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SUGIZOさんは痺れを切らした。「自分の好きなセンスで、でも環境にいい服」が出てこないことに【2023年上半期回顧】

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2023年上半期にハフポスト日本版で反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:1月5日)

「エッジィで、ロックで、それでいて地球を穢さない。そんなファッションを実現したい」

その思いを胸に、ミュージシャンのSUGIZOさんはロックなエシカルファッションブランド「THE ONENESS」を2022年2月に立ち上げた。

世界で2番目に環境を汚染していると言われるアパレル産業。他にも複雑なサプライチェーンの中で発生している人権問題や、毛皮製品などにおけるアニマルライツの問題など、多面的な課題を抱えている。

「僕らがおしゃれをする、カッコよく、可愛くなるためにこれ以上地球を穢すのは、未来の世代に対してすごく無責任なんじゃないか。今の僕らができることを全力でやらないと、食い止めないと、そして再生させないと、本当にまずいと思うんです。もう待った無しだと思うんです」(SUGIZOさん)

一方、サステナブルでエシカルなファッションを選びたいと思っても、自分好みの服がないと悩む人も多いのではないだろうか。SUGIZOさんは、「エシカルファッションの表現は、アースカラーや素朴なデザインだけじゃない」とこだわりを見せる。

SUGIZOさんがファッション業界に投げかける一石とは?

SUGIZOさんSUGIZOさん

待ちくたびれた、僕が作る

ーーSUGIZOさんは、なぜご自身でエシカルなファッションブランドを立ち上げようと思ったんですか?

SUGIZOさん:
遡れば15年ほど前から、ファッションの環境負荷に関心がありました。職業柄やっぱり服が好きですし、ステージ衣装としても必要なので、極力環境に負荷をかけない素材や、作り方の服を求めるようになっていきました。

そこで15年前、ヘンプ(麻)と当時珍しかったオーガニックコットンを合わせた生地を作って、グッズのTシャツにして販売したんですよ。

大失敗しました。高すぎて。まず布を一反作るのに200万円くらいかかって、一枚のTシャツが1万5千円くらいになってしまいました。すごく意識を共有できる人には手に持ってもらえたけれど、プロダクトとしては大失敗だったんです。

「もう懲り懲りだ!無理だ!」とヘコんで、「自分の好きなセンスで、でも環境にいい服が早く出てこないかな」とずっと待っていました。

それから十数年経っても、世の中はあまり変わらなかった。結局痺れを切らして、自分で始めることにしたんです。

ちょうど数年前からデザイナーの高栁さんとスタイリストのBun氏と、一過性のものではなく、もっと深いレベルでコラボをやりたいねと話していたところでした。僕の概念を高栁さんが形にしてくれて、「THE ONENESS」が立ち上がりました。

SUGIZOさんSUGIZOさん

魚の皮から作った“ロックな革小物”

ーー「THE ONENESS」では、ヘンプ(麻)素材のロングジャケットや、オーガニックコットンから作ったカーディガン、食肉用となった動物の廃棄されてしまう皮を使ったエコレザーのジャケットなど、素材にもこだわっています。デザイナーの高栁さんは、サステナブルでかつカッコいい素材を見つけるのは大変だったと言っていましたね。

SUGIZOさん:

最初、僕はヴィーガンレザーを使いたかったんです。ヴィーガンレザーは既に色々な種類が存在しています。近年だと、例えばバナナやりんごなどフルーツの皮にすごく可能性があると思っていました。

でも高栁さんが、「まだヴィーガンレザーではかっこいい服が作れない」とおっしゃるんですよ。質感的に、まだそこまでは進化してないと。

なので今は、妥協ではありますが動物の皮を使っています。でも食用で殺されて廃棄されてしまう動物の皮しか使わない「エコレザー」を選びました。

革製品でもう一つ重要なのは、なめし加工の際に出てしまう有害物質です。「THE ONENESS」が使っている革は、なめし加工に使う有害物質を3%以内まで抑えたものです。

「THE ONENESS」エコレザーを使用した製品「THE ONENESS」エコレザーを使用した製品

それから、最近やっと発表できたのが魚の皮、 フィッシュレザーのレザー製品です。

廃棄されてしまう魚の皮から革小物などの製品を作っている「tototo」という素敵なベンチャー企業とタッグを組みました。「THE ONENESS」では、鯛とブリとサーモンの革を使用したスマホケースを作りました。なめしもベジタブルタンニンでこだわっています。

ぱっと見スネークスキンに見えて、とてもロックに感じます。

フィッシュレザーを使った革小物フィッシュレザーを使った革小物

100%完璧じゃない時、SUGIZOさんならどうする?

