通学かばんや水着など学校用品を製造販売するフットマーク株式会社（東京都墨田区）は11月1日、ランドセルの重さに関する調査結果を発表した。
調査によると、子どもたちが勉強道具などを入れた上で背負うランドセルの平均重量は、昨年から0.3キロ増加。9割以上の小学生が「ランドセルが重い」と感じていると回答した。そのうち3人に1人が通学を嫌がり、3.5人が身体の痛みを訴えたことがあるという。ランドセルの重量化は、身体に合わないランドセルで通学することで心身に不調が出る「ランドセル症候群」や「通学ブルー」に拍車をかけていることが浮き彫りになった。
ランドセルの重さが児童に及ぼす影響を研究する大正大学の白土健教授は、背景には学校に教科書やノートなどを置いておく「置き勉」の禁止や、コロナ禍での水筒持参の推進などがあると指摘。「現在は過渡期ですので、ランドセルの中身の重さ問題には、各人での工夫が必要になってきます」と話す。
調査は小学1～3年生と保護者1200組を対象に、10月にインターネットで実施した。調査結果によると、中身が入った状態でのランドセルの重さの平均は、昨年の3.97キロから、4.28キロに増加。
白土教授は、「ICT教育推進が推進され、電子端末の支給がはじまったことに伴い、教科書とタブレットの併用で重さが増したと考えられます」と指摘。「コロナ禍の影響から水筒の持参、衛生観念の徹底により、習字道具や上履きなど副教材も持ち帰りが必要とされる実態もあります」と話す。
また「置き勉」が禁止されていることなどが背景にあると指摘。 文部科学省は2018年度、「児童生徒の携行品の重さや量について改めて検討し、必要に応じ適切な配慮を講じるようお願いする」と全国の教育委員会などに事務連絡を出している。ただ、今回の調査では、未だに4割の小学生が「置き勉」を禁止されている実態が明るみになった。
文科省は、児童生徒の荷物量を減らすための工夫の例として、
▽その日の家庭学習で使用する予定のない教材を机の中などに置いて帰ることを認める
▽同じ日の授業で多くの学習用具を用いる場合は、予め数日に分けて持ってくるよう指導する
▽盗難防止等の観点から、放課後は（教室を）施錠する
▽置いて帰ってもいい教材をリストにして児童生徒に配布する
といった取り組みを周知している。
調査では小学生の93.2%が、「ランドセルが重い」と回答。そのうち3人に1人が通学を嫌がった経験が、3.5人に1人は通学時に肩や腰、背中など身体の痛みを訴えたことがあるといい、ランドセルの重量化は「通学ブルー」に拍車をかけている側面があるという。
また学年があがるにつれ、荷物が重くなる傾向があることも分かり、64.5％の親子が「身体に負担の少ないカバンがあるなら買い替えを検討したい」と回答。近年は、軽量なナイロン製やポリエステル製のランドセルも知られるようになってきたが、今回の調査ではその認知の割合は41.8%だった。
白土教授は「ランドセルは高価だけれども長持ちというイメージでしたが、最近は革製以外の背負い式バッグも軽量でファッショナブル、丈夫で手頃な価格のものも増えています。デザイン、カラーの多様化により、同調圧力の解放が広がっている傾向にあると思います」としている。
調査を行ったフットマークも、重さを感じにくい構造にしたランドセルを製造販売しているが、「体に負担が少なくても、他の人と違うものを使うのはハードルがある」との声を聞く機会が多いという。担当者はハフポスト日本版の取材に対し、「従来のものとの差を感じさせないことも大切にしつつ、選択肢の多様化や重さなど、時代に合わせたかばんを今後も作っていきたい」とコメントしている。
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「置き勉」禁止、4割超…重くなる小学生のランドセル、「通学ブルー」に拍車。国の方針、浸透せず