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大学教員1人が少人数の学生を指導する形式の授業「ゼミナール」(ゼミ)に所属する学生を選考するにあたり、男性教員が非公式に女子学生を優遇し、男子学生に不利な対応をとることを説明するメールや音声データがSNS上に投稿され、物議を醸している。
一般的に、性別に基づく格差を是正する目的で大学での入試や教員採用などで「女性枠」を設ける場合には、その方針を募集要項などに明記し、志願者が了解した上で応募できるようにしている。今回の例は男子学生に不利になる方針が明文化されていない上、男性教員の独断だったとみられることから、ネット上では批判の声が上がっている。
男性教員が女子学生を優遇している理由は音声などからは明らかになっていないが、教員本人は「(公になれば)問題になる」対応だと自覚している趣旨の発言をしている。教員が所属するとみられる大学も、事実確認を進めているという。
「公式には言えないよ。言ったら問題になるから」
「ゼミの問い合わせメールをしたら女子だと勘違いされて教授からこんな返信来たけど実際に会って話を聞いたらやばすぎた…うちの大学の教授ってこんななのか…」
11月21日、Twitter上にそんなコメントとともに投稿されたのは、1通のメールのスクリーンショットと2つの音声データのファイル。
「聖奈」さんという名前の男子学生が男性教員から受け取ったとみられるメールでは冒頭、「女子学生さんですよね?たまに女子みたいな男子もいますので、念のため」と確認した上で、「男子には内緒ですが、女子は基本的には応募=採用です」と採用の裏側を明かす説明が記載されていた。
さらに、「サンドイッチにコーヒーでも飲みながら、お話ししましょう」と記されていた。
あわせて投稿された音声データには、メールのやり取りの後に面談しているとみられる男子学生と男性教員の会話が録音されていた。
男子学生は冒頭、ゼミの募集要項には定員について「男女問わず4人」と記されているにもかかわらず、メールでは女子学生を優遇する趣旨の説明があったことを指摘。
すると、男性教員は「それは君が女だと思ったから(メールに)書けたんだよ」と前置きした上で、「それ(女子学生の優遇)は、公式には言えないよ。言ったら問題になるから。だけど、僕の腹づもりでは、あなたが女だと思ったから、あなたが女だったら、優先的に採るつもりだよと。それだけだよ。それがあなたが男だから、それは効かないと」と発言した。
会話の中で、男性教員は「公式に私がゼミの案内に(女子学生を優遇する方針を)出したら、それは、他の人からクレーム来る。学部長から『君、これはダメだね』って言われる」との認識を示した。
その上で、「最後は、決める人(採用者)が権限持ってるわけでさ。しのごの言われる筋合いじゃないのよ。(中略)機会は与える。結果の平等はないよ、それは。結果は、採る側が色々な都合を考えて決めるからね」と自論を展開した。
ゼミの問い合わせメールをしたら女子だと勘違いされて教授からこんな返信来たけど実際に会って話を聞いたらやばすぎた…
うちの大学の教授ってこんななのか… pic.twitter.com/lnaVXkw6Qf— せな (@SENA032040) November 21, 2022
男子学生「ゼミに参加する意欲失う」
ハフポスト日本版は、Twitter上にメールの文面や音声データを投稿した男子学生に、詳しい経緯を尋ねた。
男子学生は現在、大学2年生。大学ではゼミへの所属は任意だが、参加するための選考が10月から始まることを踏まえ、「直接話を伺いたい」と男性教員にメールを出したという。
返信には、女子学生を優遇する趣旨の説明とともに「サンドイッチにコーヒーでも飲みながら、お話ししましょう」との提案があった。男子学生は11月21日正午から30分程度、男性教員と面談したという。
男性教員は面談の際、名前の印象から女性だと思い込んでいた学生が男性だとわかり「最初から明らかに不機嫌そうだった」という。
男子学生は「(男性教員との)会話中、正直怒りを抑えることに精一杯でした」と振り返る。男性教員のゼミについては当初、「月に1度、ゼミのメンバーでスポーツをするなど、ゼミ内の課外活動が盛んな点に惹かれた」というものの、「メールを受け取り、(学生の採用の実態に)がっかりした」。
さらに「正直なところ、今回の件で(大学としては加入が任意の)ゼミに参加する意欲がなくなりました」とコメントした。
帝京大学が事実確認中