ーーエシカルなことやサステナブルなことをしようと思っても、100%完璧にできないことに悩む人も多いと思います。SUGIZOさんはどう考えていますか?

SUGIZOさん:
「THE ONENESS」も、ものによっては100%の納得がいってないです。本当は動物を使いたくないとか、完全になめし加工の毒素を抑えたいとか。

例えば黒を表現するのに、多少化学薬品を使わなきゃいけない。完全に自分の理想を作ろうとすると、先に進まないんですよね。少なくとも自分が「かっこいい」と思うものができない。

なので僕のポリシーは、自分の理想の7割~8割をクリアしていれば、プロダクトとして進めることです。パーセンテージ的にネガティブよりもポジティブの方が大きかったら、どんどんやるべきだと思う。

他力本願な言い方ですけど、ネガティブな要素は必ず誰かが開発してくれると思うんです。だからそれを待つよりも進めた方がいい。ネガティブなところに目を向けるのではなく、ポジティブなところに目を向けて欲しいですね。

ファストファッション、どう思う?

ーー「THE ONENESS」のホームページでは、ファストファッションの労働問題や、地球や誰かを犠牲にしている安価な商品を無自覚に使用する現代社会のあり方そのものに言及しています。

SUGIZOさん:

本当は、大きなブランドが率先してエシカルな取り組みをもっとやって欲しいですよね。僕たちよりも機動力も財力も桁違いにあるわけですから。

僕はあまりファストファッションに賛同はできないけれど、時代に必要とされているものだと思うので、必要性はわかります。世の中、みんなお金を持っているわけじゃないですし、一見かっこいい服が安い値段で買えるのは魅力的ですよね。

でも同時に、やっぱりそれは地球を穢していたり、人権侵害といっていいレベルの劣悪な労働環境で働く人がいることを知るべきだと思います。知った上で選ぶなら、地球や生産者や労働者に感謝の気持ちを持たないといけない。

あとアパレル産業の大きな問題の一つは、廃棄物が多いということ。僕のポリシーの一つは、同じものを長く所有して使うことです。平気で20年前の服を着ていますよ。

一つのものを長く使うということは、とても大事なことだと思います。1年で着潰しちゃう服と、10年着られる服、値段が10倍でも経済的な意味は同じですよね。

多少値が張っても長く着られるものを選ぶのは、自分の精神衛生的にも、世の中的にも素敵なことだなって思います。

僕にとって服って、ステージ上では戦闘服であり、スポーツ選手のユニフォームのようなもの。僕らの存在を高めてくれる、そして精神的な充足、満足感をもたらしてくれるものです。

変な話、人ってかっこいい服がなくったって生きていけるじゃないですか。でも自分が満足、納得していかないと、心臓は動いているけど心は死んでいく。ファッションは、僕たちの「心」を生かしてくれる、とても重要なツールです。

だからこそ、心を満たしてくれるファッションを、これ以上地球を穢さない形で作っていきたいと思います。

****

「THE ONENESS」では、オーガニック素材にこだわった石鹸も販売している。使用後に排水に流れ出た石鹸カスが最終的に魚のエサになる製品だ。

「THE ONENESS」のオーガニック石鹸「THE ONENESS」のオーガニック石鹸

SUGIZOさんは、「僕らが身につけるもの、皮膚につけるもの、食べるもの、全てが同一線上に考えられるべきだと思う」と、プロダクトの広がりを見据える。

今世紀中盤、もしくは世紀末、地球は僕ら人間が生息できる環境でいてくれるだろうか。懸念はたくさんあります。そんな絶望的な状況だからこそ、これ以上落ちることはない、上がっていくばかりだと思えば、希望しかない。そう自分に言い聞かせて、微力ですが『THE ONENESS』のチームメンバーと一緒に、本気で服の世界を変えていきたいと思っています

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オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
SUGIZOさんは痺れを切らした。「自分の好きなセンスで、でも環境にいい服」が出てこないことに【2023年上半期回顧】

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