オープンソースの「Stable Diffusion」登場により一気に普及し、誰でも使える技術となった画像生成AI。しかしその一方で、氾濫するAI製の画像はネット上に大きな混乱をもたらしているようです。
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*Category:テクノロジー Technology *Source:Ars Technica,The Verge(1),(2),waxy
便利すぎた「画像生成AI」の落とし穴
画像生成AIは、ユーザーが文章(プロンプト)を入力するだけで、内容に沿ったイラストを作ってくれる画期的な技術です。AIは無数のデータセットから学習しており、プロンプトをうまく使えば、人間の芸術作品を模倣することさえできるといわれています。
しかし、どんなに綺麗なイラストでも、AIが生成画像した画像は、ネット上では「嫌われ者」として扱われることが多くあります。これはイラスト投稿サイトでも同様で、世界的な大手イラスト投稿サイト「Newgrounds」「Inkblot Art」「Fur Affinity」などは、画像生成AIで作成した作品を禁止または抑制するようになりました。
世界有数のストックフォトサービスの1つである「Getty Images」も、DALL-E、Midjourney、Stable DiffusionなどのAIアートツールを使用して生成されたイラストのアップロードと販売を禁止しました。
また、同じく大手ストックフォトサービスの「Shutterstock」も今後、サードパーティのAIで作成された画像を禁止する予定です。ただし、独自の画像生成AIによる画像だけを提供するという新しい取り組みを行うとのこと。
このようにAI生成画像が嫌われ、排除される理由は大まかに分けて2つあります。1つは、著作権の問題です。
「Getty Images」のCEOであるクレイグ・ピータース氏はAIが生成したコンテンツが著作権を侵害するのではないかという懸念と、同サイトの顧客を保護したいという思いから、AI生成画像の禁止措置をとったとのこと。
AIは、著作権のある個人のアートブログや、Getty Imagesのようなストックフォトサイトなどからアートを学習していることがあります。今のところこの技術は「合法」とされていますが、今後なんらかの問題が発生する可能性もあります。
「Shutterstock」がサードパーティのAI生成画像を禁止する理由も「コンテンツの作成に使われたモデルを検証できないため、誰が著作権を所有しているのかがわからないから」としています。
ただしこの著作権の問題は、学習元が分かれば解決できる問題です。実際「Shutterstock」は、画像生成AIを開発するOpenAIと共同で、今後数ヶ月のうちにAIアートツール「DALL-E 2」を同社サービスに統合することを明らかにしました。
もう1つの問題は「AI生成画像は大量作成が容易すぎる」という点。特にこの問題に悩まされているのがイラスト投稿サイトで、海外大手サイトは「人間が作成したコンテンツが圧倒されてしまう」という理由から、AI生成画像を規制しています。
テック系ブログ「WAXY」の著者であるアンディ・バイオ氏は「強力なGPUがあれば、寝ている間にでも1時間に何千枚もの画像を生成することができる」と述べ、「AIアートを許可するか、分離するか、完全に禁止するかを決めなければならない」と指摘しています。
しかし「禁止」としたところで課題となるのは「AI画像をどのようにして見分けるか」です。「Getty Images」は今のところ、ユーザーがそのような画像を特定し、報告することに依存しています。C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)と協力してフィルターも作成しているとのことですが、完全に信頼できるわけではないため、完全に禁止することは難しいかもしれません。
画像生成AIが便利なものであることには間違いありませんが、それで人間のアート・コミュニティが荒らされてしまったら元も子もありません。画像生成に限らず、このような創作性のあるAIと人間がどのように共存していくかは、今後も大きな課題となるでしょう。
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AI生成画像が「ネットで嫌われる」2つの根本的理由