Twitter上では、音声データで言及されていた情報などから「(男子学生に対応したのは)帝京大学の教授では」との声が上がっている。男子学生本人もハフポスト日本版の取材に、教員が同大学の教授であることを認めている。
ハフポスト日本版が帝京大学に取材したところ、広報担当者は「Twitter上での騒動は把握している。今朝、(関与が疑われる)教員本人に対して急いで事実確認をしている。詳細が判明し次第、対応などを発表したい」と述べた。
帝京大学では、「職員が教育・研究上の権力を乱用し、学生に対して不適切な言動を行うことにより、その者に対して修学・教育・研究に差し支えるような精神的・身体的損害を与えること、あるいはその修学・教育・研究上の不利益を与えること、あるいはその修学・教育・研究に差し支えるような精神的・身体的的損害を与えること、または教育環境や研究環境を著しく悪化させること」を「アカデミックハラスメント」と定義。その上で、「学生の向上心を妨げることのない教育環境を確保します」としている。
◇ ◇ ◇
学生が録音した音声データに収録されたやり取りの全容は、以下の通り。
男子学生「もし、その、(ゼミ生募集について、ホームページに)『男女問わず4人』って書いてあったけど、そのメールの文章で、『女子の応募=採用』って書いてあったから」
男性教員「いやーそれは君が女だと思ったから書けたんだよ、送っただけだよ」
男子学生「いや、だからもし、自分は男ですから、女子が優先的に採用されるのであれば」
男性教員「だからそれは、公式には言えないよ。言ったら問題になるから。だけど、僕の腹づもりでは、あなたが女だと思ったから、あなたが女だったら、優先的に採るつもりだよと。それだけだよ。それがあなたが男だから、それは効かないと。そういうことだよ。それは公式には言えないからね。私的なやり取りだから、言っとくけどね」
男子学生「わかりました」
男性教員「ごめんね。ごめんけど。それは、僕の腹の中の話。それを、誰に聞いてもみんなそうよ」(次の録音ファイルへ)
男性教員「そういうことなんだよね。それは、あなたのことを女だと誤認したのは僕のミスだけど、それはしょうがないよ。あんな名前なんだからさ。普通は女性だと思いますね。
男子学生「よく勘違いされますね」
男性教員「だからさ。それは申し訳ないけど、私はミス、うっかりしましたけど。そういうことなんだよ。あの、あのメールのことは忘れてください。それは私的な会話だと思ってください。公式には出せませんよ」
男子学生「私的な。はい」
男性教員「公式に私がゼミの案内に出したら、それは、他の人からクレーム来る。学部長から『君、これはダメだね』って言われるよ多分。だから、わかったな、腹の中でどう思ってるかは自由なんだよ。実際に決める、決めないは僕の権限だけど、表立って門戸を閉ざすことはダメなんだよ。女だけとか、男だけってのは、これはまずいわけだよ。だから、企業もやってないだろう? だけど実際は、採用した結果どうなるかっていうと、やっぱり色々あるわけよ。男が多かったり、女が(不明)だったりするでしょ。そうでしょ」
男子学生「はい。そうですよね。いや、それが気になって」
男性教員「(不明)採用って男も来るんだぜ、でも通るのは美人の女だったりするわけでしょ。そうするときに、いや女は採りませんとは書いてない。ブラック(黒人)とホワイト(白人)がいて、いやホワイトは採りませんとは書いてない、アメリカではね。カラー(人種)の問題は書けない。でも、実際にはホワイトが採られる、ことが多いとかね。いや、違う私はブルー、ああ、ブラックがいいって人とかいるけどね。気にしない人もいるけど、気にする人もやっぱり。それは、最終的には採る側の権利、権限なわけよ。色んなものを見て判断した上で、やっぱりこのホワイトがいい、私は黒がいいって決めるんだもの、おんなじことよ。採用ってそういうことなのよ。最後は、決める人が権限持ってるわけでさ。その、しのごの言われる筋合いじゃないのよ。ただ、入り口のとこでね、門前払いはできません。今うるさいからね、そういうのできないんです。イクオール・フッティング(Equal Footing)、条件は平等に与えたと。機会は与える。結果の平等はないよ、それは。結果は、その、採る側が色々な都合を考えて決めるからね」
男子学生「ああ、建前上は」
男性教員「建前っていうか、機会を与えると。機会を与えるのと権利を与えるのって違うからね。チャレンジする権利」(録音終了)
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男性の大学教員、ゼミの選考で男子学生を不利に扱う説明「女子は基本的には応募=採用」「公式には言えない」