ビジネスは「儲け」のためだけ?「インパクトスタートアップ協会」が目指すもの。

「創業当時、『ビジネスは儲けのためにあるんだ。社会課題を解決したいならNPOやボランティアで』と言われました。10年経ち、儲けだけでなく社会的なインパクトも含めて会社の価値を評価する時代になってきている。今は、過渡期にあります」(READYFOR・米良はるかさん)

READYFORのCEO米良はるかさん

「社会課題の解決」と「持続可能な成長」の両立を目指すスタートアップ企業が集まった「インパクトスタートアップ協会」(ISA)の設立総会が10月14日、開かれた。

幹事社となったのは、ユニファ、ライフイズテック、READYFOR、ヘラルボニー、五常・アンド・カンパニーの5社。設立時点で他に18社が名を連ねている。

世界では、インパクトスタートアップは急成長分野として注目されている。

協会によると、「ユニコーン」と呼ばれる企業価値10億ドル以上の非上場ベンチャー企業の中でも、社会にインパクトを生み出すことを目指す会社の存在感は増している。

「インパクト・ユニコーン」は世界で179社、そのうち40%以上はこの1年間に「ユニコーン」となった企業だ。

環境や社会に貢献するインパクト企業であることを示す国際的な認証制度「B Corp」を取得している企業も、世界各国で5000社以上に増加。しかし、日本の取得企業はまだ15社だ。

国内でインパクト企業とインパクト投資を手がけるファンドの両方がまだ少ないことに加えて、「『オールバーズ』『ビヨンド・ミート』のようにパッと出てくる大成功の事例が、国内にまだない」ことも課題と、ユニファCFO、星直人さんは語る。

そこで、ノウハウの共有や、政策形成、勉強会などを進めて、企業同士が支え合いながら、各社の事業を大きく育てたり、金融機関やVCなど投資側を含む参入プレイヤーを拡大していけるようにと、この協会が設立された。

インパクトスタートアップ協会設立記者会見での記念撮影。前列左からユニファCFOの星直人さん、READYFORのCEO米良はるかさん、ライフイズテックCEOの水野雄介さん。後列左から平将明衆院議員、平井卓也衆院議員、ヘラルボニー副社長の松田文登さん、今枝宗一郎衆院議員

発起人となったREADYFORのCEO米良はるかさんは、以下のように協会の展望を語った。

2011年、READYFORの事業スタート前、投資家に「クラウドファンディングで社会課題を解決したい」と訴えたら、「ビジネスは儲けのためにある。社会課題を解決したいならビジネスではなくNPOやボランティアで」と言われました。

なぜ二者択一なのか。不思議に思いながら、この10年間やってきました。

10年経った今、あの時の私のように、社会課題の解決とビジネスを両立したいという起業家や若者が本当に増えてきていると思います。投資家側にもESG投資やインパクト投資のような新たな潮流が増えてきています。儲けだけでなく、社会的なインパクトも含めて会社の価値を評価する時代。今はその過渡期だと思います。

高齢化など「社会課題先進国」の日本だからこそ、インパクトスタートアップは成長する。民間の力で社会課題の解決を行って社会コストを下げ、国を豊かにすることができる。そう私は信じています。

同志が集まるのが大切だと思います。資本市場では『それは儲かるの?』と常に問われます。当然、それは大事。だけど、「課題を解決していくためにわたしたちって頑張ってるよね」と言い合えるコミュニティを作りたいと思います。

6月に発表された政府の2022年版「骨太の方針」では「『課題解決』を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある」と明記され、インパクト企業の成長を支えていこうという機運は高まっている。設立総会には、岸田首相からのビデオメッセージも寄せられた。

岸田首相はビデオメッセージで、インパクトスタートアップは「持続可能な社会を実現する新しい資本主義を体現するもの」とコメントを寄せた

総会に出席した平井卓也衆院議員(自民党デジタル社会推進本部長、スタートアップ議連会長)も「皆さんがやろうとしていることは、『新しい資本主義』で一番やりたいこと。税制、制度改正、予算もアジャイルで、一緒に悩みながら改善しながら解を見つけていくしかないと思う。いろんなネットワークで頑張っている人たちを繋ぎたいなと思う」と、連携の構想を語った。

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