有機ELディスプレイの焼き付き問題は非常に複雑で、AppleのiPhoneシリーズでも発生している問題です。最近Appleは「iPhone 15」シリーズで発生している焼き付き問題について言及し、「iOS 17.1」で「バグを修正した」と述べました。
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有機ELテレビに残像がのこる「焼き付き現象」の意外な原因