合わせて読みたい>>仕事も経済も回しながら“がっつり”休む。バカンス大国・フランス流の「働き方」は、日本のヒントになるか
岸田文雄首相は6月13日、首相官邸で記者会見を開き、同日に閣議決定した「こども未来戦略方針」の概要について説明した。
児童手当、出産、働く子育て世帯の収入増。いったいどのようなことが支援策として挙げられたのか。
若者や子育て世帯に関するポイントを整理した。
2030年代に入るまでがラストチャンス
岸田首相は冒頭、「少子化は我が国の社会経済全体に関わる問題であり、先送りできない“待ったなし”の課題であるという思いから、不退転の決意で取り組んできた」と話した。
その上で、「2022年の出生数は過去最少の77万人。今の50歳前後にあたる“第2次ベビーブーム世代”と比べて4割以下となった」と説明。
「若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」とした。
では、少子化傾向を反転させるための施策は何か。
岸田首相は、「経済成長の実現と少子化対策の強化の両輪を通じ、若者・子育て世代の所得を伸ばすことに全力を傾注していく」と語った。
児童手当、出産、働く子育て世帯の収入増
その少子化対策の強化に関する具体的な中身は次の通り。まずは、若い世代の所得を増やす対策に関してだ。
①児童手当
- 所得制限を撤廃
- 高校卒業まで支給期間を3年間延長
- 第3子以降は3万円に倍増
開始時期は2024年10月分から。
これにより、3人の子どもがいる家庭では、子どもが高校を卒業するまでの児童手当の総額が最大400万円増の1100万円となるという。
このほか、子どもが大学に進学した場合、高等教育の授業料減免の対象を年収600万円の多子世帯に拡充するとした。
②出産
- 出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げる
- 出産費用の保険適用などを進める
出産育児一時金の引き上げは2023年度から、出産費用の保険適用は2026年度からそれぞれ進める。
③働く子育て世帯の収入増
- “106万円の壁”への対策
- パートの雇用保険適用を拡大
いわゆる“106万円の壁”とは、年収が106万円超となった場合、社会保険料の負担が増して手取り収入が逆転する問題のこと。
この問題が起きないように、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージを2023年中に決定し、実行に移すとした。
また、パート(週20時間未満)の雇用保険適用を拡大し、育児休業給付が受け取れるようにすることや、子育て世帯が優先的に入居できる住宅を今後10年で計30万戸用意することも明言した。
男性の育休取得も当たり前に
社会全体の構造や意識を変えることも大きな柱の一つだ。
岸田首相は、育児休暇の取得率目標を大幅に引き上げ、「2030年には85%の男性が育休を取得することを目標とし、育休を取ることが当たり前になるようにする」と発言した。
そのために、3歳〜小学校就学前までの「親と子のための選べる働き方制度」を創設して、時短勤務やテレワーク、フレックス勤務など柔軟な働き方を選べるようにするとした。
また、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を、男女ともに手取り10割相当に引き上げることも掲げた。
「こども誰でも通園制度」保育士の配置基準
「親の就業形態に関わらず、どのような家庭状況にあっても分け隔てなくライフステージに沿って切れ目なく支援を行うことが必要」という認識も示した。
これまでの保育所のコンセプトを変え、働いているかどうかを問わず、時間単位で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」を創設するという。
同制度については、「速やかに全国的な制度とすべく、来年度から制度の取り組みを始めたい」と強調した。
このほか、75年ぶりに保育士の配置基準を改善し、保育士1人で見る1歳児を6人から5人にするほか、保育士の処遇改善にも取り組むとしている。
スピード感を重視する観点から、高等教育の支援拡充、貧困、虐待防止、障害児、医療的ケア児に関する支援策は前倒しで実施すると語った。
財源はどこから?
このような少子化対策の予算規模は3兆円半ばになり、子ども1人あたりの家族関係支出は、OECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデンに達する水準になるという。
岸田首相は財源確保に関して、既存予算を最大限活用するほか、「若者・子育て世代の所得を減らすことがないよう、言わばアクセルとブレーキを同時に踏むことがないよう、徹底した歳出改革によって確保する」とした。
そして、「実質的に追加負担を生じさせないことを目指すとの方針は揺るぎないものである。経済成長と少子化対策を車の両輪として、スピード感を持って実行していく」と明言した。
6月13日に開かれた岸田首相の会見の全文は、首相官邸ホームページで確認できる。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
児童手当の所得制限は?出産の保険適用はいつから?岸田首相「こども未来戦略方針」のポイント【会見】