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結婚の平等(いわゆる同性婚)の実現を目指す公益社団法人「Marriage For All Japan ―結婚の自由をすべての人に」(マリフォー)が3月15日、LGBTQ当事者や専門家らの意見をもとに作成した「婚姻平等マリフォー法案」を発表した。
異性カップルが現在利用している結婚制度を、同性カップルもそのまま使えるようにするため、民法を改正する法律案となっている。法律上の性別が同じふたりの結婚が認められていないことについて、2つの地裁が「違憲」と判断したが、法制化に向けた具体的な議論はいまだにされていない。
同日東京都内で開かれた会見で、寺原真希子共同代表は「現在の法律の単語を置き換えることで、婚姻の平等は実現できます。この法案を踏まえ、速やかに法制化を議論してほしい」と訴えた。
◆マリフォーの婚姻平等法案、どんな内容?
マリフォーが提案したのは、「現在の法制度をそのまま利用できること」を念頭においた最小限の改正案。法案の主なポイントは、以下の3つとなっている。
1. ふたりの性別にかかわらず、結婚できることを明記
婚姻の届出に関する民法第739条に、ふたりの性別にかかわらず結婚できることを加筆する。
現行法:婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
→ 改正案:婚姻は、「性別のいかんを問わず、二人の当事者が、」戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2. 性別にかかわる言葉などの置き換え
現行法では、法律上の男女の結婚が前提となっているため、性別を明示する言葉などを置き換える。
(置き換えの例)
夫婦 → 婚姻の当事者
夫若しくは妻 → 婚姻の当事者の一方
父、母 → 親
3. 養子縁組をした同性カップルの特例を制定
現在同性カップルは結婚ができないため、代替手段として、養子縁組制度で法的な関係を結ぶ当事者もいる。だが現行の民法では、一度でも養親子関係になったカップルは結婚することができない。そのため、養子縁組をしたことのある同性カップルであっても、この法律の施行日から2年間は結婚できるよう、以下の特例を設ける。
追加する特例:同性の当事者であってこの法律の施行前に当該当事者間で養子縁組をし、その後離縁をしたもの(この法律の施行前後を問わない。)は、民法第七百三十六条の規定にかかわらず、施行日から二年以内に限り、婚姻をすることができる。
野党案との違いは?
立憲民主党が3月6日、選択的夫婦別姓法案の成立などを前提とした独自の「婚姻平等法案」を衆議院に提出。異性・同性を問わず、結婚をしている片方の人が出産した場合に、生まれた子どもはもう一人との間の子と推定する「嫡出推定」が、マリフォー法案では有効だが、野党案では結婚した同性カップルのどちらかが出産しても嫡出推定がはたらかない、といった違いがある。
◆「丁寧な議論が必要」ならば、具体的に
現在行われている「結婚の自由をすべての人に」訴訟では、法律上の性別が同じふたりの結婚を認めていないことについて、現在30人を超えるLGBTQ+当事者の原告が憲法違反だとして、全国6つの地裁・高裁で、国を相手に裁判を起こしている。
これまで札幌地裁は2021年3月に「憲法14条違反」、大阪地裁は2022年6月に「合憲」、東京地裁は2022年11月に「憲法24条2項に違反する状態」と判断した。報道各社の最新の世論調査でも「同性婚」への賛成は6〜7割で、反対を上回っている。
社会の理解が進む一方で、寺原共同代表は「これまで具体的な法案の審議も、検討すらもされてこなかったという現状があります」と指摘。その上で、岸田首相が2月28日の衆院予算委員会で「丁寧な議論が必要だ」と述べたことについて、「我々としては一歩踏み込んだ表現をされたのかなと理解しています。今回の法案をもとに、ぜひ具体的な議論に入っていただきたい」と訴えた。
<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>
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現行法の「夫婦」を「婚姻の当事者」に。同性婚実現に向け、弁護士らが“婚姻平等マリフォー法案”発表