「交差点」目指す育児は、仕事術から生まれた。バズりまくる夫妻に、育児ハックを聞いた。

SNSで何度も話題をさらってきた育児ハックをまとめた本「子育てブレスト」が発売された。著者は、プランナーの佐藤ねじさんとおもちゃ作家の佐藤蕗さんの夫妻。

泣き止まない0歳、何でもイヤイヤの1〜2歳から、親との会話が激減した小学校高学年…。子育て中の親たちは、悩みと葛藤の連続の中にある。

そんな時を乗り切ってきた佐藤家の12年間の知恵と工夫、アイデアが詰まっているのがこの本だ。

佐藤蕗(さとうふき)_おもちゃ作家 (@fuki_fuki) on X
これ‼️ イヤイヤ期にめちゃくちゃ効果があって、すんごい助かった!! あんなに着替えなかったのに、一瞬で着替えるからほんとに魔法みたいだったな〜。今でもたまにやっています☺️

「ブレスト」というビジネス分野の用語が使われているのは理由がある。佐藤ねじさんは、企業のPR企画などを制作するプランナーとしての発想法を、育児にも転用できるのではないかと考え、様々な「ハック」を生み出してきたのだという。

ただ、夫妻に話を聞くと「これは『不真面目な本』なので、育児書だとは紹介しないでほしい」と注意事項を告げられた。その心は…?

ーーブレストとはいいタイトルだなと思いました。

佐藤ねじ:親の「座らせたい」というA案、子どもは「立ちたい」というB案。そんな時に2択が正面衝突しても解決は難しいですよね。その時に、別のC案があると気持ちが楽になるよね…というのが根本思想です。抜け道もあるよというのが。

佐藤蕗:おもちゃで誘い出す、というC案を出せば、こちらも怒る体力をかけずにすみますしね。

佐藤ねじ / ブルーパドル (@sato_nezi) on X
あとこういう発想法もいろいろ紹介してます。 例)「ゴール設定を見直す」 保育園に行かないときは、ゴールを「保育園に行く」から「玄関から外に出る」に見直し。

ーーとはいえ、ついイラっとなって、C案が思いつかないことも度々あるのですよね…。

佐藤ねじ:2人で子どもに関わっていると、片方がカンカンになっている時に、別の方が違うやり方で救う…ということが、うちは結構ありますね。

僕が思う「いい仕事」は、交差点なんです。例えばクライアントの伝えたい情報と、そのターゲットの関心ごとの交差点を探すとよい企画案のゴールが探せる。子育てでは、子どものやりたいことと親にとって良いことの交差点を探すことがサステナブルな道なのではないかと思います。

佐藤蕗:子育ては、実態としては自分の時間を犠牲にしていると言える部分もあるのですが、「子どもにひざまづく」ような捉え方はしたくない。なるべくみんなが機嫌良くいられる交差点で、サステナブルな子育てをしたいと私も思っています。私にとっては、作ること自体が癒しでもあります。この困り事をネタにして何かを作って作品にしてみよう、ということで幸せを作り出していますね。

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うちの1歳児、お母さんが視界から消えるとすぐ泣いちゃうので、大変。 その対策として「等身大パネルの母」を設置するとどうなるか実験してみた。 (つづく)

ーー「しつけ」のために、多少は軋轢があるほうが良いのかなと思ってしまうこともあります。

佐藤蕗:「しつけ」は必要だと私も思います。

親が参ってしまわないように、ゲーム感覚で楽しく誘導して、その場を乗り切る時がある。一方で「しつけ」が必要な時もある。同時にはできないので、時期を分ける方法をうちではとっていましたね。

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「つまみぐいレストラン」 子の好き嫌いが多いときやった遊び。 「母ちゃんにバレないように、こっそり作り途中の料理を食べる作戦」を実行。 こどもはグフフと笑いを堪えながら、肉も野菜もアホほど食べてました。

ーー子どもが家の中でコーヒー屋さんを開店する「小1起業家」は、家庭での金融教育ということでも話題になりましたね。親に借金をして開業し、どうすれば黒字になるか考えるという。

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小1起業家など

佐藤ねじ:小学生になって、育児の困り事というよりは、学びが大きな課題になっていくのだなと、意識が変わった部分はあります。ロールプレイングゲームに参加するような経験を通して面白い学びになればと。ただ、あれはうちがやってる色々な「変なこと」の一つで、そういう風に言われるとは想像してなかったんですよね。

佐藤蕗:仕入れのためということで、子どもがいる時にコーヒー豆屋に立ち寄ってもOKになってよかった、とか、人に淹れてもらうコーヒーは美味しいなぁとか。学びのフリをして実は親のためだったりもして、やはり交差点だったからこそ、うまくいったのだと思います。

佐藤ねじ:実はマッサージ屋さんというプランもその前にあったんです。子どもに家でマッサージをしてもらえたら最高だなと…。でもそれは続きませんでした。それよりもコーヒーを淹れる瞬間の楽しさとか、売れたという喜び、世界のいろんな国の豆を集めてみるのが子どものコレクション欲を刺激するとか…コーヒーの方がうちの子には楽しかったみたいです。

だから人によっても違うし、その時に、その子が夢中になれるボールを投げなければいけないなと思いました。

佐藤蕗(さとうふき)_おもちゃ作家 (@fuki_fuki) on X
我が家の鉄板おもちゃ、お風呂シール。 このおもちゃを作った経緯などを書いた本ができましたー! 『子育てブレスト』 詳しくは引用RTご覧ください〜

ーー親も、子どもも、楽しめる「交差点」を見つけるということですね。

佐藤蕗:でも、「親も育児を楽しまなきゃいけない」っていう意味ではないので、それは気をつけて欲しいです。

ーーどういうことですか?

佐藤蕗:よく読んでみると、全部、ふざけているだけですから(笑)楽しそうにやっているように見えているのはありがたいことですが、現実は色々大変だし、うまくいかないことも多いですし、それなのに、育児している誰かを追い詰めるようなことは言いたくないと思っています。

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忍者@田園都市線

子どもを育てているだけで、親は100点です。「自分も楽しまなきゃいけない」なんてプレッシャーを感じてほしくはないです。

佐藤ねじ:あくまでも、「ゲームっぽくするといい感じで誤魔化せて、親が楽できるかも」という考え方の提案だったりします。必ず合うかどうかも人によりけり。子どもを育てるという大きなゴールに向かっていく中で、ミクロな部分に役立つかもしれない提案と思って手に取っていただけたらうれしいです。

プロフィール

佐藤ねじ
1982 年生まれ。プランナー/クリエイティブディレクター
面白法人カヤックを独立後、2016年ブルーパドルを設立。WEB・アプリ・商品やお店などの企画とデザインを行う。
主な仕事に「ボードゲームホテル」「隠れ節目祝いbyよなよなエール」「アルトタスカル」「不思議な宿」「佐久市リモート市役所」「小1起業家」「劣化するWEB」など。著書に『こどもの夢中を推したい 小中学生の遊び・学び・未来を考える7つの対談集』(freee出版)

佐藤蕗
建築設計事務所勤務を経て、第一子の出産を機にフリーランスに。育児をしながら作っていたおもちゃが反響を呼び、デザイナーやイラストレーターとしての活動のかたわら、造形作家として、雑誌や新聞、WEBなどで作品を発表している。2児の母。著書に『親子で笑顔になれる“魔法の手作りおもちゃ”レシピ』など。『おもちゃ大百科』シリーズ最新刊は『ふきさんのクイックおもちゃ大百科』(偕成社)。

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