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「LGBT理解増進法案」、いわゆる「LGBT法案」について、自民党が検討を再開しようとしている。
首相元秘書官によるLGBTQなど性的マイノリティ当事者に対する差別発言が発端だ。岸田文雄首相は「言語両断の発言」とし、元秘書官を更迭。その後、2021年から棚ざらしになっている理解増進法案の検討を進めるよう自民党に指示した。
しかし、当事者からは「理解増進」ではなく「差別禁止」を求める声が上がっている。当事者らでつくる団体は2月14日、実効性があり人権が守られる法整備を訴え、参議院議員会館で集会を開いた。オンラインと合わせて約500人が参加した。
なぜ「理解増進」ではなく「差別禁止」なのか。集会では、性的マイノリティ当事者らがその理由や、性のあり方を理由に経験した生きづらさを語った。
主催者の1人、浅沼智也さんは、トランスジェンダーであることを理由にハラスメントや入社拒否を受けた経験がある。性暴力の被害者を支援する電話相談で、対応を拒否されたこともあるという。
「どのようなセクシュアリティであっても差別されることのない、生きやすい社会になる法律を求めます」「必要なのは理解を深めるのではなく、差別がない社会を構築することです」と話した。
岡田実穂さんは、10年来の同性パートナーをがんで亡くしている。病気が分かった当時、二人が法的な家族ではないため万が一の時の連絡が岡田さんに来ない可能性があることを病院側に告げられた。
「最後に会うことが叶わないかもしれない」。そんな不安とも戦わなければならない闘病生活だった。
「以前、同性婚に関する院内集会で、私のパートナーは『これは命の問題』『早くしてくれ、私の命が終わる前に』と言いました。もう死んでしまったから、私には遅い気すらします」
「でも、残せるものは残したい。一人でも多くの人に希望を持たせられるように、法制度をこの国で作ってください」と語った。
差別禁止法を含めた法整備を求める署名が始まっており、15日現在、5万筆以上が集まっている。「法律が変わることで救える命がたくさんあると思う」「一番理解をしておかなくてはならない政治家がヘイトスピーチをしているのに、理解増進なんてあまりにも生ぬるい」など、賛同者の声が集会で紹介された。
集会には、性的マイノリティの人権に関わる法整備を支持する国会議員らも参加した。
吉良佳子参院議員(共産)は、岸田首相が国会で結婚の平等、いわゆる「同性婚」の法制化について「社会が変わってしまう」と答弁したことに対し、「(同性カップルは)すでにこの世界に、そして日本に存在している」「家族として普通に暮らしていて、それを認めない法律の方が明らかに間違っている」と批判した。
超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」で事務局長をつとめる谷合正明参院議員(公明)は「理解増進自体は否定しない」とした上で、「永田町の理屈で法整備をするのではなくて、国民や当事者、アライの方々が求めている(法案の)中身を実現していくのが大事だと思っています」と話した。
主催者の浅沼さんは国会議員らの声を受けて「差別禁止は不要じゃないかと思っている議員たちにも伝わってほしい」「自民党にも語りかけなければならない」と話した。
「セクシュアリティを公表すると差別を受ける当事者がいる。差別を受けた結果、社会的な死であったり、自死を選ぶことも少なくないという現状も把握してほしいと思います」
集会では参加団体による声明も採択された。「実効性のある立法を契機としなければ、人権侵害によって望まない生活を強いられている当事者の状況を変えることはできない」などと訴えている。声明は後日、岸田首相と衆参両議院の議長らに送られる予定だ。
LGBT理解増進法案とは、性的指向と性自認の多様性に関する社会の理解を深めることを目的とする法案。2021年5月に超党派の「LGBT議連」が合意した。
元々野党が「差別解消法案」を提出し、自民党も特命委員会が「理解増進法案」の要綱を了承していたが、与野党での一本化協議をした結果、法案には「差別は許されない」の文言が入った。
しかし、自民保守派の反発によりその後議論は紛糾。自民党内の会合では差別発言もあった。法案はいったん了承されたが「総務会預かり」となり、国会への提出は断念。その後2年近く議論が進まなかった。
岸田首相が2023年2月に法案の検討を指示した後も、西田昌司政調会長代理や高市早苗経済安保相らは「社会分断させてしまう」「文言に調整が必要」などと、自民党内からは慎重な声も上がる。
G7で性的マイノリティに関する差別禁止法や同性カップルの法的保障がないのは日本だけ。今年5月には岸田首相の地元・広島でG7サミットが開催される。
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LGBT法案、「理解増進」ではなく「差別禁止」を当事者たちが求める理由