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アウティングが労災認定。“初判断”に訴える「自殺を選ばせてしまう重みがある」と被災者

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労災認定について思いを語るAさん労災認定について思いを語るAさん

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同性愛者であることを上司から同僚に「アウティング」(本人の同意なく、セクシュアリティを暴露すること)され、東京都豊島区の保険代理店に勤務していた男性が精神疾患になった問題で、池袋労働基準監督署がパワーハラスメントとして労災認定していたことが分かった。認定は2022年3月18日付。

若者の労働問題などに取り組むNPO法人『POSSE』によると、アウティングの労災認定は、「報道レベルでは、日本で初めて」だという。

7月24日、東京都内で開かれた記者会見で、男性(以下、Aさん)は「アウティングは、された側に自殺という道を選ばせてしまうこともあります。その重みが広く伝わってほしい」と訴えた。

◆「一人ぐらい、いいでしょ」

「アウティング被害を受けた時、私は家の外に出ることもできなくなりました。自殺も考えました」

Aさんは会見で、こう振り返った。2019年に営業職で入社したAさんは、業務に必要な書類の緊急連絡先に「パートナーシップ制度」で認定された同性パートナーを登録したいと伝え、上司に自身の性的指向も打ち明けた。

同年夏、Aさんは隣の席のパート女性から突然、無視をされたり避けられたりするようになった。その後上司から、「自分から言うのが恥ずかしいと思ったから、俺が(女性に)言っといたんだよ。一人ぐらい、いいでしょ」と笑いながら言われた。

上司からはさらに暴言などのパワハラを受けたほか、「自分のことが他の社員にも広められているのでは」という恐怖が重なった。動悸や悪寒、不眠などの症状が出るようになり、精神疾患だと診断された。長期間の休職を余儀なくされ、2021年10月末に退職した。

同年4月には、国に労災申請した。「国が公的にアウティングと精神疾患発症の因果関係を認めれば、職場のアウティング被害をなくしていけるかもしれない」と考えたからだ。ネット署名にも取り組み、1万8675筆が集まった。

Aさんは今回の労災認定について「今回他の人に同じことが起きても、同じように補償を受けられる枠組みを作ることができてよかったです。各企業には、罰則のあるアウティング禁止規定を作ってほしいと思います」と話した。

◆アウティング、なくしていく動き

本人の了解を得ずにセクシュアリティを第三者に伝える「アウティング」は、当事者の生死に関わる深刻な問題だ。

2015年、一橋大法科大学院の男子学生が、同級生に同性愛であると暴露された後、転落死した。以来、大学のある国立市のほか、豊島区埼玉県など全国で、アウティングを禁止する条例が広がっている。

また『労働施策総合推進法』でも、アウティングはハラスメントに位置づけられ、事業主に防止が義務づけられている。

今回の労災認定の意義について、『POSSE』の佐藤学さんは「アウティングと精神疾患発症などの因果関係が労災として認定されたことで、今後、加害行為に対して謝罪や賠償、再発防止などの責任追及がされることになります」と指摘。「相談窓口の設置や教育が進んでいき、社会的にアウティングをなくしていくことにつながると考えています」と期待した。

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

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